{ "341000441_0": "(この前会ったあの2人、変な人たちだったな……)", "341000441_1": "「あなたの歌を聴いて、\\n 大切なものなんじゃないかなって思ったの」", "341000441_2": "「少ししか聴こえなかったけど、素敵な歌声だったよ」", "341000441_3": "「ううん、わかるよ。\\n わたしも何度も歌に助けてもらってきたからッ!」", "341000441_4": "「歌には不思議な力があるよね、それこそ魔法みたいに」", "341000441_5": "(あんなこと言われたの初めて……)", "341000441_6": "(だけど、あの事件のことを知ったら、きっとわたしを\\n 避けるに決まってる。今までもずっと、そうだったんだから……)", "341000441_7": "「先日起きた工場や高速道路の襲撃事件。\\n 犯人は未だ不明のままで、目撃者の話では……」", "341000441_8": "「またこのニュースしてる。 あれ?\\n この襲撃があった日って、アーテルがいなくなってた日だ」", "341000441_9": "「襲撃に規則性はなく、日付もバラバラなことから\\n 捜査は困難を極め……」", "341000441_10": "「あの日も、この日もだ。\\n アーテルが出かけるって、夜にいなかった日と同じ」", "341000441_11": "(まさか、これって……。\\n アーテルがこの事件をッ!?)", "341000441_12": "(ううん、そんなわけないよね。きっと偶然だよ……)", "341000441_13": "「あら、居候の分際で勝手にテレビだなんて、良いご身分ね」", "341000441_14": "「あッ、ご、ごめんなさい……」", "341000441_15": "「目障りだから、部屋に引っ込んでくれないかしら」", "341000441_16": "「はい」", "341000441_17": "「まったく、なんであいつは\\n こんなお荷物残していったのかしら」", "341000441_18": "「……」", "341000441_19": "「何? その目は」", "341000441_20": "「いや、なんでも……」", "341000441_21": "「住まわせてやってるのに、生意気なのよッ!\\n 誰のおかげで生きていられるのか、今すぐ躾けてあげるッ!」", "341000441_22": "(ぶたれる――ッ!)", "341000441_23": "「……」", "341000441_24": "「……あれ?」", "341000441_25": "「……私、何してたんだっけ?\\n いいや、もう寝よ……」", "341000441_26": "「大丈夫?」", "341000441_27": "「アーテルッ!\\n あなたが助けてくれたの?」", "341000441_28": "「ええ。またみことがあいつにいじめられそうだったから……」", "341000441_29": "「ありがとう……ッ!\\n アーテルは優しいね」", "341000441_30": "「やっぱり、アーテルがあんなことするわけないよ」", "341000441_31": "「あら、あんなことって?」", "341000441_32": "「――ッ! な、なんでもない」", "341000441_33": "「それより、アーテルってたまに家を留守にするじゃない?\\n あれって何をしているの?」", "341000441_34": "「ああ……あれは、準備をしているのよ」", "341000441_35": "「準備って……もしかして、元の世界に帰るための……?」", "341000441_36": "「フフ、心配しないで。みことを置いて消えたりしないわ」", "341000441_37": "「それは、私とみことが、自由を掴むための準備」", "341000441_38": "「そしてそれは、もう少しで叶えられるわ……」", "341000441_39": "「――?」" }