{ "398001011_0": "幽霊少女は真昼に笑う", "398001011_1": "「……ん」", "398001011_2": "「気がついたみたいだな」", "398001011_3": "「大丈夫か?」", "398001011_4": "「どこか痛いところはないか?」", "398001011_5": "「……うん、平気」", "398001011_6": "「わたし、確かおまもりの中に吸い込まれて……」", "398001011_7": "「そこから、\\n みんなが引っ張り上げてくれたんだね……」", "398001011_8": "「けど……わたしがここにいるってことは、\\n おまもりは砕けちゃったんだね……」", "398001011_9": "「ああ……」", "398001011_10": "「大丈夫。落ち込んでる、けど……\\n ちゃんと、クリスたちの声、聞こえてたから」", "398001011_11": "「それに……ママの声も。\\n 頑張りなさいって、言ってくれた……」", "398001011_12": "「……」", "398001011_13": "「寂しいし、やっぱり怖いよ。", "398001011_14": " でもこれでよかったんだって、ちゃんとわかってる」", "398001011_15": "「わたしはもう、ゆりかごからは出なくちゃいけない。\\n 本当はずっと、わかってた……」", "398001011_16": "「でも、それを認めるのが怖くて、\\n それなら、ずっと『幽霊』でいる方が楽だと思ってたの」", "398001011_17": "「そうすれば、ママが護ってくれるゆりかごのなかにいても、\\n 言い訳ができるから」", "398001011_18": "「そうだな。\\n 世界と繋がっていくのは、誰しも1度は怖いと感じるものだ」", "398001011_19": "「じゃあ、どうしてみんなは怖いのに向かっていけるの?\\n なんの保証もないのに」", "398001011_20": "「……たぶん、怖くても向かった先に\\n 何かがあるって信じたい――いいや」", "398001011_21": "「何かを作っていけるんだって\\n 信じたいんだと思う」", "398001011_22": "「何かを作っていける……」", "398001011_23": "「ああ。おまえだって……\\n 玲だって、そうなんじゃないか?」", "398001011_24": "「だから、\\n ママのゆりかごから抜け出せたんじゃないかな」", "398001011_25": "「……そうなのかな。\\n まだわからないや」", "398001011_26": "「だからかな。\\n わからないけど、わかりたいかもしれない」", "398001011_27": "「これが……フフ。\\n 何かを作っていける……かも、ってこと?」", "398001011_28": "「あ……」", "398001011_29": "「――ッ!\\n な、なんかすごい音してたし、なんかあったのかもって……」", "398001011_30": "「ええと、それに、それで……さっきの騒ぎで\\n ハンカチ落としたっぽいから、探しに来ただけ」", "398001011_31": "「そっか……」", "398001011_32": "「…………」", "398001011_33": "「…………」", "398001011_34": "「ほら、玲。\\n 行ってこいよ」", "398001011_35": "「――ッ!」", "398001011_36": "「……あ、あのさッ!」", "398001011_37": "「え、あ、あのッ!", "398001011_38": " ごめん……えっと、その……」", "398001011_39": "「……バカみたい。\\n あんた悪くないでしょ、なんで謝るのよ」", "398001011_40": "「え……あ……」", "398001011_41": "「はー……もう。\\n ……あんたさ、占いできるんでしょ?」", "398001011_42": "「う、うん……」", "398001011_43": "「じゃあさ、今度アタシのこと占ってよ……」", "398001011_44": "「え――」", "398001011_45": "「何?\\n ダメなわけ?」", "398001011_46": "「だ……ダメじゃないッ!」", "398001011_47": "「フ……\\n もう大丈夫そうだな」", "398001011_48": "「ああ。\\n ママさんも、ちゃんと見てるといいな」", "398001011_49": "(あんたの呪いが、この結果を生んだなら……\\n 護りすぎたことだって、無駄じゃなかったんだ)", "398001011_50": "(だからさ、ちゃんと見てろよ。\\n あんたの玲は……ちゃんと笑えてるぞッ!)" }