{ "347000331_0": "「ええっと、これと、これと。\\n こっちも食べられる野草だって習ったよ」", "347000331_1": "「わかったわ、かごに入れるから少し待って」", "347000331_2": "「あっ、あそこにあるのは!」", "347000331_3": "「ちょッ!? 離れないでッ!」", "347000331_4": "「あれもお料理に使える野草――", "347000331_5": " きゃあ!?」", "347000331_6": "「間に合えッ!」", "347000331_7": "「ふぅ、ギリギリセーフね……」", "347000331_8": "「ご、ごめんなさい。\\n また転びそうなところを助けてもらって」", "347000331_9": "「いえ、いいの。わたしは護衛だから……」", "347000331_10": "(正直、これで何度目なのよッ!\\n と言いたいところだけど……)", "347000331_11": "「ありがとう……!\\n マリアって、すごく優しいね」", "347000331_12": "(なぜかこの子に強く言うことができない。\\n というか、何もないところでなぜ転べるのよッ!)", "347000331_13": "「それに、この声……一体誰に似てるのかしら……。\\n いつも聞いてる気がするのに、全く思い出せないわ……」", "347000331_14": "「え? 何か言った?」", "347000331_15": "「なんでもないわ……、\\n って、そっちは坂になってるから――」", "347000331_16": "「えっ……」", "347000331_17": "「きゃああああ!」", "347000331_18": "「しまった、さすがに間に合わなかったわ……ッ!」", "347000331_19": "「コレットッ! 大丈夫ッ!?」", "347000331_20": "「エヘヘ、だいじょぶ。\\n こういうの慣れてるから……」", "347000331_21": "「本当に? 見たところ、怪我は無いみたいだけど……」", "347000331_22": "「ごめんなさい。離れないでって言われたのに」", "347000331_23": "「いいのよ、あなたが無事なら」", "347000331_24": "「それにしても、随分と転がってきたわね」", "347000331_25": "「って、何ここ?\\n 美味しそうなフルーツが沢山なってるじゃないッ!」", "347000331_26": "「こっちには野菜もあるよ!\\n マリアの勘が当たったね!」", "347000331_27": "「わたしは適当に進む方向を決めただけよ。\\n この場所は、普通に探してたら見つからなかったわ……」", "347000331_28": "(この子のドジが、ちょっとした幸運を運んでくれたみたい)", "347000331_29": "「あっ、この野菜!」", "347000331_30": "「珍しい見た目をしてるわね。\\n 食べられるの?」", "347000331_31": "「うん、シチューに入れると味が出て\\n 美味しくなるんだよ」", "347000331_32": "「へー、これがそうなの……」", "347000331_33": "「あっ、そっちは違うの。\\n 見た目は似てるけど、すごく不味いんだ……」", "347000331_34": "「えッ!? ……違いがほとんどわからない」", "347000331_35": "「知識もそうだけど、そういった違いを見抜ける目を\\n 持っているのはすごいわね」", "347000331_36": "「そ、そんなことないよ~。\\n 旅をしてると自然と覚えちゃうだけだから」", "347000331_37": "(セレナも褒められると照れていたけど、\\n これくらいの子はみんなそうなのかしら)", "347000331_38": "「あっ、これロイドが好きだったな。\\n ちょっと多めに持って帰ろ」", "347000331_39": "「……ねえ、気になっていたんだけど、\\n あなたとロイドってどういう関係なの?」", "347000331_40": "「ロイドとは幼馴染なの」", "347000331_41": "「世界再生の旅にも、私を護るためにって\\n ついて来てくれて……嬉しかったな」", "347000331_42": "「そういうことを聞いたわけじゃないんだけど、\\n まああなたたちはそれくらいがいいのかもしれないわね」", "347000331_43": "「ええっと……?」", "347000331_44": "「なんでもないわ。それより、あなたたちのことや、\\n 旅のことをもっと沢山聞かせて」", "347000331_45": "「もちろん。えっと最初はね、\\n 私が神託を受けることになって……」", "347000331_46": "「そう……あなたも、\\n 自分を犠牲にしてでも護りたいものがあるのね」", "347000331_47": "「沢山あるよ。……本当は自分を犠牲になんて\\n しちゃいけないんだってわかってるけど……」", "347000331_48": "「それでも護りたいって思うものは、沢山……」", "347000331_49": "「あの子も似たようなことを言っていたわ」", "347000331_50": "「あの子?」", "347000331_51": "「わたしの妹よ。あの子は本当に自分を犠牲にして\\n わたしを護ってくれたわね……」", "347000331_52": "「あの、ええっと……」", "347000331_53": "「ごめんなさい。深い意味は無いわ。\\n あなたがわたしの妹に似てるって言いたかったの」", "347000331_54": "「ほら、食材は十分に揃ったから帰りましょう。\\n 泥だらけになった服もきれいにしないとね」", "347000331_55": "「フフ、マリアみたいな優しいお姉さまがいたら、\\n 沢山甘えちゃってたかも」", "347000331_56": "「そう?」", "347000331_57": "「エヘヘ、マリアお姉さま、とか呼んでいたのかな」", "347000331_58": "「なッ!?」", "347000331_59": "「あ、ご、ごめんなさい。\\n いきなりお姉さまなんて呼んだら驚いちゃうよね?」", "347000331_60": "「そ、そうね、できればマリアがいいわ……」", "347000331_61": "(その声でお姉さまって呼ぶのは反則よ。\\n 何、すごく可愛いじゃない、この子ッ!)", "347000331_62": "「……ま、まあ、あなたみたいな妹がいたら\\n わたしも甘やかしたかもしれないわね」", "347000331_63": "「もしそうなら、私、甘え過ぎちゃって、\\n 今よりもっとドジだったかも……」", "347000331_64": "「フフ、そうね……、\\n でも、ドジをしても許しちゃいそうだわ」", "347000331_65": "「あっ、ちょっと待って。\\n あそこにまだ食材があるよ!」", "347000331_66": "「よく見つけられたわね――、\\n って、ちょっと待ってッ!」", "347000331_67": "「えっ!?」", "347000331_68": "「もしかして匂いに釣られてきたのかしら」", "347000331_69": "「せっかくの食材が魔物に食べられちゃう!」", "347000331_70": "「仕方ないわね、蹴散らすわよッ!」" }