{ "398000911_0": "ママ", "398000911_1": "「ポルターガイストの勢いが増したッ!」", "398000911_2": "「くッ、勢いの底がまるで見えない……ッ!」", "398000911_3": "「これはママが『わたしがわたしを護れるように』\\n 残してくれた力なのッ!」", "398000911_4": "「ママがもういない――", "398000911_5": " そんなこと、わかってるッ!!」", "398000911_6": "「だからこそ、わたしは1人で生きていかなきゃいけないッ!\\n この力は、そのための力ッ!!」", "398000911_7": "「だから渡せない、触れさせないッ! どうせ誰も、\\n 幽霊に触れようとはしてくれないんだからッ!」", "398000911_8": "「この……バカやろうッ!」", "398000911_9": "「じゃあ、さっきの子たちはなんだってんだよッ!」", "398000911_10": "「わたしに、\\n 嫌なことを言いにきただけじゃないッ!」", "398000911_11": "「ノイズは人を殺す。おまえだってわかってるだろッ!\\n そんなことは誰だって知ってる常識だッ!」", "398000911_12": "「それが頻繁に現れると噂される場所に、危険を冒してまで、\\n わざわざ嫌いなやつに、どうでもいいやつに会いにくるか?」", "398000911_13": "「――ッ!」", "398000911_14": "「『ママのおまもり』が大事なのはわかる。\\n けど、それにばっかり目が行き過ぎだ」", "398000911_15": "「おまえ……そのままじゃ、\\n 本当に何も見えなくなっちまうぞ」", "398000911_16": "「そんなこと、言われなくたってわかってる……ッ!", "398000911_17": " でも、怖いのッ!」", "398000911_18": "「怖くて、仕方ない……ッ!\\n 視線を上げたら、相手がどんな顔でわたしを見ているのか……」", "398000911_19": "「もし、本当に……\\n 幽霊を見るみたいな目で見られてたら?」", "398000911_20": "「1人じゃとても、受け止められない……ママのくれた\\n おまもりがないと、わたしはきっと壊れちゃうッ!」", "398000911_21": "「ママだって、わたしのことを護ってくれるって言ったッ!", "398000911_22": " なら、それに縋って何が悪いのッ!!」", "398000911_23": "「わたしは……ッ!!」", "398000911_24": "「――ッ!?\\n ま、眩し……ッ!」", "398000911_25": "「この光、あのおまもりから……ッ!?」", "398000911_26": "「なんだよこれ、ゆりかご……ッ!?\\n 『おまもり』がレイを取り込んだのか……ッ!」", "398000911_27": "「それに、なんだッ!?\\n 変化したギアが、突然重く……ッ!」", "398000911_28": "「ぐ……ッ!\\n もしかしたら、このギアは……」", "398000911_29": "「あいつの『おまもり』が……いや、あいつのママが、\\n あいつを護ってほしいと、あたしたちに託した力だったんじゃないか?」", "398000911_30": "「ならばこの状態は……1度は力を貸したものの、わたしたちでは\\n レイを護るに能わずと、判じられたということか……ッ!?」", "398000911_31": "「…………」", "398000911_32": "「あいつ、繭で雁字搦めに……ッ!?", "398000911_33": " くそ、今助け――ッ!!」", "398000911_34": "「避けろッ!!」", "398000911_35": "「――言われなくてもッ!!」", "398000911_36": "「壁が抉れて……ッ!?", "398000911_37": " 攻撃力がポルターガイストの比じゃないッ!」", "398000911_38": "「ぐ――ッ!?\\n あたしたちを近づけない気かッ!?」", "398000911_39": "「けどなんだか、妙な感じだッ!」", "398000911_40": "「どうした、雪音ッ!?」", "398000911_41": "「この攻撃にしたって、\\n あいつを取り込むにしたって――」", "398000911_42": "「どうしてあいつのいる場所だけ、\\n あんなに大事そうに、何重にも……」", "398000911_43": "「あれじゃむしろ、\\n 何かから護ってるみたいな感じが――」", "398000911_44": "「……そうだな、あたしにもそう見える」", "398000911_45": "「あの子が最も必要として、\\n だからこそ心を縛る呪いと化してしまった、あれは……」", "398000911_46": "「ああ。