{ "397000931_0": "「来ましたね」", "397000931_1": "「待ちくたびれるところだ」", "397000931_2": "「好き勝手やってくれやがって、ここが年貢の納め時だッ!\\n 耳を揃えて支払ってもらおうかッ!」", "397000931_3": "「安心しろ。逃げるつもりはない。", "397000931_4": " ほら、見ろ。――主役もご到着だ」", "397000931_5": "「あの大きなの……本部に向かってくるッ!」", "397000931_6": "「随分とでかくなったな……」", "397000931_7": "「それはもう、はらぺこの器ですから。", "397000931_8": " あの大きさなら、十分な想い出をため込めそうですね」", "397000931_9": "「想い出を……?", "397000931_10": " それって……ッ!」", "397000931_11": "「わたしたちの想い出をわけてあげれば、戦わずに済むの?\\n どうしても、ぶつからなきゃいけないのッ!?」", "397000931_12": "「ああ……\\n そうそう、その『目』だよ」", "397000931_13": "「え……?」", "397000931_14": "「自分がしていることを正しいと信じて疑わない『目』。\\n 正義の味方らしい、使命に満ちた『目』が問題なんだよ」", "397000931_15": "「わ、わたしは、正義の味方なんかじゃないよ。\\n わたしは……ッ!」", "397000931_16": "「あなたのその無意識の正義で飾られた『怒り』が\\n 多くを救う一方で、多くを殺してきた」", "397000931_17": "「手を、取りたい?", "397000931_18": " ――笑わせるな」", "397000931_19": "「護ることは殺すこと。\\n そして、殺すことは護ること」", "397000931_20": "「殺して護る覚悟すら持ち合わせのないお前に……ッ!!\\n わたしたちの計画を止める資格なんて、ないんですよッ!!」", "397000931_21": "「護ることが、殺すこと……?", "397000931_22": " そんなはずないよ、護ることは……護ることだよッ!!」", "397000931_23": "「敵の言葉に惑わされるなッ!\\n 要はこいつらは――諦めちまってんだッ!」", "397000931_24": "「誰も傷つかずに済む道を選ぼうとせず、安易な偽悪に\\n 身をゆだねる――かような輩に、心を乱されるなッ!」", "397000931_25": "「……揃いも揃って、綺麗ごとを」", "397000931_26": "「お前らみたいな奴らに、\\n あたしたちの覚悟を否定される筋合いはないッ!」", "397000931_27": "「つまるところ、\\n どこまでも平行線ということです」", "397000931_28": "「だったら……わかるだろう。", "397000931_29": " やり合うしか、ないんだよッ!」", "397000931_30": "「……わかりません。", "397000931_31": " そんなのは、わからないッ!!」", "397000931_32": "「……は?」", "397000931_33": "「わたしの言葉が届かないのは悲しい。\\n すごく悲しいよ。だけど――ッ!」", "397000931_34": "「それでもわたしは、誰彼構わず傷つけるあなたたちを、\\n 見過ごすことはできないッ! だから――ッ!」", "397000931_35": "「Balwisyall Nescell gungnir tron――」", "397000931_36": "「ごめんね。\\n わたしはこの胸の歌で……あなたたちを、ぶん殴るッ!!」", "397000931_37": "「ハッ!\\n 化けの皮がはがれたな」", "397000931_38": "「結局あなたも、暴力で相手を叩きのめすだけ」", "397000931_39": "「違うッ!\\n わたしの拳は、わかり合うための壁を壊す拳ッ!」", "397000931_40": "「けれど、握った拳は、手のひらを開く勇気があれば……\\n いつだって解くことができるからッ!」", "397000931_41": "「今、2人とわかり合えないのは悲しいけど……", "397000931_42": " それでも……その先の可能性まで、諦めるもんかッ!」", "397000931_43": "「だからこそ――わたしは戦うッ!」", "397000931_44": "「…………ッ!", "397000931_45": " お前……貴様ッッ!」", "397000931_46": "「世界のために誰かを殺し、何かを奪う……それが、英雄の道。