{ "345000611_0": "潜入、F.I.S.研究所", "345000611_1": "「島を出て、大体4時間ぐらいかしら?」", "345000611_2": "「3時間と46分デス。\\n ちなみに、F.I.S.研究所までの距離は、12kmデス」", "345000611_3": "「ありがとう。\\n それじゃ、あとは陸路で目的地に向かうのみね」", "345000611_4": "「うぅ、ちょっと船酔いしたデスよ……」", "345000611_5": "「小型船での長距離移動だったものね。\\n わたしもまだ少し地面が揺れているように感じるわ」", "345000611_6": "「2人とも大丈夫デスか?」", "345000611_7": "「大丈夫よ。\\n それほどひどくないから、じきに治ると思うわ」", "345000611_8": "「それじゃ、出発するデスよ」", "345000611_9": "「そうしましょう。場所はこっちね」", "345000611_10": "「あれ? もしかして、F.I.S.研究所の位置、ご存じデス?」", "345000611_11": "「ここに来る前に見せてもらったマップでは、\\n わたしたちの世界のF.I.S.と位置が同じだったからね」", "345000611_12": "「わたしでも案内できるわ」", "345000611_13": "「おお、そうなんデスね」", "345000611_14": "「デスけど、2人を残してきてよかったデスか?\\n みんなで来たほうが成功率上がりそうデスよ」", "345000611_15": "「潜入任務はね、人数がいればいいものじゃないの。\\n 少数精鋭、それが1番」", "345000611_16": "「精鋭ッ! アタシたち、精鋭デスよッ!」", "345000611_17": "「調が造ったアタシなら当然デースッ!」", "345000611_18": "(まあ、2人にはウェルの監視役として\\n 残ってもらっただけだけれど)", "345000611_19": "「張り切って潜入頑張るデスよッ!」", "345000611_20": "「おーッ!」", "345000611_21": "(やる気が出てくれてるから、まあ、いいか。\\n ……ちょっと騒がしい気もするけど)", "345000611_22": "「ええっと、ここからまだ距離があるんデスよね。\\n 実は聞きたいことがあったんデス」", "345000611_23": "「アタシにデスか?」", "345000611_24": "「前にアタシと調のことを話したじゃないデスか。\\n 今度は2人のことを教えてほしいデス」", "345000611_25": "「いいデスよッ!」", "345000611_26": "「そうデスね、調は……」", "345000611_27": "「調、なんでこんなに部屋を散らかすんデスか。\\n 使ったらちゃんと片付けなきゃ」", "345000611_28": "「どうせまたすぐ使うから、出したままでいい」", "345000611_29": "「そんなこと言って、いつも使ってないデスよね。\\n もう、片付けちゃうデスよ」", "345000611_30": "「わからなくなるから配置を変えないで」", "345000611_31": "「それじゃ、どんどん汚部屋になっちゃうデスよッ!\\n これなんて、ゴミじゃ――」", "345000611_32": "「いったー……くはないデスが……。\\n これは……。飲み終わったエナドリ?」", "345000611_33": "「調、飲んだらちゃんとゴミ箱に入れるデスよッ!」", "345000611_34": "「うるさいな……」", "345000611_35": "「調、寝ぼけてないでちゃんとするデスよッ!」", "345000611_36": "「ふわぁ……あ……寝ぼけて……なんてないよ」", "345000611_37": "「ほら、歯磨きしてッ!」", "345000611_38": "「髪もぼさぼさデスよッ!」", "345000611_39": "「あッ! ここ虫に刺されてるデスッ!」", "345000611_40": "「おのれ虫め……調の血を吸うなんて、不逞な輩デス……」", "345000611_41": "「……眠い」", "345000611_42": "「調、美味しいご飯ができてるデスよ」", "345000611_43": "「ご飯、食べる……」", "345000611_44": "「はいはい、それじゃ、顔を洗ったらご飯にするデスよ」", "345000611_45": "「今日はとってもいい天気デスよ。