{ "372000322_0": "「はぁー、疲れた……\\n なぁ翼、肩揉んでくれないか?」", "372000322_1": "「肩くらいは揉んであげるけど……\\n まぁでも、確かに今日のノイズは一段と手強かったね」", "372000322_2": "「なんの、翼がいたから倒せたんだって……\\n あー……そこそこ、効くねー……」", "372000322_3": "「――この程度で疲労困憊とは、\\n ガキはいくら鍛えてもガキのままだね」", "372000322_4": "「あんたも相変わらず口が減らないな」", "372000322_5": "「適合係数が低いくせに、出しゃばった戦い方をする\\n バカがいるせいで、アタシの仕事が3倍に増えてんだ」", "372000322_6": "「毎度ギアに負荷をかける戦い方しやがって……\\n あんたには学習能力がないのかい? あぁんッ!?」", "372000322_7": "「はいはい、別に勝てたんだからいいじゃないか」", "372000322_8": "「そこまでにしとけ。2人とも」", "372000322_9": "「そうですよ姐さん。大人げないんですから……\\n 素直にお疲れ様って言ってあげればいいじゃないですか」", "372000322_10": "「その姐さんってのいい加減やめろ。\\n あんたらはアシスタントで舎弟じゃないんだぞ?」", "372000322_11": "「やめさせたきゃ口の悪さ直せよ姐さん。\\n ガラ悪い人に、教授とか呼ぶ方が恥ずかしいわッ!」", "372000322_12": "「そうですよ。仁さんがいなかったら、\\n ボクらでも姐さんの暴走、止められないんですから」", "372000322_13": "「……チッ」", "372000322_14": "「こっちを睨むなよ。そりゃ修理してもらうのは\\n 悪いと思ってるけどさ……」", "372000322_15": "「……クソ、グラウスヴァインスーツさえ完成してりゃ、\\n こんなガキなんかに……」", "372000322_16": "「ほらほら、ブツブツ言ってねぇで\\n 昼メシ済ましちまおうぜ」", "372000322_17": "「……やっぱり環さんは、\\n シンフォギアが嫌いみたいだ」", "372000322_18": "「……」", "372000322_19": "「ま、そりゃそうだよな」", "372000322_20": "「環さんからすりゃ自分の研究を諦めて、\\n ライバル兵器の面倒を見てるようなもんだし」", "372000322_21": "「目の敵にされて、当然か……」", "372000322_22": "「翼は環さんのこと、嫌いか?」", "372000322_23": "「え……」", "372000322_24": "「どうなんだよ」", "372000322_25": "「どう、と言われると……口を開けば\\n 憎まれ口を聞かされるばかりで……」", "372000322_26": "「……だけど。\\n 嫌いかと言われると、そうでもないかな」", "372000322_27": "「今も奏とのやり取り聞いていて思ったんだけど……、\\n 『あぁ、いつものがまた始まったなぁ』ってなんか安心する」", "372000322_28": "「分かる。最初はすっげームカついたんだけど、\\n なんつーか……憎みきれないんだよな」", "372000322_29": "「さっきの言葉も、遠回しに『無茶をするな』と、\\n 言っているように聞こえなくもないよ」", "372000322_30": "「それに海宝夫妻が来てから、シンフォギアの\\n メンテナンスが格段に丁寧になったように感じるし」", "372000322_31": "「口じゃ、ああ言っているが……\\n 多分、根は悪い人じゃないのかもな」", "372000322_32": "「うん。わたしもそう思うよ」", "372000322_33": "「もっとこっちに心を開いてくれりゃ、\\n 仲良くなれると思うんだけどなー……」", "372000322_34": "「まだこんなとこで、くっ喋ってんのかいッ!?」", "372000322_35": "「別にー? 環さんの毒舌口撃は、\\n ノイズにも効き目があるんじゃないかって話してただけさ」", "372000322_36": "「プ……フフ、ハハハッ! そいつは傑作だな」", "372000322_37": "「そうだ、その通りだ。