{ "361000331_0": "「やっと放課後――」", "361000331_1": "「レッスン室に来たってことは、レッスンの続きだね」", "361000331_2": "「やる気になっているところ申し訳ないけれど、\\n ここに集まった目的は作戦会議よ」", "361000331_3": "「作戦……?」", "361000331_4": "「それについては、わたしも気になっていた。\\n 受けに回っているばかりでは、どうしても不利になってしまう」", "361000331_5": "「あと、闇の舞台少女が言っていたことも気になるわ。\\n 確か……『女神の歌』……って」", "361000331_6": "「その主役に、と口にしていたということは、\\n 演劇の題目なのだろうか」", "361000331_7": "「そうだよー。はい、3人の分の台本」", "361000331_8": "「ありがとう、ばななちゃん。\\n ……で、これって有名な話なの?」", "361000331_9": "「有名……といえば、有名ね。\\n わたしたち、舞台少女の間では」", "361000331_10": "「もうすぐ、『女神の歌』の役者選考が\\n 始まるからね」", "361000331_11": "「毎年、全国から舞台少女を集めて、\\n 1つの作品を演じるんだよ」", "361000331_12": "「とはいえ、去年のわたしたちは初のスタァライトだったから。\\n 別のことまで気が回らなくて」", "361000331_13": "「だから、今回はみんなで受けてみるんだ」", "361000331_14": "「合格したら、大きな舞台が2連続ッ!\\n お祭り延長戦、って感じだよね~」", "361000331_15": "「けれど、そんな輝かしいステージを、\\n 闇の舞台少女が口にした、ということは……」", "361000331_16": "「光が眩ければ、影もまた相応に暗くなるもの。\\n 何か思うところがあるに違いない」", "361000331_17": "「これまで、今回のオーディションについての手がかりが\\n なかったから、ようやく一歩前進って感じだよ」", "361000331_18": "「だから、みんなで『女神の歌』の内容の中から\\n ヒントを見つけ出したいと思って」", "361000331_19": "「朝からずっと読み込んでるし、\\n 誰の役を振られてもばっちり演じきれちゃうよ」", "361000331_20": "「言ったわね、華恋」", "361000331_21": "「こんなこともあろうかと、作ってきたよ。\\n じゃーん、バナナくじ」", "361000331_22": "「さっそく演じるつもり……?」", "361000331_23": "「3人の演技見るの、楽しみッ!」", "361000331_24": "「舞台少女の『キラめき』……見せてもらおう」", "361000331_25": "「~~~~~♪」", "361000331_26": "「なるほど、人々が奏でる不安の音を、\\n 歌で祓っていく女神の物語か」", "361000331_27": "「え、え……アポロン様がお見えに?\\n けど、わたしは……その……」", "361000331_28": "「どうやら、このアルケーって子が主人公のようだけど、\\n なんだか頼りないわね」", "361000331_29": "「アポロン様ッ!\\n アルケー、あの子まーた引きこもってるのよ」", "361000331_30": "「すごい、まるで別人が乗り移ったかのようだわ……」", "361000331_31": "「えーと、ひかりちゃんはメレテーちゃん?\\n 実践の女神、って書いてあったっけ」", "361000331_32": "「もう……アポロン様ったら……。\\n でも、わたしならこのまま……よろしくてよ?」", "361000331_33": "「よくないよッ! こんな……こんな……、\\n ひゃあ~……」", "361000331_34": "「落ち着いて。あの子はテルクシノエーっていう……、\\n 魅惑の女神、だったかしら」", "361000331_35": "「妖艶な魅力……、\\n 舞台少女、侮りがたし……ッ!」", "361000331_36": "「ほらッ、アルケー。\\n アポロン様が来てるのよッ!」", "361000331_37": "「わたしなんかが……うう、\\n ごめんなさい」", "361000331_38": "「アポロン様、なんならわたしと2人きりで……、\\n いかがです?」", "361000331_39": "「テルクシノエーッ!