\\n その道を歩く覚悟もないくせに……ッ!」", "397000931_47": "「わたしは英雄になりたいんじゃないッ!\\n 2人を知りたいだけ――」", "397000931_48": "「うるさい、黙れッ!!」", "397000931_49": "「キョウッ!\\n 今だッ!!」", "397000931_50": "「――――」", "397000931_51": "「――ッ!\\n もうこんな近くまで――」", "397000931_52": "「オォォォオォォ……ッ!」", "397000931_53": "「…………ッ!?", "397000931_54": " なに、これ……ッ、急に力が……ッ!?」", "397000931_55": "「響ッ!? なにが……、", "397000931_56": " え……ッ!?」", "397000931_57": "「な……なんだ、この脱力感は……ッ!?」", "397000931_58": "「まるで身体の奥から力を\\n 直接奪われているかのような、この感覚……ッ」", "397000931_59": "「小型のドッペルゲンガーを相手にした時に感じた感覚だ……。\\n だけど、前とは比べ物にならないぞッ!?」", "397000931_60": "「ハハッ……辛いだろうな。見てみなッ!\\n お前たちの想い出を集める『器』のご到着だッ!」", "397000931_61": "「力は、高きから低きところへ。\\n 弱いやつを導に落としたドッペルゲンガーは、いい器になる」", "397000931_62": "「それに……」", "397000931_63": "「同じ理屈です。乾いて、大きな器ほど……あなたたちの\\n 瑞々しい想い出は、容赦無くそちらに吸い寄せられるッ!!」", "397000931_64": "「想い出を……ヒトが生きていくための力を奪われながら、\\n わたしたちの相手ができますかッ!?」", "397000931_65": "「だったら……ッ、\\n まずはデカブツを潰すまでだッ!」", "397000931_66": "「効いてない……ッ!?」", "397000931_67": "「苦し紛れで、どうにかなるほどヤワじゃないぞ、\\n こいつはッ!」", "397000931_68": "「く……ッ!?\\n 奴の巨大な腕が、こちらに――ッ!」", "397000931_69": "「雪音ッ!」", "397000931_70": "「……ッ、悪い、先輩。\\n 世話かけちまった」", "397000931_71": "「それより、次が来るッ!」", "397000931_72": "「この巨体ながら、なんという速さ……ッ!」", "397000931_73": "「本部を護らなきゃッ!」", "397000931_74": "「でも、こんなに攻撃が激しいんじゃ……」", "397000931_75": "「いなすので精一杯だ……ッ!」", "397000931_76": "「だろうな、当然そうなるッ!\\n お前たちが退けば、この艦にいる連中が餌食になるッ!」", "397000931_77": "「一歩も引けないこの状況、背水の陣ですね。\\n どんどん追い詰められて、そして……フフ」", "397000931_78": "「こうしている間も、お前らの力はどんどん吸い取られていく。\\n 長引けば長引くほど、勝ちの目はなくなるわけだッ!」", "397000931_79": "「この状況、あなたたちはもう、詰んでいるんですよ。\\n 一時的な障害があったとはいえ――全ては計画通りです」", "397000931_80": "「――その計画には、\\n もちろんわたしたちも含まれているのよねッ!?」", "397000931_81": "「く……ッ!?」", "397000931_82": "「この土壇場で、横やりッ!?」", "397000931_83": "「大丈夫かッ、キョウッ!?」", "397000931_84": "「――っつぅ……", "397000931_85": " 大丈夫だよ、ヨウ……直撃は避けたから」", "397000931_86": "「でも……ッ」", "397000931_87": "「ああ……。\\n お前たち、なんで動けるッ!?」", "397000931_88": "「マリア、月読……ッ!?\\n ギアを纏っても大丈夫なのかッ!?」", "397000931_89": "「お前らのギアは組み込まれた『アリアドネの糸』が、\\n 未だに機能を阻害しているはず……なにをしたッ!?」", "397000931_90": "「――確かに、お2人のギアはボクが不用意に組み込んでしまった\\n 『アリアドネの糸』のせいで、動作不良を起こしていました」", "397000931_91": "「エルフナインちゃんッ!」", "397000931_92": "「そう――『アリアドネの糸』はこちらの制御下にある。