あれこそが……\\n あいつのママだッ!」", "398000911_47": "「だが、これが『母の愛』と呼べるのかッ!?」", "398000911_48": "「身動きがとれぬほどに縛りつけ、抱き締めるだけの腕が、\\n 目を覆うだけの手のひらを、愛とッ!?」", "398000911_49": "「そうだな……理由はどうあれ、\\n あの子の自由を奪っていることに変わりはないッ!」", "398000911_50": "「……いいや、違う。\\n それだけじゃないッ!!」", "398000911_51": "「……確かにこれは、こいつを縛りつける呪いになった。\\n なっちまった……」", "398000911_52": "「けどッ!\\n 始まりは、違ったはずだッ!!」", "398000911_53": "「じゃなきゃ、あいつを護るため、あたしたちのギアに\\n この『おまもり』が力を貸してくれるはずがないッ!」", "398000911_54": "「確かにそうだ……ッ!", "398000911_55": " 最初、ギアから感じた想いは、呪いなどとは程遠いッ!」", "398000911_56": "「今ならばわかる――はじめにわたしに届いた声は、\\n 確かにあの子を護ってくれという願いだったとッ!」", "398000911_57": "「なら……なあ、あいつのママさんよ、悪かった。\\n あたしたちのやり方は、あんたの気には食わなかったか?」", "398000911_58": "「けどなッ! きっと――\\n あいつはあんたが思ってるほど弱っちくないぞッ!!」", "398000911_59": "「然りッ!\\n 確かに、人には独りでは立てない夜がある――」", "398000911_60": "「だが、不器用だろうと、届くか保証がなかったとしても――\\n 手を伸ばしてくれる誰かがいる限りッ!」", "398000911_61": "「その孤独を乗り越えていく力があるッ!」", "398000911_62": "――――", "398000911_63": "「けど、その『誰か』は、自分の目で見なきゃ気づけない。\\n あんたが、目を塞いだままじゃダメなんだッ!!」", "398000911_64": "「……大事なものには傷ついてほしくなかったんだよな。\\n 痛いことも悲しいことも溢れてるこの世界に……」", "398000911_65": "「戦い方を教えていない娘を放り出しちまって、\\n 護ってやらなきゃって思ったんだよな」", "398000911_66": "「でも……その『護りたい』って想いが、\\n 呪いであっていいはずがないんだよッ!」", "398000911_67": "「あんたの『おまもり』は――", "398000911_68": " あいつにとって愛のままじゃなきゃ、ダメなんだッ!!」", "398000911_69": "「そいつを呪いに変えちまったら、\\n あんたの娘は一生誰ともわかりあえなくなっちまう……ッ!」", "398000911_70": "――――", "398000911_71": "「く……ッ!\\n 聞く耳持たずかッ!」", "398000911_72": "「娘も娘ならママもママかッ!\\n 揃いも揃って頑固でいやがるッ!!」", "398000911_73": "「なら、まずはその手を解いてやるッ!!」", "398000911_74": "「そして、あんたが納得するまで、\\n あたしたちだってあいつの心を護りたいんだってぶつかってやるッ!」", "398000911_75": "「ああ。\\n あたしたちはあの子に手を伸ばすことを諦めないッ!」", "398000911_76": "「だからこそ、あなたの腕の中の娘はもう、\\n 自分自身で歩かねばならないということを……」", "398000911_77": "「それを支えようってやつがここにいて……それだけじゃない、\\n 彼女を見ようとしている子たちがいることもッ!」", "398000911_78": "「あんたにも、あいつにも、\\n 何度だって教えてやるッ!」", "398000911_79": "「だから、思い出してくれッ!\\n あんたたちが大事にしてた、愛情ってもんをッ!!」" }