{ "379000131_0": "「う……うぅ……あいたたた……」", "379000131_1": "「……ここは……ッ!?\\n それに、おサルさんたちは……ッ!」", "379000131_2": "「いない……。お三方には悪いことをしてしまいました。\\n 無事だと良いのですが――」", "379000131_3": "「デデデースッ!\\n こんなところに人間デスッ!」", "379000131_4": "「めずらしい」", "379000131_5": "「何をしているのかしら?」", "379000131_6": "「は、初めましてッ!\\n ボクは、鬼の住処を探していまして……」", "379000131_7": "「デデッ!?\\n それは大変デスね」", "379000131_8": "「鬼の住処、聞いたことある」", "379000131_9": "「そうね。\\n たしか、チフォージュ・ヶ島と言ったかしら」", "379000131_10": "「くんくん、おいしそうな匂いがする」", "379000131_11": "「この辺りは食べ物が少なくて、\\n お腹がへりんこファイヤーなのデスよー」", "379000131_12": "「食べ物……。さっきまで持っていたのですが、\\n 全部、無くなってしまって……」", "379000131_13": "「ガーンデースッ!!」", "379000131_14": "「持っていないのなら、しょうがないわよ……」", "379000131_15": "「ならば、自力で探すしかないデスッ!\\n 行くデスよおおッ!」", "379000131_16": "「うん。頑張ろう」", "379000131_17": "「待ちなさいッ!\\n もう、しょうがないわねッ!」", "379000131_18": "「ごめんなさいね、あの子たち食べ盛りで。\\n それじゃあ、わたしも失礼するわね」", "379000131_19": "「…………」", "379000131_20": "「やはり独りは、少々心細いですね……。\\n ……錬金術で、仲間を増やせたりすればいいのですが」", "379000131_21": "「たとえば……錬金術で人形を作って、\\n そこにボクの精神の一部をコピーしたりして……」", "379000131_22": "「……あれ?\\n 案外悪くない方法かもしれません……ッ!」", "379000131_23": "「わぁ……ッ!\\n 試してみたら、出来ちゃいましたッ! ボクの分身ッ!」", "379000131_24": "「皆さん、起きてくださーいッ!」", "379000131_25": "「おはようございます、マスター。\\n わたしはマジメナイン」", "379000131_26": "「なぜわたしがこの世に生を受けたのか。まずはそれを\\n 考えなくてはいけません」", "379000131_27": "「あ……あの……ボクはビ……ビビリナインです……。\\n ボ、ボクみたいなのが……仲間でいいんでしょうか?」", "379000131_28": "「もちろんですッ!\\n だってみんな、ボクの分身ですからッ!」", "379000131_29": "「あうぅ……よ……よかったですぅ…」", "379000131_30": "「チッ、無駄にビビりやがって……ま、\\n こんなポンコツマスターから生まれたんじゃしょうがないか」", "379000131_31": "「キミは……」", "379000131_32": "「……オコナイン。チッ、気安く話しかけるな」", "379000131_33": "(……驚きました。\\n ボクの中にこんな一面があるなんて……)", "379000131_34": "「そんでもって最後はボクダヨー。ボクナインダヨー。\\n 最後の1体だけに、サイコーの1体……フフ」", "379000131_35": "「ア、アハハ……み、皆さんよろしくお願いしますッ!」", "379000131_36": "「……それで、ポンコツマスター……\\n 結局オレたちにどうしてほしいんだ?」", "379000131_37": "「ボク、これから鬼のいるチフォージュ・ヶ島へ向かうんです。\\n それを手伝ってほしくて……」", "379000131_38": "「ほほう、鬼退治ですか。それは大仕事ですね」", "379000131_39": "「――ところでその鬼退治、\\n もしや決闘罪に該当しませんか?」", "379000131_40": "「……え?」", "379000131_41": "「法律は絶対、コンプライアンス意識の欠如は秩序の乱れ。\\n そのような不法行為に手を貸すのはいささかためらわれます」", "379000131_42": "「ふぇぇッ! それって犯罪ってことッ!?\\n 怖い……鬼退治怖いです……無理ですぅ……ッ!」", "379000131_43": "「あ、いや……でも、鬼をなんとかしないと、\\n みんなが困ったことになっちゃいますし……」", "379000131_44": "「鬼退治で鬼、退陣……」", "379000131_45": "(ど、どうしましょう……ボクの精神から作られたはずなのに、\\n 全然ボクの言うことを聞いてくれません……ッ!)", "379000131_46": "(……で、ですが。ボクなら、\\n 好きなものだって、みんな同じなはず。