{ "502000111_0": "頭の燃えている、人?", "502000111_1": "「『覚悟しろ、怪獣ッ!\\n おまえの悪行も、そこまでだッ!!』」", "502000111_2": "「……おう。\\n あたしは怪獣じゃないけどな」", "502000111_3": "「フフ。立花のそれは、\\n さきほどのヒーローの倣いだな?」", "502000111_4": "「その通りですともーッ!\\n ね、ね、今日のヒーローショーもすごかったですねッ!」", "502000111_5": "「ったく。買い物だけのつもりが、\\n 随分長いこと付き合っちまった。もう夕方じゃないか」", "502000111_6": "「いやぁ、ヒーローショーをやってるって知ったら、\\n つい見たくなっちゃって」", "502000111_7": "「まあ……\\n それなりに楽しめたのは事実だけどよ」", "502000111_8": "「またまたぁ。クリスちゃん、ものすごーく熱中してたでしょ。", "502000111_9": " がんばれー、そこだーッ! ……って」", "502000111_10": "「バ……ッ! 熱中してるふりだ、ふりッ!\\n 白けた顔したやつがいると、盛り下がるだろッ!」", "502000111_11": "「ああいうのは、その……\\n ちゃんと楽しむのが礼儀なんだよッ」", "502000111_12": "「恥じることなどないだろう、雪音。\\n あれは実に示唆に富んだ舞台だった」", "502000111_13": "「我々とて、『ヒーロー』を知らぬわけでもない。", "502000111_14": " あの高揚を思い起こさせてくれる舞台、興奮も当然のことッ」", "502000111_15": "「いや、まぁ……。\\n 先輩もどえらい声出して応援してたのは、そういうことか」", "502000111_16": "「『この仮面は、流れる涙を隠すため――。", "502000111_17": " 変・身ッ!!』」", "502000111_18": "「おまえはまだやってんのかよッ!」", "502000111_19": "「エヘヘ……\\n だぁって、かっこよかったんだもんッ!」", "502000111_20": "「でも……変身するのもいいけど、\\n 大きくなるヒーローもいいですよね」", "502000111_21": "「……そう言われると、あたしたちもバカみたいに\\n でかくなったことがあったな」", "502000111_22": "「グリッドマン……そして新世紀中学生たちと出会った時の話だな。\\n あれはなかなかに、得難い経験だった」", "502000111_23": "「ガウマさんのダイナゼノンも……\\n みんな、元気にしてるかな?」", "502000111_24": "「彼らがどこの世界にいるのかはわからない……\\n おいそれとは会えないのが寂しいところだな」", "502000111_25": "「また会える機会があるとすれば、\\n どこかの世界に異変が生じたとき、か」", "502000111_26": "「便りがないのが元気な証拠、ってわけだ」", "502000111_27": "「うんうん。\\n ノイズも怪獣も、出ないに越したことないよね」", "502000111_28": "「ところで……立花は、ゆっくりしていて大丈夫か?\\n この後、お父上に会いに行く予定と言っていたが……」", "502000111_29": "「はい。\\n お父さんのアパートに遊びに行く予定です」", "502000111_30": "「ああ、あの親父さんか。\\n せっかく仲直りできたんだから、大切にしろよ」", "502000111_31": "「もっちろん。", "502000111_32": " それじゃ、わたしはこの辺で失礼しまーすッ!」", "502000111_33": "「ああ、気をつけて」", "502000111_34": "「またな」", "502000111_35": "「それで……\\n 最近、学校はどうだ?」", "502000111_36": "「楽しいよ。", "502000111_37": " お恥ずかしながら……補習ばっかりではあるけど」", "502000111_38": "「なんだ、勉強についていけてないのか?」", "502000111_39": "「もしそうなら、俺のわかる範囲であれば、\\n いつだって力になるからなッ」", "502000111_40": "「ありがとッ」", "502000111_41": "「けど、ついていけてないっていうより、どうしても任務がね。\\n 今週末も、数学の補習なんだぁ……タハハ」", "502000111_42": "「正義の味方も楽じゃないな。", "502000111_43": " でもまぁ、ヒーローってのはいつの時代もそんなもんか」", "502000111_44": "「へ?\\n どういうこと?」", "502000111_45": "「ほら、ヒーローってのは正体を隠すものだろ?\\n 俺もS.O.N.G.からは、響のことは口止めされてるし……」", "502000111_46": "「ま、娘が正義のヒーローやってます、\\n なんて言っても、誰も信じちゃくれないだろうけどな」", "502000111_47": "「アハハ。