{ "355001011_0": "命題を胸に", "355001011_1": "「進んでいるかな、各地の復興は」", "355001011_2": "「状況については、こちらの報告書の通りです」", "355001011_3": "「ふむ、ふむ……滞りないようだね、どこも」", "355001011_4": "「やはり、死者が出なかったのが大きかったワケダ」", "355001011_5": "「こちらについては、洗脳を受けながらも\\n 局長の中に良心が残っていたのではないかと推測されます」", "355001011_6": "「必死だったのさ、僕もね」", "355001011_7": "「それにしても、局長のあれは見ものだったわね」", "355001011_8": "「ああ、全メンバーの前で頭を深々と下げたあれなワケダな。\\n あんな珍しいものを見せられたら、溜飲も下がるというワケダ」", "355001011_9": "「いくらでも下げるよ。こんな頭でよければ」", "355001011_10": "「特に、今回は導くべき錬金術師協会を、\\n 潰そうとまでしてしまったのだからね」", "355001011_11": "「各地の復興が優先ですが、協会の再建、\\n ラピスの修復など、やるべきことはまだまだあります」", "355001011_12": "「各自、口より手を動かしなさい」", "355001011_13": "「呼んだか?」", "355001011_14": "「呼んだとも、当然ね。\\n 聞かせてくれないか、近況を」", "355001011_15": "「問題ない。自動人形たちの修復は進んでいる」", "355001011_16": "「オレの傷も完全に癒えた。\\n あとは、これまで通りパパの命題に取り組むだけだ」", "355001011_17": "「これでいいか? オレは忙しい。\\n 部屋に戻らせてもらうぞ」", "355001011_18": "「つれないね、相変わらず。\\n 案じているのだよ、これでもね」", "355001011_19": "「頼まれているからね、イザークから、\\n 君のことを」", "355001011_20": "「……そのようだな。まったく、迷惑なことに。\\n こればかりは、パパに一言言ってやりたいところだ」", "355001011_21": "「何なら、思ってくれてもいいのだよ。\\n 第二の父親と、僕のことを」", "355001011_22": "「断る。第一も第二も、\\n オレのパパはパパだけだ」", "355001011_23": "「局長、もしかして、憧れてんじゃないの?\\n そういうのに」", "355001011_24": "「どうかな、それは。\\n ただ、思い知ったのは事実だよ、父娘の絆の強さを」", "355001011_25": "「呼んでみたらどうだ?」", "355001011_26": "「パパと」", "355001011_27": "「呼ぶかッ!」", "355001011_28": "「もういいなッ、オレは帰るぞッ!」", "355001011_29": "「あ、逃げた」", "355001011_30": "「いいところでいなくなっては困るワケダ」", "355001011_31": "「パパの親友、か……」", "355001011_32": "「いや、アダムはアダム、はた迷惑な露出狂だ」", "355001011_33": "「接し方は別段変わらんッ!」", "355001011_34": "「だがまあ……、これからも錬金術師協会に籍だけは置いてやる。\\n あくまで、命題の実現のためにな――」" }