{ "506000451_0": "「想い出と……引き換えに?」", "506000451_1": "「あ――」", "506000451_2": "「そう、なのかもしれません。\\n すみません、色々と記憶が曖昧で……」", "506000451_3": "「未来ッ!?」", "506000451_4": "「きっとこう言っておけば、\\n 大丈夫だと思う」", "506000451_5": "「それはそれは。カヴァーチャに認められるほどの想い出だ、\\n 莫大な量の記憶を捧げたことでしょう」", "506000451_6": "「もしも我々にお力になれることがあれば、\\n 何でもおっしゃって――げふッ、がふッ!」", "506000451_7": "「だ、大丈夫ですかッ!?」", "506000451_8": "「長ッ! \\n もう長く喋れる身体じゃないのにッ!」", "506000451_9": "「戦士様、後はオレがッ!」", "506000451_10": "「はい、もう十分ですッ!\\n 長さん、ありがとうございました」", "506000451_11": "「申し訳ない。\\n 頼んだぞ、カイ」", "506000451_12": "「ごめんな。\\n 長は色々話すには、身体が悪くて……」", "506000451_13": "「この空気の中じゃ仕方ないよ。\\n 本当に……唄うには地獄みたいな場所だ」 ", "506000451_14": "「唄う?", "506000451_15": " えっと……」", "506000451_16": "「いや、それは後でいいや。", "506000451_17": " ――あのね、戦士様に聞きたいことがあるんだ」", "506000451_18": "「うん、どうしたの?」", "506000451_19": "「キョウ様とヨウ様のこと、\\n 知らない?」", "506000451_20": "「2人を知ってるのッ!?」", "506000451_21": "「やっぱり、想い出を代償にしても、\\n 前代の戦士様のことは覚えてるんだねッ!」", "506000451_22": "「2人はどうしたの?\\n もう、見放された世界に帰って来た?」", "506000451_23": "「えっと……\\n ……それは、わからないんだ」", "506000451_24": "「そっか……」", "506000451_25": "「…………うん、でも、仕方ないよな。\\n この世界を救いに行ったんだから」", "506000451_26": "「キョウさんとヨウさんなら、\\n きっと――」", "506000451_27": "「――あッ!\\n キョウ様とヨウ様、なッ!」", "506000451_28": "「フフ……大丈夫だよ。\\n 2人はそんなこと気にしないと思う」", "506000451_29": "「――ッ!」", "506000451_30": "「……そっか。嬉しいな。\\n 本当に、あの2人のことを知ってるんだ」", "506000451_31": "「でも、本当に少し知ってるだけなんだ。\\n カイくんはキョウちゃんとヨウちゃんのこと、詳しく知ってるの?」", "506000451_32": "「もちろんッ! \\n 2人はこの集落にもよく来てくれたからなッ!」", "506000451_33": "「へえ、顔見知りか」", "506000451_34": "「この近くにも集落はいくつかあるけど……\\n ここの戦士候補はオレみたいに、まだ若いやつが多いんだ」", "506000451_35": "「だからキョウさんとヨウさんが、\\n よく戦い方を教えに来てくれたんだ」", "506000451_36": "「あの2人から、戦い方を……?」", "506000451_37": "「うんッ! オレだって、戦士候補だからね。\\n この世界のために戦う覚悟は、2人にだって負けてないつもりだよ」", "506000451_38": "「……」", "506000451_39": "「それにノイズが出たらどんなに遠くにいても、\\n 駆けつけて護ってくれたッ!」", "506000451_40": "「来る時は食料を持ってきてくれるし、\\n 水を集めるのも手伝ってくれたんだッ!」", "506000451_41": "「それにすっごい戦士様なのに全然偉そうじゃなくて、\\n オレたちにはこっそり、様なんてつけずに呼んでいいってッ!」", "506000451_42": "「だからキョウさん、ヨウさんって、\\n 呼んでたんだね」", "506000451_43": "「あんなに強いのに、普通の人間だから、なんて言うんだぜ。\\n 本当に格好いいよなッ!」", "506000451_44": "「……本物の英雄も顔負けだね」", "506000451_45": "「そりゃあそうだよッ! \\n 2人は間違いなく英雄なんだからッ!」", "506000451_46": "「あ、それから……これは絶対の絶対に内緒だけど。\\n 2人はすごく、歌が上手いんだぜ」", "506000451_47": "「……フフ。\\n やっぱり、そうなんだね」", "506000451_48": "「戦士様も2人の歌を聴いたことあるのか?\\n 大人の前では聴けないけど、上手だよなッ!」", "506000451_49": "「大人の前では……?\\n えっと……それは、どうして?」", "506000451_50": "「え?", "506000451_51": " そりゃ、唄うとノイズを呼び寄せちゃう危険が上がるからさ」", "506000451_52": "「命の乏しいこの世界だもの。唄ったりなんかしたら、\\n 世界中に『自分はここにいる』って知らせるようなものだよ」", "506000451_53": "「……だから、本当はダメなんだ。歌なんか唄っちゃ。\\n 戦士様、オレたちがさっき唄ってたのは秘密にしてくれよな?」", "506000451_54": "「……なるほどな。", "506000451_55": " わかった、秘密にしとくよ」", "506000451_56": "「へへ……\\n ありがとなッ!」", "506000451_57": "(子供たちを護るためなら、いつだって駆けつけて。\\n できることは何でも手伝って)", "506000451_58": "(それでも自分は普通の人間だからって、\\n 決して偉そうにはしなくて……)", "506000451_59": "(本当に、響みたいだ――)", "506000451_60": "「ねえ、カイくん。\\n もしかして、2人が唄ってくれたのは、この曲?」", "506000451_61": "「――――♪」", "506000451_62": "「だ、ダメだよ、唄っちゃッ!\\n あいつらが――」", "506000451_63": "「――ッ!?」", "506000451_64": "「くそ、やっぱり……ッ!\\n キョウさんとヨウさんが唄えるのは凄い戦士だからだよッ!」", "506000451_65": "「もし出てきても、\\n 簡単に倒してくれたんだッ!」", "506000451_66": "「ノイズが来るのに、唄った……\\n やっぱり、あの2人は歌が好きだったんだ」", "506000451_67": "「世界のために歌を封じたけど、\\n 憎んでなんていなかったんだ……ッ!」", "506000451_68": "「そ、そんなこと言ってる場合じゃッ!」", "506000451_69": "「大丈夫。\\n へいき、へっちゃらッ!」", "506000451_70": "「――ッ!?」", "506000451_71": "「だから、カイくんは少しでも遠くへッ!!」", "506000451_72": "「わ……わかったッ! 集落のみんながケガしないように、\\n 避難するよう呼びかけるよッ!!」", "506000451_73": "「さて……わざわざ歌を聴きに来たらしいが、\\n 悪いけど、お引取り願おうかッ!」", "506000451_74": "「戦えるのは、わたしたちも同じッ!!」" }