{ "345000921_0": "「俺の方は終わったぞ」", "345000921_1": "「ありがとうございます」", "345000921_2": "「……彼女は?」", "345000921_3": "「やるべきことをしに行きました」", "345000921_4": "「そうか……」", "345000921_5": "「…………」", "345000921_6": "「くそッ!!!」", "345000921_7": "「――ッ!?」", "345000921_8": "「僕は、なんて無力なんだ……」", "345000921_9": "「思いつかないんですよ。\\n 切歌さんを助ける方法が……」", "345000921_10": "「調さんが、ここまで努力してきたのに……、\\n あと少しだったのに……」", "345000921_11": "「……なぜだ? 前にも聞いたが、\\n なぜお前は、あの子たちにそこまでする?」", "345000921_12": "「無理やりここに連れて来られたお前が、なぜ?」", "345000921_13": "「…………」", "345000921_14": "「初めは、そんなつもりなんてさらさらなかったんですよ」", "345000921_15": "「攫われてきた当初は、隙をついて、F.I.S.へ連絡し、\\n 2人を引き渡す」", "345000921_16": "「そして、あわよくば、その功績を僕が得ようと考えていました」", "345000921_17": "「その間、適当に話を合わせ、\\n 調さんに研究者としてのノウハウなどを教えていました」", "345000921_18": "「少しでも信頼を得られれば、\\n 僕の作戦の成功率は上がりますからね」", "345000921_19": "「切歌さんを目覚めさせることは、F.I.S.も匙を投げた難題。\\n 絶対不可能なのに、調さんはできると信じて勉強を続けました」", "345000921_20": "「睡眠を削り、風邪を引こうが関係ない。\\n ただ、大切な人を目覚めさせたい、その一心で」", "345000921_21": "「1つの目的のため、無心で研究を続ける。\\n その姿は、まるで偉大なる研究者たちのようでした」", "345000921_22": "「だが、あの年齢でできることには限界がある。\\n やはり、謎の技術提供者の存在が大きかったのではないか?」", "345000921_23": "「確かにその者からの技術供与は、\\n 調さんの研究の根底を支えているものではあります」", "345000921_24": "「ですが、調さんの研究者としての知識は、\\n 既に僕に匹敵するか、それ以上に達していたんです」", "345000921_25": "「信じられない。一体どうやって?」", "345000921_26": "「それは――」", "345000921_27": "「『愛』ですよ」", "345000921_28": "「愛だって?」", "345000921_29": "「人間の持つ神秘。\\n 異端技術でも科学技術でも推し量れない超パワー」", "345000921_30": "「それが、愛の力ですよ」", "345000921_31": "「僕が、ここにいる理由は、その力を解明するためです。\\n そして、僕もいつか必ず、その愛の力を物にして見せるッ!」", "345000921_32": "「あのアスクレピオスの杖で、切歌さんを目覚めさせられれば、\\n 愛の力を知るためのヒントが得られると思っていました……」", "345000921_33": "「しかし、思うように上手くは行きませんね……」", "345000921_34": "「…………」", "345000921_35": "「愛のためとは、バカバカしいな……」", "345000921_36": "「……やはり、そう思いますか……」", "345000921_37": "「ああ、だが、その愛の力には、俺も助けられたことがある」", "345000921_38": "「ウェル、俺はお前を信用する。\\n お前は、決して無力なんかじゃないッ!」", "345000921_39": "「俺たちも今できることを全力でするぞッ!」", "345000921_40": "「ユリウスさん……。", "345000921_41": " ええ、やりましょうッ! 僕たちにできることをッ!」" }