{
"391000911_0": "斯くて、黄昏は謳われず",
"391000911_1": "「――いたッ!\\n ギンッ!!」",
"391000911_2": "「待ってたよッ!\\n お姉ちゃんたち……」",
"391000911_3": "「ギン……\\n もうやめよう、こんなこと」",
"391000911_4": "「わたしたちが戦ったって、\\n なんの意味もないよ」",
"391000911_5": "「ううん、あるんだよ。\\n ヒビキお姉ちゃんの世界では意味が無くてもね」",
"391000911_6": "「マリアお姉ちゃんの世界では意味が無くても、\\n ミクお姉ちゃんの世界では意味が無くても――」",
"391000911_7": "「ぼくの世界では、意味があるんだ」",
"391000911_8": "「……ギン。\\n あなた、いったい何者なの?」",
"391000911_9": "「…………」",
"391000911_10": "「――何も無い世界だったんだ」",
"391000911_11": "「途方もなく、何も……\\n それこそ、『無』すらないような、そんな世界」",
"391000911_12": "「その世界で、ぼくは独り……、\\n ううん、孤独という感覚すらなく、ただ『在った』」",
"391000911_13": "「そのことに対して何かを感じることだって、なかった。\\n 寂しいとも、辛いとも、感じなかった……」",
"391000911_14": "「幾億年……\\n どれほどの時をそうして過ごしたのかもわからないくらいに」",
"391000911_15": "「ぼくは、ただの空虚だったんだ」",
"391000911_16": "「それを変えてくれたのは、\\n ヒビキお姉ちゃんだったんだよ」",
"391000911_17": "「……え?」",
"391000911_18": "「嬉しかった……。\\n 本当に、嬉しかったんだ」",
"391000911_19": "「どうして、\\n ヒビキお姉ちゃんがぼくを見つけてくれたのかはわからない」",
"391000911_20": "「けど……きっと、\\n 本を見つけてくれたんじゃないかな?」",
"391000911_21": "「それは、ぼくが『敵対者』である物語そのもの」",
"391000911_22": "「――ッ!」",
"391000911_23": "「物語が『主人公』足りうると認めるお姉ちゃんたちが、\\n ぼくを見つけてくれた。探してくれた――」",
"391000911_24": "「――そのとき、この物語の幕は上がったんだよ」",
"391000911_25": "(なんて、静かな目を……)",
"391000911_26": "(わたしの目の前にいるのは、\\n 本当にあの無邪気だったギンなの……?)",
"391000911_27": "「違うよ、マリアお姉ちゃん。\\n ぼくは『ギン』じゃない」",
"391000911_28": "「ッ!?」",
"391000911_29": "「そんな……ッ!",
"391000911_30": " そんな悲しいことを言わないでッ!」",
"391000911_31": "「悲しくなんてないよ、ミクお姉ちゃん。\\n ぼくは、そのためにこの世界に創られたのだもの」",
"391000911_32": "「ぼくは、自分がなんなのかようやくわかったんだ。\\n お姉ちゃんたちが、考えることを教えてくれたから」",
"391000911_33": "「そうしたら、世界が読めるようになったんだ。\\n ぼくがどう動くべきなのか、手にとるように理解できた――」",
"391000911_34": "「誰が為か、遙けき昔に生み出された、\\n 全ての『物語』の根幹――」",
"391000911_35": "「ぼくこそが、\\n 『神話』によって創られた『敵対者』だッ!」",
"391000911_36": "「だからね。\\n ぼくは、この世界に与えられた力を振るうッ!」",
"391000911_37": "「この力こそが、\\n ぼくの在りかた、そのものなんだから――ッ!」",
"391000911_38": "「あああああぁぁぁぁあああぁぁぁぁ――ッ!!」",
"391000911_39": "「ギンッ!\\n 駄目だ、それ以上は……ッ!」",
"391000911_40": "「崖から落ちたッ!?",
"391000911_41": " いけない、すぐ助けに――」",
"391000911_42": "「待ってッ!\\n 何か来るわッ!!」",
"391000911_43": "「ぼくは――、\\n 君たちの『敵対者』――」",
"391000911_44": "「世界より与えられし在りかたは――、\\n 『ギンヌンガガプ』――」",
"391000911_45": "「ギンの声……ッ!\\n そんな、これがギンだっていうの……ッ!?」",
"391000911_46": "「『敵対者』は……、\\n 倒されてこそ、物語が終わりを迎える」",
"391000911_47": "「『主人公』は……、\\n 『敵対者』を倒してこそ、帰るべき場所へと帰れるんだ」",
"391000911_48": "「……ッ!?」",
"391000911_49": "「言ったよね、お姉ちゃん。\\n 帰りたいって」",
"391000911_50": "「それなら、ぼくは……\\n 空虚に『ぼく』を与えてくれたお姉ちゃんたちの、望みを叶える」",
"391000911_51": "「その役割を果たすことこそが、\\n ぼくの『望み』――」",
"391000911_52": "「だから――『主人公』たちよッ!」",
"391000911_53": "「『敵対者』を、\\n 倒しておくれ――ッ!!」"
}