{ "391000522_0": "――マリアとイシムの眷属が戦っている同時刻、", "391000522_1": "現実世界にて――", "391000522_2": "「――そうして、\\n マリアは、『イシムの眷属』を倒したのです……」", "391000522_3": "「……今、書かれているのは、\\n ここまでですね」", "391000522_4": "「ありがとうございます。", "391000522_5": " ……それにしても驚きました」", "391000522_6": "「うん。まさか、『書物』の中の登場人物として、\\n マリアさんと未来、もう1人のわたしが出てくるなんて……」", "391000522_7": "「今読んだのってひょっとして、\\n 3人が、実際に遭遇しているってこと……なのかな?」", "391000522_8": "「確証はありませんが。\\n その可能性は高いです……」", "391000522_9": "「しかし、『物語』の中で登場した敵が、\\n こちらの世界にも顕現するとはな……」", "391000522_10": "「ノイズ、レーベンガー、スサノオ……。\\n そして、イシムの眷属まで……」", "391000522_11": "「響さんが『読む』ことがトリガーになり、\\n この世界に顕現するのは事実のようですね……」", "391000522_12": "「あ、それと……響さんだけが、\\n 『書物』を読める理由がわかったかもしれません」", "391000522_13": "「えッ!?\\n 読めるわたし自身にわからないのにッ!?」", "391000522_14": "「まだ仮説の域を出ないのですが……", "391000522_15": " 『書物』の中にヒビキさんがいるためではないかと」", "391000522_16": "「……もしや……\\n 精神的リンクか?」", "391000522_17": "「はい。以前の戦いから、響さんとヒビキさんの間には、\\n 強い繋がりが存在していることが判明しています」", "391000522_18": "「その繋がりにより、『書物』の中のヒビキさんの体験を、\\n こちらの響さんも『自分のこと』として読むことができる……」", "391000522_19": "「そして、本来は1つの世界に1人だけの『立花響』さんが\\n 内と外にいることで、この聖遺物が異常を排除しようと……」", "391000522_20": "「こちらに顕現する『敵』は、\\n バグを排除する防衛機構……といったところか」", "391000522_21": "「はい。\\n 恐らく、そういった理由ではないかと」", "391000522_22": "「精神的リンクといえば……以前は酷く体調を崩していたが、\\n 今は大丈夫なのか?」", "391000522_23": "「はいッ!\\n へいき、へっちゃらですッ!」", "391000522_24": "「……それにしても、\\n 響さんが読んでくれた物語の世界は、とても不可解です」", "391000522_25": "「皆さんがこれまで戦ってきた敵たちが、\\n 無軌道に出現し、襲ってくる世界――」", "391000522_26": "「――さしずめ、\\n 『敵対者』の世界、といったところでしょうか」", "391000522_27": "「『敵対者』の世界か……。\\n でも、本から出て来たのは、どれも本物じゃなかったよ?」", "391000522_28": "「姿形はそのままだったけど、本当に手応えがないんだ。\\n まるで、空っぽの敵を相手にしているみたいだった」", "391000522_29": "「空っぽの敵……。\\n それは、言い得て妙かもしれません」", "391000522_30": "「……え?」", "391000522_31": "「『書物』内の反応は未来さん、マリアさん、そしてヒビキさん。\\n 取り込まれた3人分の生体反応は観測できています」", "391000522_32": "「時折、アウフヴァッヘン波形も観測されることから\\n ギアを纏い戦っているということもわかっています」", "391000522_33": "「ですが、3人が戦っているはずの相手――\\n 『敵対者』については、データ上、存在の確認ができないんです」", "391000522_34": "「……え?」", "391000522_35": "「そんなものは、最初から存在していないかのように、\\n 実像も実体も見つけられません」", "391000522_36": "「今、『書物』の中にいるのは、\\n ヒビキさんたち3人だけ、としか考えられないんです」", "391000522_37": "「……3人?」", "391000522_38": "「3人だけって――\\n だって、ここに描かれているのは……」" }