{ "390000311_0": "カワイイ、JK(概念)", "390000311_1": "「…………。", "390000311_2": " 何故だ……ッ!」", "390000311_3": "「何が、どうしてこうなった……ッ!?」", "390000311_4": "「ワン、ツー、スリー、フォー」", "390000311_5": "「この程度の踊りならば余裕ですわ」", "390000311_6": "「地味にどうにかなるものだな」", "390000311_7": "「いい調子だ。\\n やっぱ、動きのセンスは抜群だな」", "390000311_8": "「こんなの楽勝だゾッ!\\n もっともっと動けるゾッ! ほらほらッ!」", "390000311_9": "「おお、うまいじゃないかッ!」", "390000311_10": "「でも、ミカはちょっと力みすぎだし、ファラは独走しすぎだ。\\n もう少し周りに合わせるのを意識したらもっと良くなるぞ」", "390000311_11": "「ふむ……」", "390000311_12": "「わかったゾッ! 頑張るゾッ!", "390000311_13": " ワン、ツー、スリー、フォーッ!」", "390000311_14": "「そうそう、その調子だッ!」", "390000311_15": "「アイドルッ!\\n 楽しいゾッ!」", "390000311_16": "「くそっ……ッ! 何故……何故だッ!\\n どうしてオレがこのような児戯を……ッ!」", "390000311_17": "「ほらマスター?\\n もっとノリノリで踊らなくちゃダメですよー」", "390000311_18": "「そうだゾッ! ほら、こうやってッ!\\n ワン、ツー、スリー、フォー……」", "390000311_19": "「あッ!」", "390000311_20": "「ぐふッ!?」", "390000311_21": "「マスターッ!?」", "390000311_22": "「あらあら、見事なスライディング土下座。\\n どこかのテニス少女のような倒れっぷりですねー」", "390000311_23": "「ご、ゴメンだゾ、マスターッ!", "390000311_24": " あたし、踊るのが楽しくて……」", "390000311_25": "「あぁッ、くそッ!\\n どうして……こんなことに……ッ!!」", "390000311_26": "「どうしてって、ねえ――」", "390000311_27": "「『不良品のエリクサー』もとい『ゾンビシャンパン』は、\\n 音楽番組のトリに派手にばらまかれる……」", "390000311_28": "「そんなことになったら任務失敗なんだゾ?", "390000311_29": " その前にとっとと『イル美ナティ』を捕まえて――」", "390000311_30": "「そして、この番組を取りやめにして\\n ゾンビシャンパンを回収する」", "390000311_31": "「ここの権限があれば、\\n ネット番組の中止くらいは可能だろう?」", "390000311_32": "「不可能ではないが……。\\n 今回の場合、主催がはっきりしていない以上、簡単ではない」", "390000311_33": "「……あと、これはあたしの個人的な感情だけど、\\n できれば番組は中止にしたくない」", "390000311_34": "「はぁ?\\n それは自分が出るからってこと?」", "390000311_35": "「いや……そうじゃないよ」", "390000311_36": "「この番組には、\\n 次世代のスターを目指すやつが大勢出てくる」", "390000311_37": "「唄いたいと思ってるやつらの、\\n 第一歩を邪魔したくないんだ」", "390000311_38": "「だから……もし未然に防げる可能性があるなら、\\n 大事にはしたくない」", "390000311_39": "「……それだけ言うのなら、\\n 何か作戦があるんだろうな?」", "390000311_40": "「……ああ。\\n 咄嗟に思い付いたことではあるが、そう的外れでもないはずだ」", "390000311_41": "「……ほう?\\n 話してみろ」", "390000311_42": "「ああ。\\n それは……」", "390000311_43": "「キャロルたちが、『イル美ナティ』のメンバーとして、\\n この番組に参加することだッ!」", "390000311_44": "「…………」", "390000311_45": "「…………」", "390000311_46": "「ひゅう♪\\n 思い切るわねえ」", "390000311_47": "「………………は?」", "390000311_48": "「イル美ナティは解散して、\\n リーダーしか残っていないって話はしただろ?」", "390000311_49": "「だけど、番組には\\n 解散前のグループとして呼ばれてたんだ」", "390000311_50": "「つまり……\\n 番組に出るには人数が足りていないと?」", "390000311_51": "「ああ。イル美ナティは勢いもあったし、\\n この番組をメジャーへのチャンスだと思ってたはず」", "390000311_52": "「現にここにグループ名がある。