{ "398000121_0": "数日前――", "398000121_1": "「おっさん、定期報告に来た――」", "398000121_2": "「うわぁぁぁぁッ!\\n 血がッ! 僕の尊い身体から血がぁぁぁぁッ!」", "398000121_3": "「おわッ!?」", "398000121_4": "「博士ッ!\\n しっかりしてくださいッ!」", "398000121_5": "「顔面への損傷ッ! 衝撃の度合いによっては\\n 僕の天才的頭脳に影響がぁぁぁぁッ!」", "398000121_6": "「顔面に損傷って言っても、\\n 戦闘後に転んで鼻血出しただけでしょッ!」", "398000121_7": "「そうですよッ!\\n それより身体の心配をしてくださいッ!」", "398000121_8": "「僕の頭脳は世界の宝なんですよッ!\\n それが損なわれることは、すなわち世界の損失ぅぅぅぅッ!」", "398000121_9": "「わかりましたからッ!\\n ほら、早く医務室に行きましょうッ!」", "398000121_10": "「なんだなんだぁ?\\n やたら忙しそうじゃないか」", "398000121_11": "「クリスくんッ!」", "398000121_12": "「ちょうどいいところに来てくれたわね」", "398000121_13": "「定期報告に来たんだけど……\\n 何かあったのか?」", "398000121_14": "「それが――」", "398000121_15": "「ノイズの反応を検知ッ!\\n 場所は高速道路付近ですッ!」", "398000121_16": "「了解ッ!」", "398000121_17": "「僕が向かいます」", "398000121_18": "「頼んだッ!」", "398000121_19": "「はい」", "398000121_20": "「あたしも加勢しようか?\\n まあ、あの人が向かったなら必要ないかもしれないけど」", "398000121_21": "「もし手伝ってくれるつもりがあるなら、そうだな……\\n できれば別の任務を頼みたい」", "398000121_22": "「別の任務?」", "398000121_23": "「ああ。\\n 二課にも関わりのある人物から、直々の依頼だ」", "398000121_24": "「山川ミユキ博士。\\n 聖遺物研究における一角の人物なのだが……」", "398000121_25": "「数ヶ月前、研究中の事故に巻き込まれ負傷。\\n 現在も入院中とのことだが、二課に直接連絡を取ってきたんだ」", "398000121_26": "「しかし、こちらも急務でノイズの対応に追われていて\\n 山川博士の依頼が後回しになっていてな……」", "398000121_27": "「事情はわかった。\\n それで、その依頼っていうのは、どんな内容なんだ?」", "398000121_28": "「……詳細を伝える前に、1つ確認したい。\\n 君は超常現象に対して抵抗はないか?」", "398000121_29": "「超常現象って……そんなのいつも相手にしてるじゃないか。\\n それとも、何かもっと別のことなのか?」", "398000121_30": "「ああ。\\n 今回は――」", "398000121_31": "「ノイズの反応を2か所で検知ッ!\\n 場所は市街地と郊外にある工場ですッ!」", "398000121_32": "「了解ッ!\\n 市街地には俺が向かうッ!」", "398000121_33": "「君は、工場の方を頼めるか?」", "398000121_34": "「仕方ないわね」", "398000121_35": "「ちょッ、おいッ!\\n 結局、どんな依頼なんだよッ!?」", "398000121_36": "「サイキック少女の護衛だッ!」", "398000121_37": "「サイキック少女ッ!?」", "398000121_38": "「護衛条件は『女性であること』と\\n 『娘を化け物扱いしないこと』なんだッ!」", "398000121_39": "「ば、化け物扱いだぁ?」", "398000121_40": "「サイキック少女というからには、\\n 何かしらの超常の力を扱うのだろう。それ故に、おそらく――」", "398000121_41": "「司令ッ!\\n 急いでくださいッ!」", "398000121_42": "「わかっているッ!!」", "398000121_43": "「あ、おいッ!」", "398000121_44": "「すまないッ!\\n 一応検討しておいてくれッ!」", "398000121_45": "「検討ったって……」", "398000121_46": "(こんな少ない情報でできるかッ!", "398000121_47": " ……でも、おっさんたちの手はしばらく空きそうにないよな)", "398000121_48": "(今まで色々と世話になってるし……\\n あたしの世界のおっさんに聞くだけ聞いてみるか……)", "398000121_49": "「仕方ない。一応あたしの世界のおっさんに\\n 行けるかだけ確認してみるッ!」", "398000121_50": "「助かるッ! 護衛対象のいる場所はそこにある資料を\\n 確認してくれッ! 気になる点があればいつでも連絡をッ!」", "398000121_51": "「おうッ!」", "398000121_52": "「……さてと、場所の資料はこれだな。\\n なになに……町はずれの洋館か……」", "398000121_53": "「戻って、報告して――\\n ったく、やることが一気に増えたな」", "398000121_54": "クリスが消息を絶って13時間後――", "398000121_55": "「ここが山川博士に指定された洋館か。\\n 町の中でも、ここだけ雰囲気が違うな……」", "398000121_56": "「うん。\\n 独特な雰囲気を感じる……」", "398000121_57": "「でも、棒立ちしているわけにもいかない。\\n 入ってみよう」", "398000121_58": "「――ごめんください。特異災害対策機動部二課から\\n 派遣された者です。どなたかいらっしゃいませんか?」", "398000121_59": "――――", "398000121_60": "「……返事がないな」", "398000121_61": "「ん……\\n 鍵が開いているッ!?」", "398000121_62": "「何か問題が起こっているのかもしれない。\\n とりあえず中に入ろうッ!」", "398000121_63": "「……玄関には誰もいないみたいだな」", "398000121_64": "「奥の方にいるのかも。\\n 行ってみよう――」", "398000121_65": "「いきなりなんだッ!?」", "398000121_66": "「翼ッ!」", "398000121_67": "「大丈夫ッ!\\n それより気をつけてッ!」", "398000121_68": "「くッ!\\n 何か飛んできて……ッ!」", "398000121_69": "「果物ナイフ……ッ!?", "398000121_70": " なんでこんなものが……?」", "398000121_71": "「――ッ、今度はなんだッ!?」", "398000121_72": "「見てッ!\\n 周囲の家具が揺れている……ッ!」", "398000121_73": "「地震ってわけでもない……\\n どうなってるんだッ!?」", "398000121_74": "「――やめろってッ!」", "398000121_75": "「この声ッ!\\n ホールの方かッ!?」", "398000121_76": "「雪音……ッ!\\n 今行くぞッ!!」", "398000121_77": "「翼ッ!」", "398000121_78": "「雪音ッ!\\n どこだッ!?」", "398000121_79": "「……いないみたいだな」", "398000121_80": "「そんな……。\\n 声は確かに、こっちから聞こえたのに……」", "398000121_81": "「さっきのあたしたちみたいに、\\n 何かから攻撃を受けて逃げたのかもしれない」", "398000121_82": "「……そういえば、家具の揺れや攻撃が収まってる。\\n あれはいったいなんだったのかな……」", "398000121_83": "「あたしにもわからない……けど、\\n あいつがここにいることはわかった」", "398000121_84": "「他のことは、まだ考えるには材料が足りない、か。\\n 今は合流することを優先しようッ!」", "398000121_85": "「そうだね。\\n この異常事態の中、1人で行動するのは避けたい」", "398000121_86": "「また、さっきのようなことが起こるかもしれない。\\n わたしたちも分断されないよう、気をつけて進もう」" }