{ "394000111_0": "2人の『風鳴弦十郎』", "394000111_1": "「司令、お時間よろしいですか?\\n 先日の隕石事件についての報告がまとまりました」", "394000111_2": "「ああ、問題ない。\\n 聞かせてくれ」", "394000111_3": "「数週間前に日本近海へ落下した隕石ですが、\\n 最終的に大きな被害はありませんでした」", "394000111_4": "「負傷者は避難時の混乱によるものがほとんどです。\\n そちらも既に収束し、国内の情勢は平常に戻りつつあります」", "394000111_5": "「人的被害がなかったことが幸いしたな。\\n これで片がつきそうだ」", "394000111_6": "「一時、都市部に衝突する危険も囁かれましたが、\\n 海へ落下したため物的損害も出ませんでしたからね」", "394000111_7": "「回収された隕石は研究機関にて調査中ですが、\\n 特殊な反応は観測されていないようです」", "394000111_8": "「総じて今回の隕石事件は特異災害ではなく、\\n 純粋な天文現象だと判断しています」", "394000111_9": "「特異災害でないのなら、\\n S.O.N.G.に出番がなかったのも当然か」", "394000111_10": "「ボクにも協力できることがあれば良かったんですが、\\n まだ宇宙科学には詳しくなくて……」", "394000111_11": "「君の専門は錬金術を始めとした異端技術だろう。\\n 何もかも1人で背負う必要はないさ」", "394000111_12": "「餅は餅屋だ。\\n 今回は彼らに任せるとしよう」", "394000111_13": "「はい。\\n ボクにできることで力になります」", "394000111_14": "「ギャラルホルンにも大きな反応はありません。\\n さきほど奏さんが使用した際も問題なく稼働していました」", "394000111_15": "「装者のいない世界……\\n フィーネのいる世界へ向かったのだったな」", "394000111_16": "「ええ、何か調査したいことがあるとかで。\\n こちらも何事もなく済むといいですね」", "394000111_17": "「最近は特異災害に該当する事件も起きていませんし、\\n S.O.N.G.でサポートする余裕もあるんですが……」", "394000111_18": "「気にせず暇をつぶしていろ、だそうだからな。\\n 彼女が言うなら任せておくとしよう」", "394000111_19": "「対トラブル要因として存在する組織は、\\n 暇を持て余すくらいがちょうど良いのさ」", "394000111_20": "「――たッ!\\n たたた、大変ですッ!」", "394000111_21": "「おっと、トラブルかッ!?", "394000111_22": " どうした響くん、何があった?」", "394000111_23": "「それが、師匠が大怪我でッ! \\n 記憶喪失かもしれなくてッ!」", "394000111_24": "「俺が大怪我で記憶喪失だとッ!?\\n そいつは大事だなッ!」", "394000111_25": "「そうなんですッ!\\n きっと恐ろしい強敵が現れたに違いありませ……ん?」", "394000111_26": "「えええッ!?\\n こっちにも師匠ッ!?」", "394000111_27": "「ああ、俺だ。\\n 幸いにも無傷の、な」", "394000111_28": "「でもさっき大怪我をしててッ!\\n わたしのことも、よくわからないみたいでッ!」", "394000111_29": "「響ちゃん、\\n まずはあったかいものどうぞ」", "394000111_30": "「あ……あったかいものどうも」", "394000111_31": "「どうも厄介事のようだな。\\n 詳しい話を聞かせてくれるか?」", "394000111_32": "「はい。今は任務がないって聞いたので、\\n 学園の近くにある公園で身体を動かしてたんですけど――」", "394000111_33": "「任務がないと身体が鈍っちゃうし、\\n こういう時こそ、訓練訓練ッ!」", "394000111_34": "「ぐッ……」", "394000111_35": "「――今の声は? ", "394000111_36": " 誰かいるんですか?」", "394000111_37": "「――ッ!? し、師匠ッ!?\\n どうしたんですか、その怪我ッ!」", "394000111_38": "「ぐッ……君は……?\\n その声は……もしや、響くんか?」", "394000111_39": "「まさか、目が見えてないんですかッ!?", "394000111_40": " 何があったんですかッ!?」", "394000111_41": "「細かいことを話している暇はない……」", "394000111_42": "「この世界の二課の……、\\n いや、S.O.N.G.の場所を教えてくれ」", "394000111_43": "「世界の、危機だ……ッ!」", "394000111_44": "「……ッ! \\n わかりましたッ!!」", "394000111_45": "「それで、師匠をここまで連れてきて、\\n 今はとりあえず救護室に……」", "394000111_46": "「そしてこの場所で、\\n 再び俺に遭遇したわけか」", "394000111_47": "「はい……。\\n あの、師匠は本物の師匠、ですよね?」", "394000111_48": "「俺はそのつもりだ。\\n どうだ、偽物に見えるか?」", "394000111_49": "「いえ、ここにいる師匠は本物だと思います。", "394000111_50": " でも、わたしが会った師匠も本人だとしか思えなくて……」", "394000111_51": "「この様子だと、響ちゃんの勘違い、\\n という可能性は低いですね」", "394000111_52": "「何者かが司令を装って本部へ侵入した……?」", "394000111_53": "「物理的な変装はもちろん、\\n 異端技術を用いた外見の変化、幻覚を見せた可能性もあります」", "394000111_54": "「どちらにせよ油断ならん状況だな。\\n 救護室へ連絡を頼む。俺の様子を確認したい」", "394000111_55": "「はい。司令には気づかれないよう、\\n こちらへ報告するように――」", "394000111_56": "「ここが、S.O.N.G.か?」", "394000111_57": "「な……ッ!\\n 本当にもう1人の俺、だとぉッ!?」" }