\\n 確かに、変な人だと思われちゃうかも」", "502000111_48": "「まあ、わたしは相変わらず……\\n ヒーローなんて大げさなつもりはないけどさ」", "502000111_49": "「……小さい頃から、響はそうだったもんな。\\n 相変わらず、胸にあるのは人助けか?」", "502000111_50": "「うんッ。\\n わたしがしてるのは、今も昔も、ただの人助けだよッ」", "502000111_51": "「うちの娘は、本当に頼もしいな。", "502000111_52": " けど、あんまり無茶はしないでくれよ?」", "502000111_53": "「大丈夫だよ。\\n みんながいるもん」", "502000111_54": "「……そうか。\\n これは父親として、俺も負けていられないな」", "502000111_55": "「フフ……。\\n お父さんのほうは、最近はどうなの?」", "502000111_56": "「母さんたちとのことも、仕事のほうも……\\n ま、ぼちぼちってとこだなッ!」", "502000111_57": "「そっか。またみんなで出かける機会作りたいなら……\\n わたしも協力するからさッ」", "502000111_58": "「ああ。そのときはよろしくな。", "502000111_59": " ……そうだ、最近はもう1つハマってることがあって……」", "502000111_60": "「……?」", "502000111_61": "「おッ、その様子は父さんの趣味に興味津々かぁ?", "502000111_62": " 待っててくれよ、ここにしまって……」", "502000111_63": "「……じゃーんッ!\\n 見てくれ、父さんの力作をッ!」", "502000111_64": "「これって……パソコン?\\n ……それにしてはなんだか、ボロボロというかオンボロというか」", "502000111_65": "「うッ……", "502000111_66": " そこはまあ、ご愛嬌だッ」", "502000111_67": "「なんてったって、自作だからな。中古の店からジャンクパーツを\\n 安値で買ってきて、どうにか形にしたんだ」", "502000111_68": "「へぇ……ッ!\\n パソコンって、自分で作れるものなんだね」", "502000111_69": "「お父さんにこんな得意技があるなんて、\\n 知らなかったよ」", "502000111_70": "「フッフッフ。\\n そうだろう、そうだろうッ」", "502000111_71": "「でも……なんだかこのパソコン、\\n グリッドマンと会った時のジャンクを思い出すなぁ」", "502000111_72": "「……グリッドマン? その名前の感じ……\\n ヒーロー番組か何かの話か?」", "502000111_73": "「あッ!?", "502000111_74": " え、えーっと、そういうわけじゃないんだけど……」", "502000111_75": "(しまった……ッ! グリッドマンとのことは、人に話しちゃ\\n いけないんだった……ッ! ど、どうにか誤魔化さないと……)", "502000111_76": "「――わかるぞ、響」", "502000111_77": "「へ……ッ!?", "502000111_78": " い、いや、グリッドマンっていうのは、その……ッ!」", "502000111_79": "「いいよな、\\n 特撮ヒーローッ!」", "502000111_80": "「……。", "502000111_81": " ……ええッ!?」", "502000111_82": "「何を隠そう、\\n 俺も小さい頃は、そういう番組が好きでなー」", "502000111_83": "(なんか勘違いしてるーッ!?", "502000111_84": " けど、助かったッ!)", "502000111_85": "「へ、へぇ〜……?\\n お父さん、ヒーロー好きだったんだ」", "502000111_86": "「普通の中学生が、怪獣と戦うヒーローの手助けをしたりしてな。\\n ああいうの、憧れる時期があるよなぁ。うんうん……」", "502000111_87": "「ヒーローも好きだけど、怪獣もまたいいんだよッ!\\n ただの悪者っていうだけじゃない。怪獣にはロマンがあるんだ」", "502000111_88": "「ロマン……?\\n ……うーん、わたしにはちょっとわかんないかも」", "502000111_89": "「そうか? 良いところは探してみればたくさんあるもんだぞ。\\n 怪獣は怖いだけじゃなくて、案外愛嬌があったりするしなッ!」", "502000111_90": "「うんうん、いいことを言うねぇ。\\n やはり怪獣は、遊び心があってこそだよねぇ!」", "502000111_91": "「お、あんたもイケるクチかいッ!?\\n そうなんだよ、悪役の中に見え隠れする悲哀と人間性とか……」", "502000111_92": "「え? ……ん?\\n あれッ!?」", "502000111_93": "「いやいや待って、お父さんッ!?\\n こ、こちらの方は、どなたで……?」", "502000111_94": "「ん?