{ "325000421_0": "「まさか手助けに来てくれるとは思いませんでした」", "325000421_1": "「頼りにしてくれていいって言ったでしょ」", "325000421_2": "「……」", "325000421_3": "「……」", "325000421_4": "「それにしても、この空気はなんだろうね」", "325000421_5": "「ここはもう中心街のはずなのにまったく活気がない……」", "325000421_6": "「それどころか、街の人たちはどこか暗い雰囲気を纏っている。\\n 気のせいではなく、はっきりとそう言えます」", "325000421_7": "「オレも同意見だよ。\\n まるで機械に組み込まれた歯車って感じだね」", "325000421_8": "「いつからこんな空気に?\\n 怪獣が現れてから、それとも初めから……」", "325000421_9": "「怪獣が現れて、怯える気持ちはわかるけど\\n こんなふうに暗くなるのは変じゃない?」", "325000421_10": "「やはり、それは考えにくいですね。\\n だとしたら初めから……」", "325000421_11": "「そう考えるのが妥当かな。\\n ますます、おかしな世界だね」", "325000421_12": "「おかしいなんて言葉では片づけられません」", "325000421_13": "「この辺りは、昨日戦闘のあった場所だというのに、\\n その被害がたったの一晩で元に戻っているんですから」", "325000421_14": "「ホントだ。直してる人もいないみたいだし、異常だね」", "325000421_15": "「これは急いでグリッドマンに報告したほうがいいかな」", "325000421_16": "「はい。\\n だけど、その前に確認したい場所があります」", "325000421_17": "(……この不気味な感じは何?)", "325000421_18": "(思い返してみれば、ギャラルホルンのアラートが鳴って、\\n すぐ消えたということから、初めから何かがおかしかった)", "325000421_19": "(急いでS.O.N.G.にも伝えたほうがいい――)", "325000421_20": "「ここかい、君が確認したい場所って?」", "325000421_21": "「見たところ、特に不自然なモノはなさそうだけど」", "325000421_22": "「ギャラルホルンのゲートが消えている……。\\n どうして……?」", "325000421_23": "「それって、君たちがこの世界に来た時に使った入り口のこと?」", "325000421_24": "「はい、そうです」", "325000421_25": "「それって消えちゃうモノなの?」", "325000421_26": "「いいえ、\\n ギャラルホルンのゲートが消えるなんてありえませんッ!」", "325000421_27": "(S.O.N.G.への報告どころじゃない、\\n これじゃ、わたしたちは、元の世界へ帰ることができない)", "325000421_28": "「もう一度ゲートを開く方法は?」", "325000421_29": "「……わかりません」", "325000421_30": "「やれやれ、相当ヤバイ事態ってことだね」", "325000421_31": "(まさか、このままずっとこの世界に……)", "325000421_32": "「……くッ!」", "325000421_33": "「肩の力を抜きなよ。もっと、リラックスして」", "325000421_34": "「そんな悠長なことはしていられませんッ!\\n この状況がどれほど大変な事態か……」", "325000421_35": "「自分の世界に帰る手段をなくした、この状況が……」", "325000421_36": "「君の気持ちはわかるよ。\\n オレも帰る手段をなくしたら困るし」", "325000421_37": "「だけど、済んだことを嘆いてもしょうがないじゃない。\\n それで、事態がいい方向に進むわけでもないし」", "325000421_38": "「それは……」", "325000421_39": "「オレの目には、君は知的で冷静な女の子に映るんだよね」", "325000421_40": "「この事態だって、きっと君ならなんとかするって思うんだ」", "325000421_41": "「…………」", "325000421_42": "「だから、とりあえず今は、\\n できることをしたほうがいいんじゃないかな?」", "325000421_43": "「……」", "325000421_44": "「その通りですね。\\n すみません、取り乱してしまって」", "325000421_45": "「気にしない気にしない」", "325000421_46": "「ありがとうございます。\\n それでは、次の調査にいきましょうか」", "325000421_47": "「あ、1つ提案なんだけど」", "325000421_48": "「なんですか?」", "325000421_49": "「ずっと歩き詰めで疲れたし、一旦そこのカフェに入って、\\n お茶にするってのはどうかな?」", "325000421_50": "「それはダメです」", "325000421_51": "「ですよね……」", "325000421_52": "「……」", "325000421_53": "「……」", "325000421_54": "(ど、どうすりゃいいんだよ、この状況……)", "325000421_55": "(急に『君の調査に協力しよう』とか言って現れたと思ったら、\\n それからずっと無言って……)", "325000421_56": "(あたしか? あたしが何か話したほうがいいのか?)", "325000421_57": "(くそッ! こういうときになんであのバカがいないんだよ)", "325000421_58": "「……」", "325000421_59": "(ダメだ、どんな話題を振りゃいいのか……)", "325000421_60": "(調査以上にこいつの扱いのほうがよっぽど難易度が高いッ!)", "325000421_61": "(どうする、街の気になったところがあるか、とか聞いてみるか)", "325000421_62": "「大丈夫か?」", "325000421_63": "「えッ!? な、何が大丈夫なんだッ!?」", "325000421_64": "「先ほどから考え事をしているように見えた。\\n 何かこの状況で悩んでいるのだとしたら、話してみてはどうだ」", "325000421_65": "「そ、そんなに悩んでるように見えたか?」", "325000421_66": "「深く悩んでいるようだったが」", "325000421_67": "(確かに悩んではいたけど、まったく別の理由なんだよな。\\n わかってないだろうけど)", "325000421_68": "「私にできることがあるなら協力しよう」", "325000421_69": "「……だーッ! うじうじ考えるのはやめだッ!\\n この際、はっきり言ってやるッ!」", "325000421_70": "「あたしが悩んでんのはあんたのことだよッ!」", "325000421_71": "「私の?」", "325000421_72": "「ああ、そうだよ。あんたが今のあたしの悩みのタネだッ!」", "325000421_73": "「……すまない。確かに私の配慮が足りなかった」", "325000421_74": "「確かに、君のような年頃の女の子が、私のような男と並んで歩くのは、\\n 世間的な観点から見て、不自然に感じられるかもしれない」", "325000421_75": "「いや、そういうことじゃなくてだな……」", "325000421_76": "「なんつーか、ずっと無言で歩き続けるのが、\\n 気まずいって言うか……」", "325000421_77": "「とは言っても、正直、\\n あんたと何を話していいのかもわからない……」", "325000421_78": "「なるほど、どちらにしても気を使わせてしまったな。\\n 私のことはいないものと思ってくれて構わない」", "325000421_79": "「そんなガタイして、そりゃ無理だろう」", "325000421_80": "「……では、こうしよう。\\n 君と私、一定の距離を置いて歩く」", "325000421_81": "「おお、確かにそれなら\\n お互い気を使わなくてもいいかもしれないな」", "325000421_82": "「では私は、後方から君を見守りながらついていこう」", "325000421_83": "「ストーカーじゃないかッ!」", "325000421_84": "「何か問題が?」", "325000421_85": "「はあ……、もういいや。\\n このまま行くぞ」", "325000421_86": "「わかった」", "325000421_87": "「……ったく」", "325000421_88": "(あれ? なんだか急に気が楽になったぞ)", "325000421_89": "(まさか、わざと……?)", "325000421_90": "「…………」", "325000421_91": "「……どうした? 他にも何か問題が?」", "325000421_92": "「いや、なんでもない」", "325000421_93": "「2人で調査なんだから、\\n あんたも気になったことがあったら言ってくれよな」", "325000421_94": "「ああ、もちろんだ」" }