{ "506001031_0": "「……ねえ、よかったの?」", "506001031_1": "「……ん?\\n どうしたの、ヨウ」", "506001031_2": "「あの子たちに……響たちに、\\n もう1つ、言うか迷ってたこと」", "506001031_3": "「結局、言わなかったから……」", "506001031_4": "「……ああ、フフ。", "506001031_5": " あのことか……」", "506001031_6": "「うん。\\n いいんだ。だって、些細なことだもの」", "506001031_7": "「わたしたちの宇宙もまた、神が作ったという点では同じ――\\n 大きく離れても『可能性』の1つだったなんて」", "506001031_8": "「だって、別々に生きてきたんだもの。\\n わたしは、わたしとして」", "506001031_9": "「あの子は、あの子として――\\n それは、他の世界の『可能性』たちだって、同じこと……」", "506001031_10": "「だから、これはわかってくれる人がいれば……\\n ヨウがわかっててくれれば、それでいいの」", "506001031_11": "「……キョウのそういう頑固、\\n 昔から変わらないよね」", "506001031_12": "「……そうかな?」", "506001031_13": "「そうだよ。", "506001031_14": " ……だからあたしは、あなたを支えたいって思うんだもの」", "506001031_15": "「……でも、それなら、ヨウだって変わらないよ」", "506001031_16": "「他の人が……それに、あなた自身がなんて言ったって、\\n あなたはわたしの陽だまりなんだから」", "506001031_17": "「…………もう」", "506001031_18": "「……不思議だね。\\n あの子たちが、ずっと感じていたこと……」", "506001031_19": "「あたしたちも、ずっと見ていたはずのこと」", "506001031_20": "「……うん。わかったつもりで、\\n でも、本当には、手を繋がないとわからないこと……」", "506001031_21": "「――――あ」", "506001031_22": "「ゲートを抜ける……\\n 見放された世界に辿り着くんだ」", "506001031_23": "「…………」", "506001031_24": "「……ギャラルホルン。ドラウプニル。ナグルファル」", "506001031_25": "「スヴォル、グレイプニル、ミョルニル、\\n ミストルティン、フロッティ――」", "506001031_26": "「……?」", "506001031_27": "「わたしたちは、たくさんの世界を観測してきた。\\n 何かのターニングポイントを齎すモノの名前をつけて――」", "506001031_28": "「それに、わたしたちの世界は……\\n もう、見放されてなんかいない」", "506001031_29": "「……そうか、永いこと、誰も呼ばなくなってしまった、\\n あたしたちの世界の名前――」", "506001031_30": "「……そんなの、寂しいもんね」", "506001031_31": "「うん。\\n だから……」", "506001031_32": "「……ただいま、『カヴァーチャ』。\\n わたしたちが生きて――」", "506001031_33": "「生き抜いてからようやく、死すべき世界」" }