\\n だというのに、なぜ妨害が機能していない……?」", "397000931_93": "「お忘れですか? ボクが『アリアドネの糸』を起動させ、\\n 制御に成功したことを」", "397000931_94": "「……ッ!?", "397000931_95": " まさかお前……ッ!」", "397000931_96": "「そのまさかですッ! お2人のギアに組み込まれた\\n 『アリアドネの糸』の制御権、上書きさせていただきましたッ!」", "397000931_97": "「「…………ッ!?」」", "397000931_98": "「キャロルがヒントをくれたんです。錬金術を用いて聖遺物を\\n 制御することにかけて、キャロルはボクよりずっと上ですから」", "397000931_99": "「く……ッ、そうだとしても、お前は聖遺物の扱いに\\n 慣れていないッ! そう長くはもつはずがないッ!」", "397000931_100": "「フィーネさんが置き土産に、\\n 聖遺物の負荷を軽減するための知恵を貸してくれました」", "397000931_101": "「戯言を……ッ! だったらどうした?\\n 2人増えたところで、戦況は変わらないッ!」", "397000931_102": "「それはどうかしら?」", "397000931_103": "「なに……?」", "397000931_104": "「あなた、背水の陣と言ったわね。\\n けれど理解していて?」", "397000931_105": "「この言葉はね、追い込まれた時に使いがちだけれど――", "397000931_106": " 『背水の陣』は、勝つためにこそ敷くものなのよッ!」", "397000931_107": "「あなたたちは不用意に敵を作り、\\n 追い込むべきではない相手を追い込んだッ!」", "397000931_108": "「追い込まれたわたしたちの強さ、見せてあげるッ!」", "397000931_109": "「2人のギアが……ッ!?」", "397000931_110": "「変わったッ!?」", "397000931_111": "「シンフォギアはリビルドを経て、\\n 錬金術という異なる概念を取り入れ、アマルガムと成りました」", "397000931_112": "「だったらそれと同じように、『人工聖遺物』だって、\\n 自分の力とできない道理はないッ!」", "397000931_113": "「これが、ボクとキャロルが――フィーネさんがッ!\\n 3つの世界が手を取り合って、辿り着いた奇跡ッ!」", "397000931_114": "「この力は、あなたたちと同じように、\\n 世界を渡ってきた人たちが繋いでくれた――」", "397000931_115": "「ボクの……いいえ。", "397000931_116": " ボクたちの、新しい力ですッ!!」", "397000931_117": "「ふざけるな……ッ!\\n 同じでなど、あるはずがないッ!!」", "397000931_118": "「手を取り合える人が、手を繋いで……\\n それで、また――わたしたちの世界を、殺すとッ!?」", "397000931_119": "「認めない、認められるか、そんなこと……ッ!」", "397000931_120": "「その上、聖遺物が、\\n あたしたちの『人工聖遺物』を取り込んだだと……ッ!?」", "397000931_121": "「ふざけてる……ッ!\\n そんなもの、スイッチを切ればッ!」", "397000931_122": "「……くそッッ!! どうして何も応えてくれないんだ、\\n お前はあたしたちの『人工聖遺物』だろう……ッ!」", "397000931_123": "「どこまでも貪欲な……ッ!」", "397000931_124": "「これは、絶対に負けられないという意志の結晶。\\n アマルガムの新しい形」", "397000931_125": "「護るためのアマルガム――名づけて、\\n 『アマルガム・キーパー』ですッ!」", "397000931_126": "「切ちゃんを傷つけたあなたたちの罪は、許しはしない。\\n だけど、わたしが戦うのは仕返しのためじゃない」", "397000931_127": "「セレナだって、きっと無事でいると信じている。\\n だから、これは復讐の戦いではない」", "397000931_128": "「「もう誰も、傷つけさせないために――ッ!」」", "397000931_129": "「さあ――反撃の時間よ」", "397000931_130": "「ボクたちの力で、護ってみせる――ッ!」" }