メンバーが足りてないはずなのに\\n 出演を断ってないのは、出たいと思ってるからじゃないのか?」", "390000311_53": "「それに、都合のいいことに……イル美ナティのメンバーは、\\n リーダー以外、顔出しせずに活動していた」", "390000311_54": "「まさか、その枠に私たちが入ると?」", "390000311_55": "「いや、だとしても、\\n イル美ナティにはどうやって接触するのよ?」", "390000311_56": "「……なあ、ダンナ。あたしが天羽奏一個人として\\n 気になるアーティストに連絡をとる、ってのは……」", "390000311_57": "「昨今のプライバシー云々の話にひっかかってくるかい?」", "390000311_58": "「フ……。\\n 組織における一個人の自由を護るのも大人の仕事だ」", "390000311_59": "「その答えで十分だ」", "390000311_60": "「ってことでな……まだ普通にMeTubeで活動してるんだよ、\\n イル美ナティのリーダーは」", "390000311_61": "「SNSのDMも常時フルオープンだし、\\n 歌と踊りで売り込むんだ、キャロルたち自身がッ!」", "390000311_62": "「ま……まったくもって笑えない冗談だッ!」", "390000311_63": "「でも、そうして番組内に潜り込めれば、あたしたちなら\\n 目的のものをすり替えることだってできるはずだ」", "390000311_64": "「番組は進行できるし、ゾンビシャンパンは回収できる。\\n 誰も悲しい思いをしない。だろ?」", "390000311_65": "「んー。考えようによっちゃ、誰かが悲しむことも\\n 不良品による被害になるんですかねぇ?」", "390000311_66": "「な……ッ」", "390000311_67": "「それなら、『被害を出さない』のが\\n 今回の任務なんだゾッ!」", "390000311_68": "「……マスター。", "390000311_69": " よもや、マスターが仰っていた局長の『何かある』というのは」", "390000311_70": "「存外、このような状況を\\n 予期していたということは……?」", "390000311_71": "「そんなバカな話があってたまるかッ」", "390000311_72": "「しかし……そうですね、踊り、ですか。\\n 自信はありますが……」", "390000311_73": "「あたしはそんなのやったことないゾー?」", "390000311_74": "「この作戦でいくって言うなら、\\n もちろんあたしがレッスンをつけるよ」", "390000311_75": "「その準備期間に……弦十郎のダンナと了子さんには、\\n ゾンビ化の治療法を探してもらいたいんだ」", "390000311_76": "「なるほど。これ以上被害を広げないためのゾンビシャンパンの\\n 回収と、既に出てしまっている影響への対処の同時進行……」", "390000311_77": "「思ったよりもトンデモじゃない作戦なのかもしれないわ」", "390000311_78": "「ば……\\n バカな……ッ」", "390000311_79": "「ああ、そうだな……そんなやりとりはあった……", "390000311_80": " だが…………」", "390000311_81": "「やっていられるかぁッ!!\\n 何故オレがこんなことをせねばならんッ!」", "390000311_82": "「どこ行くんダ、マスター?\\n レッスンはまだ終わってない――」", "390000311_83": "「――警報ッ!?」", "390000311_84": "「これは……さてはゾンビかッ!? ゾンビなんだなッ!?\\n オレが行こうッ!」", "390000311_85": "「ちょ、あたしも……ッ!」", "390000311_86": "「いや……私とガリィでマスターを追おう」", "390000311_87": "「ゾンビどもの無力化なら、\\n あたしたちだけでも十分ですしね」", "390000311_88": "「それに、そこのポンコツにはまだレッスンが必要みたいだし。", "390000311_89": " あたしたちがいってる間に鍛えてやってちょうだいな」", "390000311_90": "「さあ、どこにいるゾンビどもッ!\\n このオレが相手をしてやろうッ!!」", "390000311_91": "「ああ、いたいた。\\n マスター、独断専行が過ぎますよぅ?」", "390000311_92": "「天羽奏によるアイドルレッスン……\\n あれを会得したマスターは派手に美しいと思うのですが」", "390000311_93": "「いらんッ!!」", "390000311_94": "「あら?\\n あらあらあらあら?」", "390000311_95": "「これは……」", "390000311_96": "「ゾンビではなく――\\n アルカ・ノイズッ!?」", "390000311_97": "「…………ふむ。", "390000311_98": " 様子を見るとしようか、もう少しだけね」" }