{ "397000241_0": "「制圧完了……か」", "397000241_1": "「もうちょっと抵抗があるかと思ったんだけど。", "397000241_2": " 国連直轄とは言っても、聖遺物使いがいなければこの程度か」", "397000241_3": "「でも、『緒川慎次』はやっぱり一味違うね」", "397000241_4": "「ああ。ドッペルゲンガーを相手に、ああも戦えるとは……。", "397000241_5": " ん、分身した? モニターだと何してるのかまるでわからないな」", "397000241_6": "「いずれにしろ、彼がここにいたらすんなりいったかどうか。", "397000241_7": " よかったです、使命感に駆られてくれて」", "397000241_8": "「おかげで、こうして人質をとれた。", "397000241_9": " こうすれば、帰ってきても簡単には身動きがとれないだろう」", "397000241_10": "「く……ッ!」", "397000241_11": "「言わせておけば……ッ!」", "397000241_12": "「おっと。\\n 変な気は起こすなよ」", "397000241_13": "「う……ッ!」", "397000241_14": "「やめなさいッ!\\n 抵抗はしないから、誰も傷つけないでッ!」", "397000241_15": "「うるさいな。\\n そんなに吠えなくても聞こえている」", "397000241_16": "「安心しろ。手を煩わせないなら、殺しはしない。\\n 人質はそれなりに数がいた方が、使い勝手がいい」", "397000241_17": "「あなたたちは、いったい……」", "397000241_18": "「……そうですね。\\n せっかくなので、名乗っておきましょうか」", "397000241_19": "「……いいんだな?」", "397000241_20": "「うん。わたしたちがどんな人間なのか知ってもらわないと。", "397000241_21": " ……恨む相手の名前くらい、知りたいでしょうし」", "397000241_22": "「……そうだな」", "397000241_23": "「では、しばしお耳を拝借……」", "397000241_24": "「わたしたちは『見放された世界』より参りました。\\n 組織としては、『OTHERS』と名乗っております」", "397000241_25": "「OTHERS……他人、という意味でしょうか……?", "397000241_26": " しかし、『見放された世界』というのは……?」", "397000241_27": "「わたしたちOTHERSの目的は――", "397000241_28": " 略奪です」", "397000241_29": "「略奪……ッ!?」", "397000241_30": "「まさか、目的はS.O.N.G.の機密か聖遺物……ッ!?", "397000241_31": " そう簡単に奪えるだなんて思うなよッ!!」", "397000241_32": "「それに、街のあの怪物がお前たちの仕業だっていうなら、\\n 無差別な攻撃になんの意味があるんだッ!」", "397000241_33": "「……口上ぐらい静かに聞けないのか、お前たち。", "397000241_34": " 足に一発ぶち込んでやれば、ちょっとは静かになるか?」", "397000241_35": "「う……ッ!」", "397000241_36": "「……いや、やめておこう。\\n お前は悲鳴の方がうるさそうだ」", "397000241_37": "「フフ。続きをよろしいですか?", "397000241_38": " ……略奪とは言いましたが、欲しいのはモノではありません」", "397000241_39": "「機密? 聖遺物?\\n そんなものに興味はない」", "397000241_40": "「……」", "397000241_41": "「わたしたちが欲しいのは、星命力」", "397000241_42": "「この世界の、いいえ、\\n 『大きな流れ』を持つ並行世界全ての……」", "397000241_43": "「……失礼。\\n これは余計な情報ですね」", "397000241_44": "「……やはり、『見放された世界』というのは、\\n こことは別の並行世界のことでしたか」", "397000241_45": "「しかし、見放されたというのは……?」", "397000241_46": "「知る必要はないです。\\n どのみち、あなたがたに選択の権利などありませんから」", "397000241_47": "「わたしたちは……我らが『見放された世界』のために、\\n この世界を殺します」", "397000241_48": "「世界を……殺すッ!?」", "397000241_49": "「どういう意味……?」", "397000241_50": "「それは……」", "397000241_51": "「司令の不在に、好きにさせてたまるかッ!」", "397000241_52": "「雑魚だと思ったかッ!? 俺たちのボディチェックを\\n しなかったことを後悔させて――ッ!!」", "397000241_53": "「ぐぁ……ッ!」", "397000241_54": "「――ッ!!", "397000241_55": " なんてことを……ッ!」", "397000241_56": "「動くな。", "397000241_57": " どのみち即死だ、手当の必要はない」", "397000241_58": "「く……ッ!!」", "397000241_59": "「……そう睨むな。今のはそいつが悪い。\\n 銃なんか抜こうとするからそうなるんだ」", "397000241_60": "「……けれど、少々もったいないことをしました。\\n あれもまた、資源となり得たのに」", "397000241_61": "(想い出……資源……", "397000241_62": " やはり、この人たちがドッペルゲンガーを……?)", "397000241_63": "「けど、今ので伝わったはずだ。\\n あたしたちが、本気だってこと」", "397000241_64": "「それでも抵抗するというなら……", "397000241_65": " 死に急ぐのは愚かだと思うけど、やってみればいい」", "397000241_66": "「……1つ、いいかしら?」", "397000241_67": "「……なんでしょう?」", "397000241_68": "「S.O.N.G.本部の中枢であるこの発令所まで、\\n どうやって警備をかいくぐって侵入したの?」", "397000241_69": "「ちょっとやそっとで潜り込めるほど、\\n 平和ボケしていたつもりはないのだけど?」", "397000241_70": "「どうやって、か……」", "397000241_71": "「どうやってもこうやってもないさ。\\n お前たちは、どうせあたしたちに気づかない」", "397000241_72": "「ええ。本当に、ずっと見ていたというのに、酷い話です。\\n あなたたちのファンよりも熱烈に観察していたつもりですよ?」", "397000241_73": "「けれど……わたしたちは、わたしたちの世界同様、\\n 存在が薄いですからね」", "397000241_74": "「薄い……?\\n それは、どういう……?」", "397000241_75": "「……」", "397000241_76": "「…………?」", "397000241_77": "「質問コーナーはこのあたりにして、話を戻しましょう」", "397000241_78": "「残念ながら、S.O.N.G.の方々……特に『ネームド』の\\n あなたがたは、非常に強い精神力をお持ちです」", "397000241_79": "「力とは、高きから低きに流れるもの……」", "397000241_80": "「『自分が自分である』と言い切れないような有象無象であれば、\\n その生命力は弱い方の器に収まってくれるものなのですが……」", "397000241_81": "「強い自我を持つ者は、\\n 困ったことにドッペルゲンガーに生命力を収めるのも一苦労です」", "397000241_82": "「想い出……生命力を器に箱詰めして持ち帰るのがあたしたちの\\n 目的だ」", "397000241_83": "「……が、お前たちはそれもうまくいかないときた」", "397000241_84": "「だったら……あたしらで、お膳立てしてやる必要がある。\\n そうだろう?」", "397000241_85": "「な、なにを……ッ!」", "397000241_86": "「心が強いなら、それを折るだけです。\\n ――そのための手段なら、わたしたちはよく心得ています」", "397000241_87": "「ま、まさか……\\n ここで俺たちを……ッ!?」", "397000241_88": "「安心しろ、無駄に苦しめるのは趣味じゃない。\\n 殺すときは――ひと思いに終わらせてやる」", "397000241_89": "「全員、構えろッ!」", "397000241_90": "「…………ッ!」" }