{ "392000421_0": "「マリアさんッ!\\n これを見てくださいッ!」", "392000421_1": "「そこのデスクに置いてあったんですが……\\n たぶん、ここの研究論文だと思うんです」", "392000421_2": "「研究論文……?」", "392000421_3": "「『昆虫食による食糧難回避の可能性』……", "392000421_4": " これって……ッ!」", "392000421_5": "「はい。ここは昆虫を巨大化させて、\\n 軍事的な目的に使うわけではなく……」", "392000421_6": "「食糧にする方法を研究していたんじゃないかと」", "392000421_7": "「うえぇ、虫を食べるデスか?\\n それはちょっと、かなり勇気がいるデスが……」", "392000421_8": "「それは、わたしも同じです……。", "392000421_9": " でも、昆虫食はわたしたちの世界でも研究されていることですし」", "392000421_10": "「栄養価が高く、完全食になり得るって。\\n 見た目のイメージで嫌がる人も多いですけど」", "392000421_11": "「あー……言われてみれば聞いたことある気がするデスよ。\\n たしか、調がフンパツして佃煮を買ってきてくれたときデス」", "392000421_12": "「ハチの子とか、あとほら……\\n バッタみたいな、大量に飛んでくるヤツ……」", "392000421_13": "「イナゴ……?」", "392000421_14": "「そう、それデスッ!\\n それをこう、甘辛く煮つけて……エビみたいなパリパリさだとか」", "392000421_15": "「それだけ聞くと、\\n なんだか普通に食べられちゃいそうな気がしますね……」", "392000421_16": "「……一通り目は通せたわ」", "392000421_17": "「どうやらこの世界では、\\n 食糧危機がかなり深刻だったようね」", "392000421_18": "「それを救うために、国家的プロジェクトとして\\n この研究所が建てられたって書いてある」", "392000421_19": "「虫の軍隊を作るとか、\\n そういう物騒な研究所じゃなかったデスか」", "392000421_20": "「けど、そんな研究なら\\n なんで誰もいなくなってしまったデスか?」", "392000421_21": "「途中で放棄されてしまった研究……\\n ということなんでしょうか?」", "392000421_22": "「あるいは、\\n 研究中になんらかの事故が起こった、とか……?」", "392000421_23": "「ここがすでに廃墟になってしまっている以上、\\n 考えても仕方のないことだけど……」", "392000421_24": "「もしも人々を救うために頑張っていた研究が、\\n 結果的に自分たちを滅ぼしたんだとしたら……」", "392000421_25": "「それはやっぱり、不幸なことよ」", "392000421_26": "「そうですね……」", "392000421_27": "「――ッ!?\\n な、なんデスかッ!?」", "392000421_28": "「この、地響きのような揺れは……ッ!」", "392000421_29": "「――なッ!?\\n か、壁を突き破って……ッ!?」", "392000421_30": "「またぞろ戦車部隊のお着きデスかッ!?」", "392000421_31": "「くッ、何度だってひっくり返してやるデスよッ!\\n 覚悟するデスッ!」" }