{ "389000921_0": "「見てくださいッ!\\n 景色が、元に戻って……ッ!」", "389000921_1": "「あ……ッ!?\\n なんだか急に、重苦しい力が薄れていくデス……」", "389000921_2": "「ああ。恐らくは説明を受けていた通り、\\n 『契約者』の死により聖遺物の力も……」", "389000921_3": "「契約者……ゲオルク、の……」", "389000921_4": "「……」", "389000921_5": "「……そう思い詰めるな。\\n わたしとて、思うところがないわけではないが――」", "389000921_6": "「それでも、奴は最期に、\\n 本心から微笑んでいたように思えた」", "389000921_7": "「狂気や『メフィストフェレスの薬』に誑かされたそれではなく。\\n 1人の、不全の人として……」", "389000921_8": "「思えば、『ファウスト』の物語の終わりにも――」", "389000921_9": "「おーい、皆さーんッ!」", "389000921_10": "「外の様子が変わったと思いきや、\\n 爆発で破損していた箇所が直っていったんですッ!", "389000921_11": "「これはもう、貴方がたがきっと、何か成してくれたに\\n 違いないとッ! 僕ら、居ても立ってもいられなくてですねッ!」", "389000921_12": "「あ……乗組員の皆さんッ!", "389000921_13": " 良かった、みんな無事だったんですね」", "389000921_14": "「いやぁ、ヒドい目に遭いました。\\n 変な連中には襲われるし……美術品はどれもこれもパアッ!」", "389000921_15": "「……と、思って、明日からの職の心配すらしてたんですけどね。\\n いったい、何があったんです? 全て元通りですよッ!」", "389000921_16": "「それって、もしかして、\\n もしかするデス……」", "389000921_17": "「無事で何よりだ。きっと、ニケと――\\n 彼女を愛した男が、最期に、託してくれたのだろう」", "389000921_18": "「不全の戦女神を美しいと思うこと、\\n その可能性のツバサを……」", "389000921_19": "「へ……?」", "389000921_20": "「おわぁッ!? どうしてこんな甲板にニケがッ!?\\n ああ、それでも無事で良かった……ッ」", "389000921_21": "「ニケさんは……もう光ってないデスね」", "389000921_22": "「お疲れさま。", "389000921_23": " そして、ありがとう……」", "389000921_24": "「不全の誇り……\\n 片翼の戦女神、か……」", "389000921_25": "「あの、翼さん。さっきの話……\\n 『ファウスト』の結末は、どうなったんですか?」", "389000921_26": "「ああ。主人公の『ファウスト博士』は、\\n 悪魔メフィストとの契約により1度は魂を奪われるが……」", "389000921_27": "「失った最愛の人の祈りによって、\\n その魂は地獄に墜ちることなく救われたのだ」", "389000921_28": "「最愛の人の、祈りで……」", "389000921_29": "「救われてるといいデスね。\\n あの人の魂も、ニケさんの祈りで……」", "389000921_30": "「ああ、そうだな……」", "389000921_31": "「さあ、帰ろうッ!\\n 友たちが待つ、愛すべき不全の世界へ……ッ!」" }