だったら――)", "379000131_47": "「――流しそうめんですッ!」", "379000131_48": "「――ッ!!」", "379000131_49": "「皆さんも、お好きですよね? 村にいた頃、\\n おじいさんと了子さんが作ってくれました」", "379000131_50": "「鬼退治が終わったらたらふく、\\n 流しそうめんを食べましょうッ!」", "379000131_51": "「流しそうめん……なぜ流すのか。なぜそうめんなのか。\\n ああ、なんと魅力的な謎です……ッ!」", "379000131_52": "「な、流しそうめんのためなら、頑張れる気がします……ッ!\\n 死ぬほど……怖いけど……けどッ!」", "379000131_53": "「流しそうめん、うめーん、たくさん食べるー」", "379000131_54": "「やれやれ……しょうがないな。\\n エサで釣らないとまとめられないのかよ」", "379000131_55": "「そ、それは……」", "379000131_56": "「先が思いやられる。\\n 仕方ない。こいつらのことはオレがまとめてやるよ」", "379000131_57": "「……ッ! あ、ありがとうございますッ!\\n オコナインは頼りになりますね」", "379000131_58": "「……べ、別にお前のためじゃない。\\n オレが流しそうめんを食いたいだけだ」", "379000131_59": "「――そういうわけだから、\\n お前たち、とっとと鬼退治に行くぞッ!」", "379000131_60": "「おー」", "379000131_61": "「では、いざ鬼のいるチフォージュ・ヶ島へッ!」", "379000131_62": "数日後――", "379000131_63": "「ようやく着いたか……長かったぜ」", "379000131_64": "「え……うそ……あれが、チフォージュ・ヶ島……?」", "379000131_65": "「見事に浮いていますね……。太陽の位置と仰角から計算して、\\n 実に上空100メートルですッ!」", "379000131_66": "「ふえぇ……あんなところ、行けるわけないですよぉ。\\n 絶対無理ですぅ……ッ!」", "379000131_67": "「ウキウキダヨー」", "379000131_68": "「そんな……せっかくここまできたのに……」", "379000131_69": "「クソッ!\\n いったい、どうすれば――」", "379000131_70": "「……ん?\\n あれは……」", "379000131_71": "「さあさあさあッ!」", "379000131_72": "「…………」", "379000131_73": "「今こそ、この僕をイジめたまえッ!\\n さあ早く、踏んだり殴ったりするのですよッ!」", "379000131_74": "「うわぁ……」", "379000131_75": "「そ、そういうシュミデス……?」", "379000131_76": "「趣味ではありませんよ。言わば使命……ッ!\\n ここで僕がイジめられれば、それを救う者が現れ――」", "379000131_77": "「僕にはその者を竜宮城『フロンティア』に運ぶ役割が\\n 生まれるッ! 即ち、英雄を助ける英雄の誕生ッ!」", "379000131_78": "「調、切歌、目を合わせちゃダメよ……ッ!」", "379000131_79": "「分かった」\\n「分かったデス」", "379000131_80": "「なるほど、無視という暴力を振るおうというわけですかッ!\\n フ、フフフ、それが僕の使命なら、甘んじて受けましょうッ!」", "379000131_81": "「ど、どうしましょう。\\n カメさんが、困って(?)いるような……」", "379000131_82": "「放っておいた方がいい……あれは別の物語だ。\\n 手を出せば、こっちが本筋から脱線しちまう」", "379000131_83": "「オレたちの目的は、\\n 竜宮城じゃなくて鬼の住処だろッ!」", "379000131_84": "「そ、そうですが……」", "379000131_85": "「……ッ! そんなことよりマスターッ!\\n こちらに向かって突っ込んでくる影がッ!」", "379000131_86": "「ええッ!?」", "379000131_87": "「グルルルルル……」", "379000131_88": "「皆さんッ!?", "379000131_89": " よかった、無事で――」", "379000131_90": "「ガアアア……ッ!!」", "379000131_91": "「え……ま、まさか、この流れって――」", "379000131_92": "「ウガアアアアアッ!!」", "379000131_93": "「うわああああぁぁぁッ!!\\n ま、またですかーッ!?」", "379000131_94": "「な、なんとッ!?」", "379000131_95": "「ふええ……ッ!」", "379000131_96": "「ダヨー」", "379000131_97": "「何しやがるんだあああッ!?」", "379000131_98": "「フゥゥ……あ、あれ?」", "379000131_99": "「わ、わたしたち……何してたんだっけ?」", "379000131_100": "「たしか、鬼退治に行くはずだったよな」", "379000131_101": "「はぐれてしまったみたいだワンが、\\n 団子をくれたあの子は無事だろうか……」" }