\\n どなたって……」", "502000111_95": "「――どなたァッ!?」", "502000111_96": "「えぇぇぇッ!?\\n お、お父さんの知り合いじゃないのッ!?」", "502000111_97": "「いつの間にかお茶の間まで入り込んでるくらい、\\n 仲のいいお友達かとッ!?」", "502000111_98": "「し、知らないよ、こんな人ッ! ――人ッ!?\\n 頭燃えてるけど、人なのかッ!?」", "502000111_99": "「た、確かにッ!\\n こんなに頭が燃えてる人、そうそういないよねッ!?」", "502000111_100": "「ハッハッハ!\\n なかなかどうして、ご新規さんの反応としては上々だなあ!」", "502000111_101": "「いや、呑気かッ!?", "502000111_102": " ……だ、誰なんだ、あんた……ッ!?」", "502000111_103": "「おぉっと、これは失敬」", "502000111_104": "「私はアレクシス。\\n アレクシス・ケリヴという」", "502000111_105": "「えっと……そのアレクシスさんは、どうしてここに……?\\n ていうか、いつの間にこの部屋に……?」", "502000111_106": "「うう〜ん。どう説明するべきかな。\\n 実はちょっと厄介な連中から逃げていたんだよねえ!」", "502000111_107": "「その道中、何やらおもしろそうな話が聞こえてきたものでね。\\n つい顔を出してしまったよ」", "502000111_108": "「逃げていた……?", "502000111_109": " もしかして、誰かに追われてるんですか?」", "502000111_110": "「ひょ、ひょっとして……\\n 凶悪犯か何かなんじゃ……ッ!?」", "502000111_111": "「だ、だとしたら……\\n 響1人には戦わせないぞッ! 娘は、俺が護――ッ」", "502000111_112": "「ああ、そんなに警戒しないでくれたまえよ!」", "502000111_113": "「謎のナニカシラに追われていたからとりあえず逃げていた。\\n その程度に受け取ってもらって構わないよ」", "502000111_114": "「そ、その程度って……」", "502000111_115": "「いやぁ、なにぶん細かいことは、私にもわからないのさ。\\n どうにも記憶が混濁しているようでね」", "502000111_116": "「き、記憶喪失ってことですか……?\\n それなら、病院とか……」", "502000111_117": "「……ど、どうする、響?\\n とりあえず、警察に通報したほうが……」", "502000111_118": "――", "502000111_119": "「……おや」", "502000111_120": "「どうかしましたか?」", "502000111_121": "「うーむ、すまないね。\\n どうやら、ここが見つかってしまったらしい」", "502000111_122": "「え――」", "502000111_123": "「「え、えぇえぇぇッ!?」」", "502000111_124": "「な、なんだこれは……ッ!?\\n 空間に穴が……ッ!?」", "502000111_125": "「まさか、ギャラルホルンのゲート……ッ!?", "502000111_126": " でも、いつもと何か違うような……」", "502000111_127": "「……思ったよりしつこいな。\\n さて、どうするべきか――おや?」", "502000111_128": "「――ッ!?\\n こ、これは……穴に、引き寄せられてるッ!?」", "502000111_129": "「う、うわあッ!?\\n この前買った茶碗が、穴の中に吸い込まれて、消えて……ッ」", "502000111_130": "「追いきれないと見るや、\\n 捕らえにきたということかな。ふーむ、これはこれは……」", "502000111_131": "「逃れられそうもないねぇ。\\n いやはやまったく、油断したなぁ」", "502000111_132": "「く……ッ!\\n ひ、響ッ! 掴まるんだッ!」", "502000111_133": "「この手を掴んで――", "502000111_134": " うわッ!? と、戸棚が、こっちにッ!?」", "502000111_135": "「お父さんッ、危ないッ!!」", "502000111_136": "「響ッ!?」", "502000111_137": "「ぐ……ダメだ……ッ!\\n 踏ん張り、きれない……ッ!」", "502000111_138": "「ひ、響ぃぃぃいッ!」", "502000111_139": "「どうやら、巻き込んでしまったようだね。\\n すまないねぇ、そんなつもりはなかったのだけれど」", "502000111_140": "「ア、アレクシスさんッ!?\\n どうしてそんなに平然としてるんですかッ!?」", "502000111_141": "「そりゃあ、大したことでもないからさ。\\n それより、そろそろここを抜けるよ。着地に注意したまえ」", "502000111_142": "「えッ!?\\n ちゃ、着地ッ!?」", "502000111_143": "「わ、わぁああああああああ……ッ!」" }