{ "391000221_0": "「――ノイズを倒しつつ、\\n どうにかここまで移動して来たわけだけれど……何か妙ね」", "391000221_1": "「……道中、\\n 誰にも会いませんでしたね」", "391000221_2": "「単に夜間だから、\\n というわけじゃないわよね?」", "391000221_3": "「人だけじゃない。動物や虫の姿も……。\\n 生き物の気配が、まるで感じられなかった」", "391000221_4": "「まさかとは思うけど、\\n この並行世界、生物が死滅した世界とかなんじゃ……」", "391000221_5": "「――くッ!?\\n よもや、まだノイズが残って……ッ!?」", "391000221_6": "「ニャー……」", "391000221_7": "「あ……ネコさん」", "391000221_8": "(……かわいい)", "391000221_9": "「あら、かわい……じゃなくて、良かった。", "391000221_10": " 少なくとも、生物が全くいないというわけではなさそうね」", "391000221_11": "(恐らくここは、わたしたちが認識していない新たな並行世界……\\n その予測のせいで、少しナーバスになっちゃってたのかも)", "391000221_12": "(年長者として、\\n わたしがしっかりしないと……)", "391000221_13": "「ミャッ!」", "391000221_14": "「あッ……」", "391000221_15": "「ネコさん、行っちゃった……」", "391000221_16": "「大丈夫。\\n きっとまた会えるよ」", "391000221_17": "「撫でてみたかったな……。\\n きっとふわふわで、あったかいんだろうな……」", "391000221_18": "「フフ。ネコ、好きなの?", "391000221_19": " ――あ、ええと……」", "391000221_20": "「ね。\\n あなたのこと、なんて呼べばいいかな?」", "391000221_21": "「え……\\n ぼくのこと?」", "391000221_22": "「うん。いつまでも、『キミ』とか『あなた』って\\n 呼び続けるのも寂しいでしょ?」", "391000221_23": "「……確かに。\\n 呼び名がないままだと、ちょっと不便かも」", "391000221_24": "「ね、呼び方を考えてもいいかな?\\n あなたが本当の名前を思い出すまで、少しの間だけ」", "391000221_25": "「あだ名みたいなものだと思ってくれたらいいかなって、\\n 思うんだけど……」", "391000221_26": "「うんッ!\\n 名前を考えてもらえるなんて……嬉しいな」", "391000221_27": "「ぼく、なんて名前になるの?」", "391000221_28": "「うーん、そうだなぁ……」", "391000221_29": "「ねぇ、ヒビキ。\\n どんな名前がいいかな?」", "391000221_30": "「ええッ!?\\n 未来が考えるんじゃないのッ!?」", "391000221_31": "「う、うーん……\\n そうだなぁ……」", "391000221_32": "「……」", "391000221_33": "「ギン……とか?」", "391000221_34": "「……ギン?」", "391000221_35": "「う、うん。\\n キミの髪、すごく綺麗な銀色だから」", "391000221_36": "「…………」", "391000221_37": "「プラチナシルバーっていうのかな?", "391000221_38": " ……って、もしかしてそのまんま過ぎる?」", "391000221_39": "「ギン……。\\n それが、ぼくの名前?」", "391000221_40": "「い、嫌だったら、\\n 他の名前も考えるから――」", "391000221_41": "「ううん、嬉しいッ!\\n ありがとう、えっと……ヒビキお姉ちゃんッ!」", "391000221_42": "「そ……そっか。\\n 良かった……」", "391000221_43": "「フフ。\\n ええ、似合いの名前だと思うわよ」", "391000221_44": "「それじゃあ、\\n 改めてよろしくね、ギンくん」", "391000221_45": "「うんッ!\\n マリアお姉ちゃんも、ミクお姉ちゃんも、よろしくねッ!」", "391000221_46": "「……ッ!?」", "391000221_47": "「2人ともッ!\\n 何か近付いてくるッ!」", "391000221_48": "「相も変わらず神出鬼没な……ッ!\\n お呼びじゃないというのにッ!」", "391000221_49": "「ギンくんッ!\\n 少しだけ離れていてッ!」", "391000221_50": "「う、うん……ッ!」", "391000221_51": "「わたしたちがいる限り、\\n ギンには決して触れさせないッ!」" }