{ "367000641_0": "「デュランダルを、護りきれませんでした」", "367000641_1": "「手に入ったのは、刃から零れた、\\n これだけ……」", "367000641_2": "「これは、デュランダルの欠片ね」", "367000641_3": "「大部分は奪われて……。\\n ごめんなさい」", "367000641_4": "「一度も任務を達成できず、\\n 不甲斐ないばかりです……」", "367000641_5": "「いいや。今はお前たちが\\n 無事に帰還できただけで何よりだ」", "367000641_6": "「それに、我々はまだ\\n 負けたと決まったわけではない」", "367000641_7": "「はい、UFOに潜入した際、\\n 発信機を仕掛けることができました」", "367000641_8": "「これで敵の情報を\\n 手に入れられればいいのだが――」", "367000641_9": "「検知範囲も最大限まで拡張して……、", "367000641_10": " これは――ッ!?」", "367000641_11": "「どうしたッ!!」", "367000641_12": "「……なるほどね。\\n 色々と合点が言ったわ」", "367000641_13": "「地球上を隈なく探しても見つからない、\\n 敵の本拠地……」", "367000641_14": "「そりゃそうよね。\\n だって存在しないんだもの」", "367000641_15": "「――え?」", "367000641_16": "「見てごらんなさい。\\n 発信機が差し示す位置を」", "367000641_17": "「これ、は――」", "367000641_18": "「地球の外……?」", "367000641_19": "「そう……、\\n 彼らの基地は月にあるわ」", "367000641_20": "「ブリル協会、万歳ッ!」", "367000641_21": "「ブリル協会、万歳ッ!」", "367000641_22": "「皆、出迎えご苦労」", "367000641_23": "「今こそ地球に粛清をッ! 血の喝采をッ!!」", "367000641_24": "「……右列から二番目の男。\\n 敬礼の角度が浅すぎるぞ」", "367000641_25": "「す、すみませんッ!\\n ですが朝から、体調が優れず――」", "367000641_26": "「言い訳不要だ。\\n 皆協会のため耐え忍んでいるのは同じ」", "367000641_27": "「貴様は非ブリル的な思想を矯正する必要があるな。\\n 懲罰房へ連れていけ」", "367000641_28": "「そ、そんな……」", "367000641_29": "「誰も彼を助けてはならん。手を取り支え合うなど、\\n 非ブリル的な軟弱な発想だ」", "367000641_30": "「ハッ!」", "367000641_31": "「ブリル協会、万歳ッ!」", "367000641_32": "(……我らの先世が先の大戦で\\n 祖国を追われ――)", "367000641_33": "(果てに月へたどり着き、月面にある超古代の遺跡を見つけた。\\n その技術を糧に力を蓄え、すでに100余年……)", "367000641_34": "(――だがデュランダルを手にした今、\\n ようやく、ようやく人類への復讐が可能となった)", "367000641_35": "「……皆の者。長きに渡り、苦労を掛けたな」", "367000641_36": "「そんな……ッ! 勿体ないお言葉……ッ!」", "367000641_37": "「我らは全て、総統の御心のままに……ッ!」", "367000641_38": "「ああ、総統も地球の統治を望んでおられる」", "367000641_39": "「これより我らブリル協会は、\\n 長きに渡る沈黙から目覚め――」", "367000641_40": "「地球への全面攻勢をしかけるッ!!」", "367000641_41": "「急ぎ、デュランダルの接続を開始せよッ!」", "367000641_42": "「――ふぅ。\\n 2週間ぶりのステイツか」", "367000641_43": "「まったく、大人しく我が国に従っていればいいものを、\\n 余計な交渉の手間ばかり増やさせるな、彼の国は」", "367000641_44": "「はぁ……こうも忙しいと、ハリウッド映画よろしく、\\n いっそ世界の滅亡を望んでしまう」", "367000641_45": "「大統領ッ! 失礼しますッ!!」", "367000641_46": "「な、なんだね。いきなり――」", "367000641_47": "「こちらをご覧くださいッ!」", "367000641_48": "『地球に住む、すべての非ブリル的存在、\\n 即ち劣等種の猿どもへ告げるッ!』", "367000641_49": "『時は満ちたッ! 我々ブリル協会は、今日この日を持って、\\n 世界の破壊と秩序の再構築を始めるッ!』", "367000641_50": "「ブリル協会ッ!?\\n あのテロ組織が、こんなジョーク動画を送りつけてきたと?」", "367000641_51": "「いえッ! 我が国はおろか、世界中の放送局や\\n ストリーミングサイトがこの放送にジャックされていますッ!」", "367000641_52": "「何ぃッ!?」", "367000641_53": "「く……ッ! この放送は止められないのかッ!?」", "367000641_54": "「ダメね。月面からの電波を妨害する術は無いわ」", "367000641_55": "『――これより、穢れた地球の\\n 浄化を行うため、超兵器を起動するッ!』", "367000641_56": "『その名も、\\n ノイ・カ・ディンギルだ――ッ!』", "367000641_57": "『聖遺物由来の高出力エネルギーにより、\\n 超質量爆弾を射出――』", "367000641_58": "『着弾点は半径50キロにわたって地図から\\n 消滅するという代物だ……ッ!』", "367000641_59": "「あれは……カ・ディンギルッ!?」", "367000641_60": "「嘘だろ、なんで月にあるんだッ!?」", "367000641_61": "「カ・ディンギルが、月から地球を狙って……ッ!」", "367000641_62": "「正確には、カ・ディンギルをベースにアレンジを加えた、\\n 超巨大な大砲のようね……」", "367000641_63": "「二課は一度、完全に乗っ取られている……。