{ "506000121_0": "「お帰りなさい、響ちゃん。\\n あったかいもの、どうぞ」", "506000121_1": "「あったかいもの、どうも。\\n ……こうしてると、帰ってきたって気がします」", "506000121_2": "「とんでもない激戦で、戦闘管制を続けながら、\\n 何度撤退を提案しようと思ったか……」", "506000121_3": "「けど、皆が何度だって立ち上がる姿を見ていて、\\n こっちも腹を括ったよ」", "506000121_4": "「ありがとうございます。\\n おかげで、全力で戦えました」", "506000121_5": "「そして後ろに護るべきものがあるからこそ、\\n わたしたちも立ち上がれたのよ」", "506000121_6": "「それに、わたしたちだけが戦っているなんて\\n 一度も思いませんでした」", "506000121_7": "「戦いの最中、常に感じていました。\\n この世界を生きる誰もが、絶望に屈してなどいないと」", "506000121_8": "「あたしたちが立ったところで\\n 誰も彼もが諦めてちゃ、あいつには勝てなかっただろうからな」", "506000121_9": "「悪意の化身たるベアトリーチェを、正面から打ち破った……。", "506000121_10": " この星に生きる全ての人が、悪意に負けなかったんですね」", "506000121_11": "「絶望的な状況でも『明日がある』と信じることができたのは、\\n 装者の皆さんの奮闘があってこそです」", "506000121_12": "「本当にお疲れ様でした。\\n 後はゆっくり休んでください――」", "506000121_13": "「本当なら……\\n そう伝えたかったのですが」", "506000121_14": "「まだ終わってはいない……ですね」", "506000121_15": "「うん、ここで立ち止まってはいられないよッ!」", "506000121_16": "「……いったい全体、どういう意味だ? \\n ベアトリーチェとの決着はついたんだろ?」", "506000121_17": "「おまけにカルマノイズだのカオスビーストだの、\\n 世界を超えた厄介事も片付いたってのに」", "506000121_18": "「……ああ。\\n あたしたちは、確かにあいつに勝ったよ」", "506000121_19": "「ベアトリーチェはカルマノイズやカオスビーストと共に、\\n 世界に溶けて消えていった……けれど」", "506000121_20": "「その結果の一部として――、\\n ギャラルホルンの機能が停止してしまったんだ」", "506000121_21": "「おいおい、待てよッ! ギャラルホルンが停止だってッ!?\\n さっきあたしが通った時は、いつもと変わらなかったぞッ!?」", "506000121_22": "「カルマノイズもカオスビーストもまとめて消えて、\\n こりゃ何かあったなって、こっちに渡ってきたんだ」", "506000121_23": "「……ログを確認しましたが、ギャラルホルンの停止は、\\n 奏さんがゲートを通過した直後だったようです」", "506000121_24": "「本当にギリギリのタイミングでした。\\n 不幸中の幸いとすら言えるかもしれません」", "506000121_25": "「……そりゃ背筋の冷える話だ。\\n あの妙な空間に閉じ込められたかもしれないってのか」", "506000121_26": "「無事に渡ることができたのは幸いだけど、\\n このままじゃ、奏は、奏の世界には……」", "506000121_27": "「そうですね、\\n ギャラルホルンが動かないとなると……」", "506000121_28": "「…………」", "506000121_29": "「ま、そんな顔をするなよ。", "506000121_30": " 世界を渡れなくなることぐらい、前にもあっただろ?」", "506000121_31": "「イシムの件……ですか?」", "506000121_32": "「……」", "506000121_33": "「その……今回ですが、\\n あの時とは少し状況が違っています」", "506000121_34": "「あの時はギャラルホルンの『流れ』に干渉されていて、\\n こちらでも異常が確認できていました」", "506000121_35": "「でも……今は全てが正常なんです。", "506000121_36": " 正しく機能した結果、予定通りに停止したような……」", "506000121_37": "「……あの、あたしも感じてます」", "506000121_38": "「この世界には、今まで当たり前のように\\n いろんな世界と繋がっている『流れ』があったんです」", "506000121_39": "「でも今は、\\n それが全て絶たれたような、そんな感じがして……」", "506000121_40": "「まったく……\\n 厄介事には困らないな」", "506000121_41": "「なら、この前みたいに、\\n 力づくで次元の壁を破るのはどうですかッ!?」", "506000121_42": "「あんな大博打を何度も何度もやってたまるかッ!」", "506000121_43": "「響はあの時の負荷で倒れちゃって……\\n もう忘れたなんて言わせないからッ!」", "506000121_44": "「そ、それはそうだけど……」", "506000121_45": "「……ま、この場でモメても仕方ないさ。", "506000121_46": " きっとなんとかなるってッ!」", "506000121_47": "「奏……」", "506000121_48": "「ちょっとした想定外で戻れなくなるなんて、\\n 今までにも腐る程あったハプニングだろ? おんなじさ」", "506000121_49": "「聖遺物が1つ動かなくなったぐらいで慌てることはない。\\n あたしたちの繋がりはそんなに弱くない」", "506000121_50": "「そうだろ?」", "506000121_51": "「…………うん、世界はきっとまた繋がれる。\\n 何度でも」", "506000121_52": "「はいッ!\\n みんなとも、きっとまた会えるはずですッ!」", "506000121_53": "「で、この空気の理由は、それだけじゃないだろ?\\n ベアトリーチェを倒した後に何があったんだ?」", "506000121_54": "「実は――」", "506000121_55": "「並行世界からの侵攻、OTHERS……\\n キョウとヨウ、か……」", "506000121_56": "「あの青い化け物……ドッペルゲンガーを連れてきたやつらが、\\n 一緒にベアトリーチェと戦ったってのか」", "506000121_57": "「2人も自分の世界を救うために必死で戦っていて……\\n そのためにこの世界や、みんなの世界を襲うしかなかった……」", "506000121_58": "「簡単に許されるとは思いません。\\n でも、最後にはもう誰かを傷つけたくないって言ってたのに」", "506000121_59": "「やっと本当の気持ちが聞けたのに……ッ!", "506000121_60": " それを否定するみたいに、何かが2人を縛り付けたんですッ!」", "506000121_61": "「自分の心を押し殺して、世界のために誰かを傷つけていた。\\n ついに本当の気持ちを口に出した瞬間に罰を与えられた、か」", "506000121_62": "「……ああ、心底から気に入らない話だ。\\n そりゃ放っておけないね」", "506000121_63": "「キョウちゃんとヨウちゃんを苦しめて逃げた、\\n 『カヴァーチャ』……あれを追いかけない、と……」", "506000121_64": "「う……ッ」", "506000121_65": "「響ッ!?\\n 大丈夫ッ!?」", "506000121_66": "「こちらで情報を集めます。", "506000121_67": " その間、少しでも休息をとってください」", "506000121_68": "「長い戦いでしたから、\\n 全員のメディカルチェックもお願いします」", "506000121_69": "「はいッ!", "506000121_70": " ほら響、すぐ検査にッ!」", "506000121_71": "「だ、大丈夫だよ。\\n これぐらい、へいき、へっちゃらだから……」", "506000121_72": "「平気な人は倒れたりしないッ!」", "506000121_73": "(……悪意に打ち勝ったところで、戦いは終わらない、か。", "506000121_74": " ま、そのぐらいで落ち込みはしないさ)", "506000121_75": "(たとえ誰が、何が相手でも……\\n あたしは自分の歌を唄うだけだ)" }