{
"382000712_0": "「う……頭がくらくらする……」",
"382000712_1": "(あたし、また気を失ってたの……?)",
"382000712_2": "(……そうだッ! 師範がイシムの眷属と戦ってるんだッ!)",
"382000712_3": "「……え?\\n なに、これ? 赤い……血?」",
"382000712_4": "「いったい、誰の……」",
"382000712_5": "「そこに倒れてるのは……師範?」",
"382000712_6": "(血……師範の身体から流れて……)",
"382000712_7": "「…………そんな」",
"382000712_8": "「嘘、ですよね……?\\n あんな、めちゃくちゃに強い師範がやられちゃうなんて……」",
"382000712_9": "「…………」",
"382000712_10": "「師範……、師範ッ!」",
"382000712_11": "「……ッ!\\n こんなに酷い傷を……ッ!?」",
"382000712_12": "「う……」",
"382000712_13": "「師範ッ!?\\n よかった、息はあるッ!」",
"382000712_14": "「当たり前だ、バカやろう……。\\n 俺がそう簡単に死ぬかよ……」",
"382000712_15": "(あたしが気絶してる間に、イシムの眷属にやられた……?\\n でも、眷属は師範の敵じゃなかった……なら)",
"382000712_16": "「もしかして……イシムにやられたんですかッ!?」",
"382000712_17": "「…………」",
"382000712_18": "「ああ、そうみたいだな」",
"382000712_19": "「師範……もしかして、あたしを護って怪我を……?」",
"382000712_20": "(あたし、また護られてる……)",
"382000712_21": "「……ごめんなさい、師範。\\n あたしに、戦う力がなかったから……」",
"382000712_22": "「あたしが、秘められた力を使いこなせていたら、\\n 足手まといになんてならなかったのに……ッ!」",
"382000712_23": "「……明日香。お前よ」",
"382000712_24": "「才能がないだの、力を使いこなせればだの……、\\n いつからそんなつまらねぇことを言うようになった?」",
"382000712_25": "「え……?」",
"382000712_26": "「お前が目指した正義のヒーローってやつは、\\n 誰かのお膳立てが無けりゃなれないもんなのか?」",
"382000712_27": "「……ッ!」",
"382000712_28": "「あの日、俺に弟子入りを志願してきたお前は、\\n そんな他力本願じゃなかったぜ」",
"382000712_29": "「お前は、自分自身で戦う力を身に着けようと、必死だった。\\n 俺が何度突っ返そうと、諦めなかった」",
"382000712_30": "「師範……」",
"382000712_31": "「だからよ……簡単に諦めてんじゃねぇ」",
"382000712_32": "「諦めねぇってのは、それだけで強ぇんだよ。\\n その心の強ささえありゃ、十分だ」",
"382000712_33": "「その諦めの悪さが、まるで自分を見てるみてぇでなぁ……」",
"382000712_34": "「……だから俺は、\\n お前を認めて、弟子にしてやったんだ」",
"382000712_35": "「諦めない、強さ……」",
"382000712_36": "「明日香……お前はバカでいい。才能だとか、\\n 小賢しいこと考えずに、バカのまま、進み続けろ」",
"382000712_37": "「そうすりゃ、正義のヒーローだろうが、最強の格闘家だろうが、\\n 気づいたらなっちまってるもんじゃねぇのか……?」",
"382000712_38": "「師範……ッ!」",
"382000712_39": "「ちッ、ガラにもねぇ説教させやがって……」",
"382000712_40": "「この厄介ごとが片付いたら、みっちり鍛え直してやるからな。\\n 覚悟しとけよ」",
"382000712_41": "「……はいッ!」",
"382000712_42": "(そうだ……あたしは焦るあまり、自分自身が\\n 積み重ねてきたものを否定していたんだ)",
"382000712_43": "(力がなければ正義は貫けない……。\\n でも、力があれば正義っていうわけじゃないッ!)",
"382000712_44": "(正義を貫くために自分を鍛え続ければ、\\n きっとあたしはいつか、奏さんのように……ッ!)",
"382000712_45": "(だから、今はあたしにできることをしようッ!)",
"382000712_46": "「師範、じっとしててくださいッ!\\n 応急手当をしますッ!」",
"382000712_47": "「へッ、この程度、ツバつけときゃ治るっての……」",
"382000712_48": "「そんなわけないでしょうッ! こんなに血を流してッ!」",
"382000712_49": "「……師範に怪我を負わせた相手は、\\n どこへ行ったんですか?」",
"382000712_50": "「……明日香」",
"382000712_51": "「はい? なんですか、師範?」",
"382000712_52": "「……負けるんじゃねぇぞ」",
"382000712_53": "「負ける……?\\n なんのことですか?」",
"382000712_54": "「……白旗上げるのは、\\n お前には似合わねぇっつってんだ……よ……」",
"382000712_55": "「師範……ッ!?」",
"382000712_56": "「…………」",
"382000712_57": "「よかった、気絶しただけか……」",
"382000712_58": "「だけど……、\\n イシムはいったい、どこに消えたの……ッ!?」"
}