\\n たまには気分転換に外へお散歩なんてどうデス?」", "345000611_46": "「わたしが日の光に当たって死んだら、\\n あんたどう責任取るの?」", "345000611_47": "「ドラキュラじゃないんデスから、死ぬわけないデスよ。\\n ほらほら、お散歩行くデスよ」", "345000611_48": "「1人で行って、わたしはここで研究を続ける」", "345000611_49": "「少しでも日の光を浴びた方が、\\n きっと研究もはかどるデスよ」", "345000611_50": "「…………」", "345000611_51": "「しょうがないなー……」", "345000611_52": "「お、行く気になったデスねッ!\\n それじゃ、早速――」", "345000611_53": "「ん?」", "345000611_54": "「調、そのかぶっているものは――、\\n ……ヘッドマウントディスプレイ?」", "345000611_55": "「これなら、動かずにお外を散歩できる」", "345000611_56": "「…………」", "345000611_57": "「……こうなったら、天井をブチ抜いてやるデスかね」", "345000611_58": "「他にも洗濯物は部屋に脱ぎっぱなし。\\n 食事も面倒だから食べなかったこともあったデスね」", "345000611_59": "「自堕落な調……そんなの想像できないデース……」", "345000611_60": "「わたしたちの調とは本当に違うのね。\\n そんな生活してたら説教してるところよ」", "345000611_61": "「本当に、手間がかかって仕方ないデス」", "345000611_62": "「そう言う割には楽しそうデスね。\\n 調のお世話、やっぱり楽しいんデスか」", "345000611_63": "「調の役に立てることがアタシにとって1番の幸せデスから」", "345000611_64": "「それに寝てる顔とか可愛いんデスよ」", "345000611_65": "「その顔を見られるのは寝かしつけることができる、\\n アタシだけの特権デースッ!」", "345000611_66": "「調のことが大好きなんデスね」", "345000611_67": "「もちろん、大好きデスよッ!」", "345000611_68": "「だから、もっと喜んでもらいたくて……その……」", "345000611_69": "「アタシのことを攫ったんデスよね」", "345000611_70": "「そういえばあやふやになって結局、聞けていなかったけど、\\n 切歌を誘拐したのは、それが理由なの?」", "345000611_71": "「そうデス。本当に申し訳ないデス……」", "345000611_72": "「だから、もうそれはいいデスよ」", "345000611_73": "「それで、わたしたちの世界の切歌に会えた感想は?」", "345000611_74": "「調は喜んでくれなかったデス……」", "345000611_75": "「アタシも言われちゃったデス。\\n わたしが切ちゃんって呼ぶのはこの世界の暁切歌だけだって」", "345000611_76": "「だから、今度こそ、1秒でも早く調に\\n 本物の切歌を会わせてあげたいんデスッ!」", "345000611_77": "「でも、調にはあなたがいるじゃない」", "345000611_78": "「アタシは切歌の偽物だからダメなんデス。\\n 切歌だけど、アタシは切歌にはなれないんデスよ」", "345000611_79": "「ダメだなんて、そんなことないデス。\\n 調はキミのことも大切だって思ってるはずデスよッ!」", "345000611_80": "「だと、いいデスが……」", "345000611_81": "「…………」", "345000611_82": "「……眠っている切歌の目が覚めたら、\\n あなたはどうするの?」", "345000611_83": "「アタシは元々、切歌が目覚めるまでの繋ぎなんデス。\\n 繋ぎが終わったら機能を停止してもらって静かに眠るデスよ」", "345000611_84": "「自分で機能を停止することはできないデスから、\\n きっと調がやってくれるデス」", "345000611_85": "「そんな……、調はそんなことしないデスッ!」", "345000611_86": "「きっと、これからもずっと一緒にいてほしいって\\n 言うに決まってるじゃないデスかッ!」", "345000611_87": "「そうなら、嬉しいデスね……」", "345000611_88": "「…………」" }