{
"501000811_0": "つまみ食い",
"501000811_1": "「この世界に落とされてから、\\n どれくらい経ったんだろ……」",
"501000811_2": "「数えようとしないほうがいいですよ。\\n 気が重くなるだけですから」",
"501000811_3": "「他の世界のみんな、\\n 大丈夫かな?」",
"501000811_4": "「あたしたちの奇襲も凌ぎきったんだ。\\n カルマノイズやカオスビースト如きにやられてもらっちゃ困る」",
"501000811_5": "「……フフ」",
"501000811_6": "「……?\\n 何がおかしい?」",
"501000811_7": "「ありがとう。\\n 励ましてくれているんだよね?」",
"501000811_8": "「――ッ!?\\n あたしは、そんなつもりじゃ……」",
"501000811_9": "「こうして長い時間を一緒に過ごしていると、\\n 敵同士だってことを忘れそうになるな」",
"501000811_10": "「それは良くないですね。",
"501000811_11": " 仲良くしていられるのは、今だけのこととお忘れなく」",
"501000811_12": "「わたしたちは『見放された世界』の英雄であり続けるために。\\n 共同戦線が終わったら、必ずあなたたちと敵対します」",
"501000811_13": "「そのことは、決して変わりませんよ」",
"501000811_14": "「……ううん、\\n 変わるかもしれないよ」",
"501000811_15": "「……?」",
"501000811_16": "「だって、\\n 未来はどうなるのか、わからないもん」",
"501000811_17": "「……あたしたちが、お前たちと手を取り合う未来があると。\\n そう言いたげな顔と、口ぶりだな」",
"501000811_18": "「……そんな未来、あり得ません」",
"501000811_19": "「だが……あり得ないと言われた未来を、\\n わたしたちは、これまで何度も掴み取ってきた」",
"501000811_20": "「わたしたちの諦めの悪さ……\\n 今まで観察してきたのなら、よく知っているだろう?」",
"501000811_21": "「特に――、\\n 立花のしつこさはな」",
"501000811_22": "「翼さん、ヒドいッ!\\n そういう言い方ってどうなんですかッ!?」",
"501000811_23": "「事実だろう?」",
"501000811_24": "「それは……、\\n まあ、そうですけどッ!」",
"501000811_25": "「そういうのは、諦めない強さー、とかッ!\\n もっといい感じに言ってくださいよーッ!!」",
"501000811_26": "「フ……フフッ」",
"501000811_27": "「キョウ、ちょっと……」",
"501000811_28": "「……ヨウ?\\n どうかした?」",
"501000811_29": "「少し、話したいことが……」",
"501000811_30": "(……最初の頃は、こうして2人で話そうとすると、\\n 何かと理由をつけてあいつらに遮られていたが……)",
"501000811_31": "(最近では、すっかり見逃されている。\\n あいつらが気を抜いているのか、それとも――)",
"501000811_32": "(まさか本当に、仲間扱いされているんじゃないだろうな?\\n ……くそッ! 冗談じゃないッ!)",
"501000811_33": "「……ヨウ?\\n 何か言いたいことがあったんじゃないの?」",
"501000811_34": "「……キョウは、\\n ちょっと、あいつらに対して気を抜きすぎてる」",
"501000811_35": "「あいつらは敵なんだ。\\n この先、必ず殺し合いになる相手だよ?」",
"501000811_36": "「……大丈夫だよ。\\n たとえ表面上はそう見えていたとしても……」",
"501000811_37": "「戦士としての自分、\\n 英雄としての自分のこと、忘れてないから」",
"501000811_38": "「……だったら、いいんだけど。\\n あたし、キョウが傷付くのなんて、嫌だからね?」",
"501000811_39": "「ありがと。大丈夫だよ、わかってる。",
"501000811_40": " ……こうしていられるのは、今だけだって」",
"501000811_41": "「ああ、こんなとこにいたのか。",
"501000811_42": " なあ、この草って食べられるのか?」",
"501000811_43": "「それは……はぁ、何度も教えましたよね?\\n わたしを図鑑か何かだと勘違いしていませんか?」",
"501000811_44": "「待っていてください。\\n どうせ他にもあるでしょう? 今行きますから――」",
"501000811_45": "「…………」",
"501000811_46": "(あいつらと話している姿を見ると、\\n 話していると……なんだか不安になる)",
"501000811_47": "(キョウが、あたしを置いて、あたしたちの世界から、\\n どこかに行ってしまいそうで……)",
"501000811_48": "(でも――)",
"501000811_49": "(それはキョウにとっては、\\n 良いことなのかも……)",
"501000811_50": "(あたし1人が戦って、1人でケリをつけられるのなら。\\n キョウは、戦いから逃れることができるのかもしれない……)",
"501000811_51": "(あたしが気付いた、\\n このカヴァーチャの力――)",
"501000811_52": "(蛇を喰う鷲のように、\\n 世界蛇を、1人で喰らうことができるのなら――)"
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