{ "389000311_0": "一翼を分かつ", "389000311_1": "「……切ちゃん、そっちは」", "389000311_2": "「現状問題ナッシング、デス」", "389000311_3": "「ダクトに通路、\\n 侵入可能な経路は頭に入ってるけど……」", "389000311_4": "「『我が目、我が身で確かめておかねば』……\\n といったところデスねッ!」", "389000311_5": "「フフ……翼さんの真似?\\n あとでよく似てたよ、って報告しなきゃ」", "389000311_6": "「し、調~ッ!\\n それは勘弁なのデス……」", "389000311_7": "「アタシは翼さんの良いところを真似っこすることで、\\n 翼さんから任務遂行の技を学ぼうとデスね……ッ!」", "389000311_8": "「うん。気持ちはわかるよ。いつだって、\\n S.O.N.G.のみんなから学ぶことはとても多いから……」", "389000311_9": "「あとね。思ったんだけど、船内を確認するのなら、\\n もしかすると別々で行動してたほうが効率良かったのかも……」", "389000311_10": "「デデッ!? た、たしかに、", "389000311_11": " 当たり前のように2人で行動してしまってたデスね……」", "389000311_12": "「うん。それこそ当たり前のように1人でがんばる翼さんを\\n 見習って強くならないとね、わたしたち」", "389000311_13": "「その通りデスよ、調ッ! 誰かを頼りにするんじゃなくて、\\n 頼られるくらいモリモリに強くなるデスッ!」", "389000311_14": "「うん。\\n でもそれは1人でがんばりすぎることじゃなくて……」", "389000311_15": "「2人でがんばれるとき、シャカリキがんばったり……\\n 1人のときは、お互いを信じてできることをすることデスッ!」", "389000311_16": "「うんッ!」", "389000311_17": "「実際、まだお尻に殻のついていたひよっこのときに比べれば、\\n アタシたちもそこそこやるようになってるデスよッ!」", "389000311_18": "「フフ、油断と慢心は禁物だよ、切ちゃん。", "389000311_19": " ただ、その……ちょっとだけ、ね」", "389000311_20": "「どうしたデス?」", "389000311_21": "「強く、強くなっていった先、\\n 本当に安心できるのかなって考えちゃったんだ」", "389000311_22": "「……もしかして、そう思ったのは、\\n あの『サーモンシャケ』を見たからデスか?」", "389000311_23": "「『サモトラケのニケ』、だよ。", "389000311_24": " でも、切ちゃんもそう言うってことは……」", "389000311_25": "「デス……」", "389000311_26": "「……そっか。やっぱりちょっと思ったよね。\\n 戦いの女神の失われた頭と、復元された片翼……」", "389000311_27": "「それが長い年月の間に砕けてただけなのか、\\n 誰かの力によって砕かれたのかは、わからないけれど……」", "389000311_28": "「……」", "389000311_29": "「…………。\\n 砕かれていても、ニケはきれいだった」", "389000311_30": "「でも、もし完全な姿だったなら、\\n もっときれいな姿だったかもしれなくて」", "389000311_31": "「だからね、もしニケを砕いたのが強すぎる『力』なら、\\n その力は、敵を砕くだけじゃなくて……」", "389000311_32": "「護りたかったものや、ただきれいなだけのものにまで\\n 及んでしまうかもしれない。壊してしまうかもしれない……って」", "389000311_33": "「……だ、」", "389000311_34": "「大丈夫デスよッ、調ッ!\\n どんなときだってアタシがいるデスッ!」", "389000311_35": "「切ちゃん……?」", "389000311_36": "「それは支えるだけじゃなくって、\\n たとえば……そう、これはたとえば、デスが」", "389000311_37": "「調が暴走しちゃうようなことがあれば、\\n アタシが止められるってことデス。何度だってッ!」", "389000311_38": "「そいでもって、それは逆も然りデス。\\n 調はアタシが暴走してたら止めてくれるデスよね?」", "389000311_39": "「も、もちろんッ!」", "389000311_40": "「だったら、アタシたちの力は\\n 『壊す力』になんかならないのデスッ!」", "389000311_41": "「……ッ!」", "389000311_42": "「もちろん、今みたいに調に元気がないときはアタシが。\\n アタシに元気がないときは調が支えていくデスよ」", "389000311_43": "「あのシャケを見て、アタシも思ったことがあるデス。\\n 対のツバサがあれば、どこまでも飛べるのかもって」", "389000311_44": "「対のツバサ、それは……」", "389000311_45": "「そのつまり、えっと……", "389000311_46": " アタシたちも2人で1つの両翼、なのデスッ!」", "389000311_47": "「つ、翼さんたちみたいな両翼とは、またちょっと違ってッ!\\n アタシたちは、1つのツバサを2人で分けっこしてるデスよ……」", "389000311_48": "「だから……1人で飛べないわけじゃないデス。\\n でも、2人ならもっともっと飛べると思うんデス」", "389000311_49": "「一緒に強くなるデスよッ!\\n 楽しいときも、辛いときもずっとずっと一緒に戦ってくデス」", "389000311_50": "「あとお腹が空いたときも病めるときも健やかなるときも……", "389000311_51": " ううッ! 自分で何言ってるかわからなくなってきたデスよッ!」", "389000311_52": "「フフ……。\\n それじゃあ、教会とかで聞く『契約』になっちゃうよ」", "389000311_53": "「だけど……うん。\\n わたしも、切ちゃんと分けっこして、一緒に飛びたい」", "389000311_54": "「……ッ!」", "389000311_55": "「これは――\\n 警報ッ!?」", "389000311_56": "「聞こえるか、月読ッ! 暁ッ!\\n 甲板にアルカ・ノイズが現れたッ! 迎撃に入るッ!」", "389000311_57": "「わ、わかりましたッ!\\n わたしたちも向かいますッ!」", "389000311_58": "「この船に乗せられた全て、護ってみせるッ!」", "389000311_59": "「翼さんッ!」", "389000311_60": "「押っ取り刀で駆け付けたデスッ!」", "389000311_61": "「2人ともッ!\\n 数が多い、手を貸してくれッ!」", "389000311_62": "「はい(デス)ッ!!」", "389000311_63": "「行こう、切ちゃんッ!\\n わたしたちの力で……ッ!」", "389000311_64": "「目にモノ見せてやるデスッ!」" }