{ "345000541_0": "「ドクターまでいるなんて聞いてないデスよ……」", "345000541_1": "「あなたにまでそんな反応をされるとは。\\n そちらの僕は本当に何をやらかしたのやら」", "345000541_2": "「あなた、あれだけのことをしておいて、\\n よく顔が出せたわねッ!」", "345000541_3": "「おっと、そう怖い顔はしないでください。\\n アンドロイド兵はちゃんと下げてるじゃないですか」", "345000541_4": "「今さら、お前のことを信じるわけがないだろう」", "345000541_5": "「こちらから手を出したことは一度もありませんよ?\\n 敷地内に侵入してきた賊を排除しようとしただけです」", "345000541_6": "「それは……」", "345000541_7": "「あの落とし穴はどう説明する?」", "345000541_8": "「僕はあの研究所を護らないといけませんからね」", "345000541_9": "「あなた方は侵入者ですから、\\n 隙をついてご退場願っただけですよ」", "345000541_10": "「その証拠に、あの滑り台は安全性を第一に考えた、\\n アトラクションとしても楽しめる退場システムです」", "345000541_11": "「どうです? 満足いただけたのではないですか?」", "345000541_12": "「確かに、罠というより、\\n テーマパークの遊具的な感じはしたが……」", "345000541_13": "「滑り台ってなんデス?」", "345000541_14": "「研究所からすぐ外に出られる、爽快感抜群の滑り台デスッ!」", "345000541_15": "「日本にある巨大テーマパーク『クマクマランド』の\\n ウォータースライダーを参考に造ったんデスよッ!」", "345000541_16": "「製作にはアタシも協力してるデスから\\n とても楽しいものデスよ」", "345000541_17": "「おお、面白そうデスッ!\\n アタシもやってみたいデスッ!」", "345000541_18": "「それじゃ、後で案内するデスよ」", "345000541_19": "「そこ、ちょっと静かにしていてもらえる?」", "345000541_20": "「は、はいデス」", "345000541_21": "「……えー、まあ、若干、調さんと認識の相違はありましたので、\\n それについては謝罪させていただきます」", "345000541_22": "「確かに、あのアンドロイド兵に関しても、\\n 不必要な追撃はしてこなかった」", "345000541_23": "「それにどこか……命を奪うような殺意も感じなかった……」", "345000541_24": "「それは……」", "345000541_25": "「あの研究所には関係者以外に入ってほしくありませんでしたし、\\n 護るために必要なことだったんです」", "345000541_26": "「そ、そうなんデスッ! あそこには大切なものがあるから\\n 神経質になってただけなんデスよッ!」", "345000541_27": "「……培養槽の中にいたあの切歌が関係しているの?」", "345000541_28": "「そのことも含めてお話しさせていただきますよ。\\n 必要無いというのでしたら、このままお帰り願うだけですが」", "345000541_29": "「この男を信用するかは別として、\\n 話を聞くだけなら問題無いだろう」", "345000541_30": "「わたしも同意見です」", "345000541_31": "「まあ、いきなり信用しろとは言いませんが、\\n 一時休戦くらいは受け入れてくれると助かります」", "345000541_32": "「……わかったわよ、一時休戦しましょう」", "345000541_33": "「では、お話しします。\\n 僕たちとこの世界のことを」", "345000541_34": "「まず、僕たちが何者だったのかというと、\\n 元々はF.I.S.という組織に所属していました」", "345000541_35": "(こっちの世界のアタシたちも、\\n アタシや調みたいな境遇なんデスかね……)", "345000541_36": "「おふたりはF.I.S.の装者として。\\n 僕は研究者として。ちなみに専門はロボット工学です」", "345000541_37": "「生化学ではないのね」", "345000541_38": "「おや、そちらの僕は生化学が専門でしたか。\\n 僕にはあまり興味のない分野ですね」", "345000541_39": "「F.I.S.に所属していたと言っていたが、\\n なぜ今、そこを抜けてこんな島で生活をしているんだ?」", "345000541_40": "「それを話すと長くなるんですが……。\\n おふたりがシンフォギアの訓練中に事故が発生したんですよ」", "345000541_41": "「訓練中の事故……」", "345000541_42": "「そのとき、調さんが爆発事故に巻き込まれそうに\\n なってしまい、切歌さんが庇いました」", "345000541_43": "「それがきっかけで切歌さんは重傷を負い昏睡状態に……」", "345000541_44": "「え? じゃあ、こっちのアタシはF.I.S.にいるんデスか?」", "345000541_45": "「ああ、あなたは見ていないんですね。\\n 彼女ならあの研究所の培養槽で眠っていますよ」", "345000541_46": "「じゃあ、やっぱりあのガラス管の中で眠っていたのが、\\n この世界の暁切歌なのね」", "345000541_47": "「ええ、そういうことになります」", "345000541_48": "(この世界の暁は昏睡状態……。\\n だから精神的リンクは受けないのか……)", "345000541_49": "「待て、では、そこの暁は一体……」", "345000541_50": "「アタシは切歌をモデルに造られたアンドロイドデスよ」", "345000541_51": "「アンドロイドッ!?」", "345000541_52": "「信じられないなら触ってみるデスか。\\n ロボットらしく硬いところとかあるんデスよ」", "345000541_53": "「……確かにあるわ、本当にロボットなのね」", "345000541_54": "「やはりそうだったか。\\n これまでの謎が解けた」", "345000541_55": "「しかし、F.I.S.にいた3人がなぜこの島に?」", "345000541_56": "「こちらのF.I.S.がどうかは知らないが、\\n 医療設備があるならそちらで目を覚ますのを待つべきだろう」", "345000541_57": "「あなたたちは見たでしょう。\\n 今の切歌さんは生命維持装置が無ければ死んでしまいます」", "345000541_58": "「……維持費だけが掛かる研究材料を\\n F.I.S.がいつまでも置いておくと思いますか?」", "345000541_59": "「そんな、それじゃ……」", "345000541_60": "「目覚める見込みがないとわかったF.I.S.は、\\n 彼女を処分しようとしたんです」", "345000541_61": "「……」", "345000541_62": "「それを知った調さんが、\\n 切歌さんを連れてF.I.S.を脱走したんです」", "345000541_63": "「なかなか大変でしたよ。\\n 生命維持装置に繋いだままこの島へ運ぶのは……」", "345000541_64": "「それがこの島に彼女たちがいる理由です。\\n 追われる身としては隠れる場所が必要ですからね」" }