{ "333000511_0": "追う者と追われる者", "333000511_1": "「帰投しました」", "333000511_2": "「君たちが無事に戻ってなによりだ。\\n だが、やはり厳しい戦いとなったようだな……」", "333000511_3": "「すみません……、\\n 結局取り逃がしてしまって……」", "333000511_4": "「謝ることなどない。\\n 本来なら我々だけで解決するべき問題なのだ」", "333000511_5": "「せっかくのチャンスだったってのにッ!」", "333000511_6": "「口惜しいが、向こうに利があった。\\n 逃げに徹する者を捕まえるのは容易なことではない」", "333000511_7": "「そもそもなんで逃げるんだ? シャロンを攫ったのは、\\n ヴィマーナを動かすためだったんじゃないのか?」", "333000511_8": "「なのにあいつら、ヴィマーナを破壊するだけ破壊して、\\n 急に逃げ出しやがった……」", "333000511_9": "「初めから破壊が目的だったのか……?\\n 確かに以前も似たようなことを言っていたな」", "333000511_10": "「こちらに聖遺物を使わせないように阻止する。\\n それなら、破壊を優先したのもわかるが……」", "333000511_11": "「ただ、やつらはヴィマーナ内で、\\n 何かを探しているようにも感じました」", "333000511_12": "「そうか……。\\n ならば、まだ私たちの知らない別の狙いがあるのかもしれない」", "333000511_13": "「それとシャロンにどのような関係があるかはわからないが……」", "333000511_14": "「いずれにしろ、優先事項はシャロンの奪還だ」", "333000511_15": "「あの……シャロンちゃんのお薬が切れるまでの時間は……?」", "333000511_16": "「…………」", "333000511_17": "「まさか、さっきの戦いがラストチャンスだった……、\\n なんてことにはならねぇよな?」", "333000511_18": "「いや、まだ猶予はある。\\n だが、24時間を切った状況だ」", "333000511_19": "「…………」", "333000511_20": "「やつらの逃走先は、つかめないのですか?」", "333000511_21": "「装者なんだから、\\n アウフヴァッヘン波形を追えるんじゃないのか?」", "333000511_22": "「いや、追跡は無理だった。どうやらやつらの装備には、\\n ステルス機能が搭載されているらしい」", "333000511_23": "「侵入に気づくのが遅れたのもそれが原因だ」", "333000511_24": "「恐らく、あのマントに施されているのだろう。\\n アレがある以上、追跡は難しい……」", "333000511_25": "「そういや、あのマント、\\n ビーム兵器のダメージも軽減してるようだった」", "333000511_26": "「相手はかなりの技術力を有しているということだな……」", "333000511_27": "「やつらの素性については、\\n 米国と協力して調査しているところだ」", "333000511_28": "「続報が入り次第、追って連絡する。\\n まずは、身体を休めてほしい」", "333000511_29": "「休めって言われても、こんな状況じゃあな……」", "333000511_30": "「だが、この点に関しては、わたしたちは専門外だ。\\n 焦れる気持ちはわかるが、仕方ない……ッ!」", "333000511_31": "「でも、あの2人、本当に悪いことに協力してるのかな?\\n だって翼さんとクリスちゃんなんだよ……?」", "333000511_32": "「環境が変われば、人は変わるものだからな」", "333000511_33": "「実際、あいつのことを攫ってるじゃねーか」", "333000511_34": "「それはそうだけど……」", "333000511_35": "「ところで、S.O.N.G.の許可は取ってきたのか?」", "333000511_36": "「そうだッ! そのことを伝えに来たんだったッ!」", "333000511_37": "「まさかダメだったとか言わないよな?」", "333000511_38": "「えっと……わたしは大丈夫なんだけど、\\n 翼さんとクリスちゃんは戻るようにって……」", "333000511_39": "「ある程度の想像はついているが、\\n 理由を聞かせてもらおう」", "333000511_40": "「師匠が気にしているのは翼さんとクリスちゃんの\\n 精神的リンクのことなんです」", "333000511_41": "「このまま2人が残って、精神的リンクの影響を受け続けたら\\n どんな悪いことが起きるか想像ができない――」", "333000511_42": "「そんな状況下で、\\n 任務を続けさせるわけにはいかないって……」", "333000511_43": "「あたしらより、あいつの方が深刻な状況だろッ!」", "333000511_44": "「だから代わりにマリアさんたちが帰ってきたら、\\n すぐに送るって……」", "333000511_45": "「それはいつになるんだ?」", "333000511_46": "「今はまだ海外での任務が終わってなくて……。\\n ただ、3日もあれば行けるとは言ってたけど……」", "333000511_47": "「それじゃ間に合わねぇよッ!\\n お前だってそれくらいのこと、わかるだろ?」", "333000511_48": "「わかるよッ!\\n ……でも、わたしは1人でもシャロンちゃんを助ける」", "333000511_49": "「そうか……では、仕方ないな。\\n 懸念がわたしたちの身体のことならば、目を瞑ってもらおう」", "333000511_50": "「ああッ!」", "333000511_51": "「え……どういうこと?」", "333000511_52": "「命令に背くつもりはないが、\\n 今回ばかりは現場の判断を優先させてもらう」", "333000511_53": "「お前1人で、あいつらを相手にするのは無茶が過ぎる」", "333000511_54": "「ああ、それに、わたしも雪音もシャロンが安全だと\\n わかるまでは、帰るわけにはいかない」", "333000511_55": "「クリスちゃん……翼さん……」", "333000511_56": "「つーわけで、必ずあたしらで救うぞッ!」", "333000511_57": "「うんッ!」" }