\\n 余計なことすんなっての」", "361000331_40": "「あたしたちは、みんなで唄わなきゃいけないんだから」", "361000331_41": "「なんか、ばななちゃんじゃなくてひかりちゃんが\\n 主人公みたいに見えるけど……」", "361000331_42": "「メレテー、ね。だからこそ、これから\\n アルケーが成長していくんじゃない?」", "361000331_43": "「~~~~~♪」", "361000331_44": "「おお……、冒頭の舞いとは、\\n また一味違った『キラめき』が……」", "361000331_45": "「さっきのは戦うための歌で、\\n 今度はアポロンに捧げる歌なのでしょう」", "361000331_46": "「ライブでの翼さんやマリアさんを観てるみたい。\\n すごい、綺麗……」", "361000331_47": "「……と、第1幕はこんな感じかな」", "361000331_48": "「どう? イメージ掴めたんじゃない?」", "361000331_49": "「すごいッ! すっごいよかったよ、\\n 華恋ちゃんッ、ひかりちゃんッ、ばななちゃんッ!」", "361000331_50": "「……不覚にも演目に\\n 見入ってしまっていた……」", "361000331_51": "「想像を超える演技だったから、つい。\\n 普通に楽しんでいる場合じゃなかったわね」", "361000331_52": "「フフ、ありがとうございます♪」", "361000331_53": "「それにしても、みんなすごかったよ。\\n まるで別人みたい」", "361000331_54": "「それが、舞台少女ッ! ……ってね」", "361000331_55": "「……現実という舞台には、1人の主役はいない。\\n 誰もが自分という演目の主役なのだから」", "361000331_56": "「でも、舞台の上には主役が存在する。\\n 脚本は、主役のために築かれたものだもの」", "361000331_57": "「だからこそ、舞台少女は主役を目指す」", "361000331_58": "「闇の舞台少女は言っていたわね。\\n『女神の歌』の主役に……って」", "361000331_59": "「でも、\\n あんなことをしてまで……」", "361000331_60": "(……今のわたしに必要なのは、\\n そのように貪欲な渇望なのだろうか)", "361000331_61": "「あの様子だと、闇の舞台少女の目的は、\\n『女神の歌』の主役になりたいみたいだから……」", "361000331_62": "「正体は去年の選考で落選してしまった参加者、\\n という線が濃厚ね」", "361000331_63": "「その未練が、あのようなレヴューの形式に\\n 繋がっているのでしょう」", "361000331_64": "「今年も開催されるんだから、今度こそ、\\n って頑張ればいいのに……」", "361000331_65": "「できない事情があるのかも。\\n なんらかの理由で舞台を続けられなくなったとか」", "361000331_66": "「それはそれで探っていく必要があるでしょうけど、\\n 先ずはレヴューの対策から――」", "361000331_67": "「みんなの端末が一斉に……ッ!」", "361000331_68": "「こちらを待ってはくれない、ということか」", "361000331_69": "「全員まとめて相手するってことね。\\n いいわ、遠慮なくやらせてもらおうじゃないのッ!」", "361000331_70": "開幕のレヴュー", "361000331_71": "「レヴューでは、あの人たちを倒せばいいんだよね?」", "361000331_72": "「本来のレヴューはそうじゃないけれど……、\\n この場においては、それで正解」", "361000331_73": "「本来のレヴューは舞台少女同士の一騎打ち。\\n こんな、集団で囲い込んだりしないから」", "361000331_74": "「すべては闇の舞台少女が\\n 自分の都合のいいように歪めてるってことね」", "361000331_75": "「だから、みんながあんなことに……」", "361000331_76": "「彼女がどんな姑息な手段で仕掛けてこようとも、\\n わたしたちは負けるわけにはいかないわ」", "361000331_77": "「無論だ。防人として、このような輩に\\n 遅れを取ることなど断じてないッ!」", "361000331_78": "(だが……)", "361000331_79": "(防人としてではなく、舞台少女としては……、\\n どうなのだろう)", "361000331_80": "(もしここに観客がいて、\\n わたしの歌声は、皆の心に届くのだろうか……?)", "361000331_81": "「……翼?」" }