{
"397000111_0": "辺獄のふち",
"397000111_1": "「本当に……\\n うんざりするほどに平和そうだな」",
"397000111_2": "「この村のこと?\\n それとも、この世界?」",
"397000111_3": "「どっちも、かな。……あたしたちの世界に比べれば、\\n どこだってマシかもしれないけど」",
"397000111_4": "「……そうだね」",
"397000111_5": "「キョウ様、ヨウ様。お話し中に失礼致します。\\n 準備が整いました」",
"397000111_6": "「……ご苦労さまです。\\n すぐに始めます。待機位置に着き、指示を待ちなさい」",
"397000111_7": "「了解ですッ!」",
"397000111_8": "「……いいんだね、キョウ」",
"397000111_9": "「うん……覚悟はできてる。",
"397000111_10": " ヨウだって、そうでしょ?」",
"397000111_11": "「それは、そうだけど。\\n けど、背負うのは、別にあたし1人でも……」",
"397000111_12": "「ヨウ、それは言いっこなし。\\n わたしたちは、一心同体」",
"397000111_13": "「わたしたちは、一緒に失ってきた。\\n それはこれから先も同じ……でしょ?」",
"397000111_14": "「……そうだね、ごめん。",
"397000111_15": " さっきのは、なし。だから――」",
"397000111_16": "「あたしと一緒に、\\n 『英雄』に堕ちよう、キョウ」",
"397000111_17": "「もちろん。\\n いつだって一緒だよ、ヨウ」",
"397000111_18": "「な、なんなんだ、あんたたちはッ!?\\n 見ての通り、ここは貧しい農村だぞッ!」",
"397000111_19": "「奪うものなんて、\\n なんにもありゃしない……ッ!」",
"397000111_20": "「お前、家族は?」",
"397000111_21": "「な、なに……?」",
"397000111_22": "「家族はいるか?\\n ……そう聞いている」",
"397000111_23": "「……妻がいる。\\n それに、息子と娘が2人ずつ」",
"397000111_24": "「……へぇ。それは結構。\\n さぞかし、たくさんの想い出があるだろうね」",
"397000111_25": "「理不尽に抗うくらい元気が有り余ってるのも、都合がいい。\\n 無気力な人間だと、正確なデータが取れないから……」",
"397000111_26": "「な……なんだ?\\n あんたたち、何を言っているんだッ!?」",
"397000111_27": "「おい、出番だ」",
"397000111_28": "「はい。……この時を待っておりました。",
"397000111_29": " 一足先に、我らが世界の礎となってまいりますッ!」",
"397000111_30": "「…………」",
"397000111_31": "「や、やめろ、やめてくれッ!\\n いったい、何をするつもりだッ!?」",
"397000111_32": "「全ては……\\n 『見放された世界』のためにッ!!」",
"397000111_33": "「ぐ……ッ!? な、なんだ、今のはッ!?\\n 人が、爆発したのか……ッ!?」",
"397000111_34": "「いいや。\\n 今のは、言うならば……『避雷針』さ」",
"397000111_35": "「ひ、避雷針……?」",
"397000111_36": "「ああ。\\n あれを呼び寄せるためのな」",
"397000111_37": "「――――」",
"397000111_38": "「ひ……ッ!?\\n ば、化けもの……ッ!?」",
"397000111_39": "「フェーズ1、転移は成功……」",
"397000111_40": "「後は、ちゃんと機能するかどうか――」",
"397000111_41": "「く、来るな……ッ、\\n 来るなぁッ!」",
"397000111_42": "「暴れないでください」",
"397000111_43": "「取って食おうというわけではありませんから。\\n もっとも――」",
"397000111_44": "「あ……、\\n あ、あ、あ、あ、あぁぁ――ッ!?」",
"397000111_45": "「あなたの想い出と生命力は、\\n 奪わせてもらいますが」",
"397000111_46": "「そん、な……\\n 消える……家族が……想い出が……ッ!」",
"397000111_47": "「……安心しろ。恨むな、なんて言わない。",
"397000111_48": " 存分に恨んで、怨んで、憎んでくれ」",
"397000111_49": "「この……ッ、\\n 悪魔、が……――ッ」",
"397000111_50": "「ぁ――。\\n …………」",
"397000111_51": "「「……」」",
"397000111_52": "「――――」",
"397000111_53": "「…………」",
"397000111_54": "「ん……。\\n 許容量まで溜め込んだみたいだね」",
"397000111_55": "「こっちの男も……脈はある。\\n 死んだわけじゃない」",
"397000111_56": "「ああ……\\n これで本当の本当に、準備は整った。あとは……」",
"397000111_57": "「わたしたちが、覚悟を決めるだけ」",
"397000111_58": "「そうだね。",
"397000111_59": " そう――あたしたちは侵略者だ」",
"397000111_60": "「そして、略奪者」",
"397000111_61": "「覚悟をもって、\\n 人を救う者を英雄と呼ぶのなら……」",
"397000111_62": "「侵略と略奪をもって、\\n わたしたちは英雄となる――ッ!!」",
"397000111_63": "「申し上げます。目標世界での仕込みが完了しました。\\n いつでも作戦を始められます」",
"397000111_64": "「ああ、わかった。なら……そうだな。\\n みんなを集めてもらえるか?」",
"397000111_65": "「はッ!」",
"397000111_66": "「…………」",
"397000111_67": "「進もう、キョウ。それがどんなに血塗られた道でも、\\n お前と一緒なら、あたしは迷わない」",
"397000111_68": "「うん。一緒に行こう、ヨウ。\\n あなたが進む道なら、地獄へ続いていようと構わない」",
"397000111_69": "「同志諸君、時は来ましたッ!\\n まもなく、わたしたちの戦いが始まりますッ!」",
"397000111_70": "「「「おおぉーーーッ!」」」",
"397000111_71": "「お前たちの命、あたしたちが預かったッ!」",
"397000111_72": "「たとえ、かの地で果てたとしても、\\n その魂は永遠に語り継がれることになるでしょうッ!」",
"397000111_73": "「死を恐れるなッ!\\n ただ、故郷を救うことだけを考えろッ!」",
"397000111_74": "「「「おおぉーーーッ!」」」",
"397000111_75": "「準備は良いな? 現時刻をもって、\\n 我々はかの『世界群』へ攻撃を開始する――ッ!」"
}