{ "397000421_0": "「どうですか、友里さん?\\n 縄、解けそうですか……?」", "397000421_1": "「難しいわね……かなり固く結んであるみたい。\\n せめて、身体の前で結ばれていれば、まだやりやすかったのだけど」", "397000421_2": "「背中側で結ばれているから、\\n どうしても手探りに……」", "397000421_3": "「ナイフの1本でもあればな……。\\n 代わりになりそうな道具は、全部取り上げられてるし」", "397000421_4": "「それでも、今できることをやらないと……ッ!」", "397000421_5": "「……そうだな。\\n 縄を噛みちぎってでも、脱出してやるッ!」", "397000421_6": "「敵の正体や狙いも分析したいわね」", "397000421_7": "「ええ……本部の警備をかいくぐって発令所まで到達するなんて、\\n 並大抵のことじゃありません」", "397000421_8": "「警備システムを破られたっていうことはないと思うけど……」", "397000421_9": "「なにか、センサーに引っかからない手段を持っているのかもね。\\n 光学迷彩とか」", "397000421_10": "「神獣鏡のウィザードリィステルスみたいな技術……とかも\\n 考えられるのか。なんせ並行世界だからな」", "397000421_11": "「その可能性はありますが……", "397000421_12": " それだと、違和感があります」", "397000421_13": "「キョウと呼ばれた人が言っていました。\\n 『わたしたちは、わたしたちの世界同様、存在が薄い』……と」", "397000421_14": "「ええ、そこは私もひっかかった。\\n 存在が薄い……どういう意味かしら?」", "397000421_15": "「まさか、影が薄くて人に気づかれにくいから、\\n 警備も誤魔化せたっていうんじゃないだろうな?」", "397000421_16": "「わかりません。ですがなんらかの手段、或いは生まれ持った\\n 性質として、気配を希薄させることができるとしたら……」", "397000421_17": "「ボクたちが気づけていないだけで、\\n こうしている今も監視されているのかもしれません」", "397000421_18": "「そんなの、まるで魔法じゃないか。\\n 錬金術とはまた違う異端技術を持っているってことか?」", "397000421_19": "「確証はありませんが、あの人たちの口ぶりは、\\n 『存在の薄さ』を忌々しく思っているようでした」", "397000421_20": "「『見放された世界』……\\n 確か、そう言っていたわね」", "397000421_21": "「そこに、\\n あの人たちの正体を知るヒントがあるかもしれません」", "397000421_22": "「でも、そこまで正体不明だと、\\n 動かないのが正解なのか……?」", "397000421_23": "「こっちの動きをつかんでいたら、脱走しようとしてる私たちを\\n もっと早く止めようとするんじゃない? それに――」", "397000421_24": "「それに?」", "397000421_25": "「悪い想像で行動を制限されるくらいだったら、\\n 出たとこ勝負に出た方が、勝ちの目はあるでしょ?」", "397000421_26": "「その大胆な行動力、たまに羨ましくなるよ……」", "397000421_27": "「それがいいことに繋がることだってあるのよ。\\n ……こんな風にね」", "397000421_28": "「縄が……ッ!」", "397000421_29": "「苦労したけど、ようやくほどけたわ。", "397000421_30": " 2人の縄もほどくわ。こんなところ、さっさと脱出よ」", "397000421_31": "「……大丈夫、見える範囲に敵はいないわ」", "397000421_32": "「まずはどこに向かいましょう?」", "397000421_33": "「なんとか外部と連絡を取って、\\n 緒川さんや装者の皆と連携を取りたいところだけど……」", "397000421_34": "「今の本部を連中への対抗手段も無しに進むのは避けたいわね。\\n いざという時のための武器が欲しいわ」", "397000421_35": "「あの連中相手だと、銃くらいでは\\n 足止めにしかならないかもしれないけれど……ね」", "397000421_36": "「まずは、武器庫の方へ……、", "397000421_37": " う……ッ!?」", "397000421_38": "「なに、この虚脱感……ッ!?」", "397000421_39": "「貧血……? いえ、この感覚……まるで身体の内側から、\\n 力を奪われているような……ッ」", "397000421_40": "「立っていられない……ッ!」", "397000421_41": "「――ッ!? なにかに引っかかったッ!?\\n これは……ワイヤートラップ?」", "397000421_42": "「ノイズッ!?\\n どうしてッ!?」", "397000421_43": "「まさか、並行世界からソロモンの杖を……ッ!?」", "397000421_44": "「おそらく、ボクたちの脱走を見越して、\\n 罠を張っていたんですッ!」", "397000421_45": "「なんてドジを……ッ!\\n ごめんッ! ほんっとーにごめんッ!!」", "397000421_46": "「気にしてる場合じゃないでしょッ!」", "397000421_47": "「か、囲まれてます……ッ!」", "397000421_48": "「く、逃げ場がない……ッ!\\n 私たち程度、ただのノイズで十分、というわけね……」", "397000421_49": "「くそ……ッ!\\n ここまでなのか……ッ!?」", "397000421_50": "「――まだですッ!」", "397000421_51": "「調さんッ!?\\n マリアさんも――ッ!」", "397000421_52": "「待たせたわね」", "397000421_53": "「どうしてノイズが……?」", "397000421_54": "「正体不明の敵に発令所が乗っ取られたわ。\\n おそらく、別の世界からのお客さんよ」", "397000421_55": "「なるほど……人が留守にしてる間に暴れるなんて、\\n 行儀が悪いわね」", "397000421_56": "「教育してあげるわ。\\n 覚悟しなさいッ!」", "397000421_57": "「お仕置き、です」" }