{ "318000612_0": "「ふう……こんなところにしとくか」", "318000612_1": "「悪いな、トレーニングに付き合ってもらっちゃって。\\n 病み上がりだから身体を慣らしておきたくてさ」", "318000612_2": "「いえ。\\n わたしも身体を動かしたかったから丁度良かったです」", "318000612_3": "「病み上がりといっても、動きキレキレだったデスよ」", "318000612_4": "「流石です」", "318000612_5": "「おいおい、誉めたって何も出ないぞ?」", "318000612_6": "「で……どうなんだ。\\n 暴れて少しは悩み、吹っ切れたか?」", "318000612_7": "「え……」", "318000612_8": "「聞かせてくれよ。\\n 例の錬金術師たちと何があったかを、さ」", "318000612_9": "「はい、実は……」", "318000612_10": "「なるほど、な……。あの女錬金術師たちと、お前たちの世界では\\n 顔見知りで、しかも命の恩人だったってわけか……」", "318000612_11": "「……はい」", "318000612_12": "「心から悪い人たちではなかったんです。\\n あの人たちなりに世界の人たちのことを考えて……」", "318000612_13": "「ただ、その方法が……」", "318000612_14": "「でも、わたしたち、最後の最後ではわかり合えたんです。\\n わたしたちの世界を、救ってくれたんです」", "318000612_15": "「気持ちはわかるよ。\\n アリシアの奴も、似た様なものだったしな……」", "318000612_16": "「あいつも心から悪い奴じゃなかった。\\n むしろ、優しすぎたからこそ、道を誤った……」", "318000612_17": "「アリシアさん……」", "318000612_18": "「けど今の連中の企んでる計画も『まちがった方法』だとしたら?\\n その実行を黙って見過ごすわけにはいかないだろう?」", "318000612_19": "「そ、それは……」", "318000612_20": "「例えば心が通じるのが、『まちがった方法』を\\n 達成するまでに、間に合わなかったら?」", "318000612_21": "「その時に出るはずの被害に、お前は責任が負えるのか?」", "318000612_22": "「責任…………」", "318000612_23": "「……なーんて、意地の悪い言い方だよな。悪い」", "318000612_24": "「いえ……確かに、\\n そういうことも、ちゃんと考えないといけないと思います」", "318000612_25": "「あの人たちは、\\n わたしたちの知るサンジェルマンさんたちではないことも……」", "318000612_26": "「でも……ですね」", "318000612_27": "「でも?」", "318000612_28": "「この世界のサンジェルマンさんも、この間の戦いの中で、\\n 避難してる人たちをかばっていたように見えたんです」", "318000612_29": "「偶然とかじゃなくか?」", "318000612_30": "「はい、カルマノイズがビームみたいな攻撃を使った時、\\n 避けられたはずなのに、確かにその場に留まって――」", "318000612_31": "「その先には民間の人たちを誘導してた\\n 調ちゃんや切歌ちゃんたちもいたんです」", "318000612_32": "「そういえば、あの時……」", "318000612_33": "「ピカッと光ったのに、こっちには飛んでこなかったデスね……」", "318000612_34": "「でしょ? あれは絶対、偶然なんかじゃないよ」", "318000612_35": "「他の2人も、カルマノイズに呑み込まれたサンジェルマンさんを\\n 心配して、必死に助けようとしてましたし……」", "318000612_36": "「悪人だって、仲間なら助けようとするとは思うけどな」", "318000612_37": "「そうかもしれません……」", "318000612_38": "「でも、それでもッ!\\n わたしは……。信じたいです」", "318000612_39": "「サンジェルマンさんたちの心を」", "318000612_40": "「この世界でもきっと、わかり合えるって……」", "318000612_41": "「やれやれ。人の心ってヤツが目に見えたら、\\n こんな風に悩まなくて済むんだけどな……」", "318000612_42": "「それはそれで苦しい時もあると思います」", "318000612_43": "「まあ、そうかもしれないけどね」", "318000612_44": "「とにかく、連中が実際に何を考えてるかわからない以上、\\n あたしらはまだ信用できない――ってことだけはわかってくれ」", "318000612_45": "「そう……ですね……」", "318000612_46": "「ここは奏さんたちの世界デスから……」", "318000612_47": "「うん。わたしたちもお手伝いはしてるけど……。\\n 世界の行方を決めるのは、この世界の人の意志じゃないと」", "318000612_48": "(だが、確かにただの敵としちゃおかしなところもある)", "318000612_49": "(あの時、余裕であたしにトドメを刺せる状況にあったのに、\\n 刺さなかったのも事実だ……)", "318000612_50": "(ったく、なんだってんだ。こっちにちょっかいをかけて\\n 来たと思ったら助けたり。意味わからないっての……)", "318000612_51": "(本当に、あいつらが腹の底で何を考えてるのかがわかれば、\\n こんなに悩まずに済むんだけどな……)", "318000612_52": "(いや、そいつは所詮、無い物ねだりってやつか……)" }