{ "342000711_0": "そこに迫る危機", "342000711_1": "「被告ジャンヌ・ダルクは教義に背く異端者であると判明したッ!\\n よって、このヴィユ・マルシェ広場にて火刑に処すッ!」", "342000711_2": "「あれが、オルレアンの乙女か……」", "342000711_3": "「ああ、俺たちイングランドが負ける原因になった、\\n あの魔女だ……」", "342000711_4": "「それでは刑を執行するッ!\\n ――火を放てッ!」", "342000711_5": "「…………」", "342000711_6": "「――ッ! ジャネット……」", "342000711_7": "(こんな……こんなことが許されていいのかッ!\\n まともな審議も行われず、誰も味方する者も無く……)", "342000711_8": "(祖国を、故郷を護ろうと剣を取り、人々の希望の象徴として\\n 戦った英雄が、敵国に送られ、異端審問で有罪などと……ッ!)", "342000711_9": "「こんな理不尽、私は断じて――ッ!」", "342000711_10": "「いけないよ、それは。サンジェルマン」", "342000711_11": "「局長ッ! こんなことが許されていいのですかッ!\\n ジャネットはこんな死に方をするべき者じゃないッ!」", "342000711_12": "「わかるよ、気持ちは。\\n 許可できない、それでもね」", "342000711_13": "「秘匿されねばならない、錬金術は。\\n 露見してしまう、ここで彼女を救うために力を使えば」", "342000711_14": "「そんな理由で、私にジャネットを諦めろとッ!」", "342000711_15": "「災いを呼ぶんだ、大きな力は。ジャンヌ・ダルクの比ではない。\\n 錬金術を巡っての争いが起きたらね」", "342000711_16": "「それに、決めている、覚悟を。\\n 少なくとも彼女は」", "342000711_17": "「ジャネットが……?」", "342000711_18": "「……………………」", "342000711_19": "「くッ……このままではジャネットがッ!」", "342000711_20": "「言ったはずだよ、許可できないと」", "342000711_21": "(身体が……動かないッ!?)", "342000711_22": "「局長ッ!? くッ……私に術をッ!?」", "342000711_23": "「恨むといい、憎しみの相手が欲しいなら。\\n それでも護らねばならない、この世界の秩序を」", "342000711_24": "「せめて、祈ることくらいだ。できることはね。\\n 僕らが彼女に対して……」", "342000711_25": "「ジャネット……ああ……あああああああ――ッ!」", "342000711_26": "(ジャネットは、小さく何かをつぶやいただけで、\\n 苦しむ様子も見せず、静かに赤い炎に呑まれていった)", "342000711_27": "(一時は局長を恨みもした。しかし、違う。\\n ジャネットの死は、私の責任だった……)", "342000711_28": "(――あの日、彼女が私に指揮官の素質の有無を聞いてきた時、\\n 『それは無理だ』と、返すだけでよかった……)", "342000711_29": "(それだけで、彼女はドンレミ村の娘として、平凡ながら\\n 幸せな一生を送ることができたはずだった……)", "342000711_30": "(あの丘で、故郷を慈しみながら、\\n 大好きな歌を口ずさんでいられたはずだった……)", "342000711_31": "(彼女を殺したのは、私なのだ……)" }