\\n 恐らくあのタイミングで設計図が流されて……」", "367000641_64": "『死にたくなければ、今すぐブリル協会の\\n 傘下に入れ。さすれば属国として……』", "367000641_65": "『恒久的に我ら優勢種の糧として\\n 隷属させてやろう』", "367000641_66": "『期限は36時間。何でもいい。\\n 降伏の意思を見せてみろ』", "367000641_67": "『――ああ、それと\\n 日本の二課といったか』", "367000641_68": "『貴様たちに預けているモノを、\\n そろそろ返してもらうぞ』", "367000641_69": "『では、劣等種らの\\n 賢明な判断に期待する』", "367000641_70": "「まさか相手が月面にいるとは、\\n 驚きましたねぇ」", "367000641_71": "「ええ……。しかも、カ・ディンギルとは。\\n 私からしたら、悪い冗談のような話だわ」", "367000641_72": "「宇宙船の類を保有しない二課は、\\n 当然月に手を出すことができません」", "367000641_73": "「ですが、どうでしょう」", "367000641_74": "「かつて月を破壊しようと目論んだあなたならば、\\n あるいはその方法に心当たりがあるのではありませんか?」", "367000641_75": "「残念だけど、そんな隠し玉は持っていないわ」", "367000641_76": "「いえ、だけど……」", "367000641_77": "「これとシンフォギアなら、もしかしたら……」", "367000641_78": "「まさか、あそこがお前の故郷だったとはな。\\n そりゃ海を見たことないはずだ」", "367000641_79": "「隠していたつもりはない。\\n オレは生まれも育ちも月だ」", "367000641_80": "「それより――なぜ、あんなことができたのだ?」", "367000641_81": "「あん?」", "367000641_82": "「深淵の竜宮から脱出した時のことだ。\\n どうして、一片の迷いもなく――」", "367000641_83": "「約束があったからな。\\n 一緒に旅行に行こうって」", "367000641_84": "「だから、あんなところで死ぬわけにはいかなかったんだ」", "367000641_85": "「そんな理由で……ッ!」", "367000641_86": "「案外、そんな理由なんじゃないか?\\n いつもよりすごい力が出せる時なんてのは……」", "367000641_87": "「だからって……。友達など、\\n 一時の気の迷いのようなものではないか……」", "367000641_88": "「…………」", "367000641_89": "「……今から言うこと、誰にも言うなよ?」", "367000641_90": "「うん?」", "367000641_91": "「あたしに、故郷と言える場所は無い。\\n 両親も……」", "367000641_92": "「だけど、あたしの帰る場所を、あいつらが作ってくれた。\\n その日から、世界が違って見えたんだ」", "367000641_93": "「だから、あたしはあいつらのことを信じてる。\\n 何があってもな」", "367000641_94": "「――というか、\\n お前にだって友達がいたんだろ?」", "367000641_95": "「オレは、友達のことを信じることができなかった……」", "367000641_96": "「オレが、モーリッツを裏切ったんだ……」", "367000641_97": "「どういうことだ?」", "367000641_98": "「オレは、モーリッツに総統になってほしかった」", "367000641_99": "「総統を決める最後の試験は互いにナイフを持っての\\n 決闘だったが、オレはわざと負けると伝えた」", "367000641_100": "「だけどあいつは、オレに本気の攻撃をしてきたんだ。\\n オレに、殺意を向けて……」", "367000641_101": "「あいつがそんなことするはずない。\\n 何か事情があったのかもしれない……」", "367000641_102": "「だけど、オレはあいつを信じることができなかった。\\n オレは咄嗟に反撃して、ナイフがあいつの腹に刺さって……」", "367000641_103": "「…………」", "367000641_104": "「そうやって、オレが総統になることが決まった」", "367000641_105": "「だから、オレには総統の運命から逃げる資格なんて無いと、\\n 立派な総統になるために地球を統治することだけを考えて来た」", "367000641_106": "「でも、地球に来て、オレはお前たちの強さを目の当たりにした」", "367000641_107": "「今のオレなら、できるかな……」", "367000641_108": "「総統の責任から逃げず、そして、\\n 戦いを止めることも……」", "367000641_109": "「きっとできる。力を合わせて、カールを止めて……」", "367000641_110": "「…………」", "367000641_111": "「お前、震えてるのか……?」", "367000641_112": "「カールは恐ろしい男だ。\\n 地球制圧のために、手段を選ぶつもりはない」", "367000641_113": "「まして、デュランダルを手に入れた今、\\n 地球の人間に勝ち目は……」", "367000641_114": "「オレにできることは――」", "367000641_115": "(クリスたちを死なせないためには、\\n もう、これしかないんだ……)" }