\\n アタシがノイズどもの心をボッキボキに折ってやるよッ!」", "372000322_38": "「――おや、海宝女史が笑っているとは」", "372000322_39": "「……そんなんじゃない。\\n やめてくれ」", "372000322_40": "「わぁお、可愛いかったな……\\n 写真撮っておけばよかった……」", "372000322_41": "「チッ、あんたも来てたのか」", "372000322_42": "「弦十郎のダンナ、注意しろよ。\\n 環さんの口の悪さでノックアウトされちまうぞ」", "372000322_43": "「ほう。望むところだ。\\n 受け流しも聞き流しも、俺が大の得意とするところだがな」", "372000322_44": "「何言ってるのさ、環ちゃんは黙って見つめるだけでも\\n 私をいつもノックアウトしてるよ」", "372000322_45": "「ガキどもの前で、やめろバカッ!」", "372000322_46": "「フフ……」", "372000322_47": "「その辺にしておけ。お前たち、\\n そろそろ次のライブの打ち合わせだ」", "372000322_48": "「帰還早々悪いが、\\n 30分後に本部へ来てくれ」", "372000322_49": "「了解っと」", "372000322_50": "「っしゃ、今度は数万人規模のライブだもんな。\\n 翼、気合い入れていこうッ!」", "372000322_51": "「元気なのは良いことだけどね。\\n うーん、私はちょっと心配かな」", "372000322_52": "「『ギャラルホルン』の起動実験も兼ねてるんでしょ?\\n なにも起きないといいんだけど……」", "372000322_53": "「もしトラブルがあったら、\\n 真っ先に自分の身の安全を確保するんだよ、いいね?」", "372000322_54": "「おいおい、お節介がすぎるだろ。\\n そんな心配しなくても大丈夫だって」", "372000322_55": "「でもねぇ……」", "372000322_56": "「ありがとう、気持ちは嬉しいけどさ。\\n 本当に大丈夫だから」", "372000322_57": "「だって、あたしの隣には翼がいるんだからなッ!」", "372000322_58": "「もー……。翼ちゃん、奏ちゃんを頼んだよ?」", "372000322_59": "「頑張りすぎてる時、止めてあげられるのは\\n 多分、君だけだからさ」", "372000322_60": "「ありがとうございます、仁さん。\\n 肝に銘じておきます」 ", "372000322_61": "(……そしてわたしが不甲斐ないせいで\\n 奏が……仁さんが……大勢の人々が……)", "372000322_62": "(環さんが憤り、たとえ犯罪行為だとしても、\\n グラウスヴァインスーツを使うのは当然だ)", "372000322_63": "(今回の事件も、わたしたちだけで\\n 街や住民を護りきれたか、怪しかった)", "372000322_64": "(そう……わたしが不甲斐ないばかりに、\\n 仁さんが亡くなり、環さんは戦場に立つ……)", "372000322_65": "(すべてはわたしの弱さが招いた罪……\\n 恨まれても、仕方のないこと)", "372000322_66": "(ならばせめて、共に罪を背負おう。\\n 仮に共犯として捕縛されることになろうとも……)", "372000322_67": "「……ているか。", "372000322_68": " 聞こえているのか、翼ッ!」", "372000322_69": "「し、司令……ッ!」", "372000322_70": "「どうした、何かあったのか」", "372000322_71": "「……いえ、問題ありません。失礼しました」", "372000322_72": "「ならば急ぎ出動してくれッ!」", "372000322_73": "「な……ッ! テロを起こしていた\\n 錬金術師たちは、全滅したはずでは……ッ!?」", "372000322_74": "「――だと思っていたのだがな。\\n どうやら別の脅威が出現したらしいッ!」", "372000322_75": "「現場ではすでに、例の電波障害が起きているッ!\\n グラウスヴァインスーツに警戒しろッ!」", "372000322_76": "(……ッ! 環さん……ッ!)" }