{ "337000741_0": "「いたッ! あそこだッ!!」", "337000741_1": "「配下の蛇を幾条にも編み上げて、\\n まるでマニピュレーターのように――」", "337000741_2": "「粗方ガレキの撤去された頃合いを見計らって、\\n 学院地下から何かを掘り起こそうとしているのかッ!?」", "337000741_3": "「――灰島さんッ!」", "337000741_4": "「麗しの兵器であるこのわたしを、\\n いまだその名で呼ぶなんて――地雷でも踏みに来たのかしら?」", "337000741_5": "「…………」", "337000741_6": "「確かに伝えたはずよ。\\n 殺さないであげるのは、完成のお礼――ただ一度きりと」", "337000741_7": "「伝えられた。伝わっている――\\n 確かに言葉は交わされて、灰島さんとは会話ができている」", "337000741_8": "「…………」", "337000741_9": "「この瞬間に、その余裕があるのなら――\\n わたしは灰島さんと話がしたい」", "337000741_10": "「…………………………………………………………………………\\n …………………………………………………………兵器と人が?」", "337000741_11": "「無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理\\n 無理無理無理無理無理無理無理怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い」", "337000741_12": "「…………」", "337000741_13": "「考えてもごらんなさい?\\n 世界では人と人すらまともに会話ができていないのよ?」", "337000741_14": "「だから相手を、知らない顔を、遠くの誰かを――\\n 妬んで恨んで傷つけて、傷つけられたと主張してッ!」", "337000741_15": "「悪びれもしないで、のうのうと――\\n 平凡と中庸を着飾って、善寄りの普通であると恥知らずなッ!」", "337000741_16": "「そんな、誰ともわかり合えない人間が、\\n 兵器と話したい? 理解したいの? 手を繋ぎたいの?」", "337000741_17": "「――あなた、本気で思っているの?」", "337000741_18": "「……本気で、後悔している……\\n できなかった過去を、いつまでも弱い自分を……」", "337000741_19": "「そんな荒唐無稽は――\\n せめて、その手で世界中の人と人を繋げてから夢見ることね」", "337000741_20": "「…………」", "337000741_21": "「黙って聞いてれば、好き勝手に――\\n おい、自称完成した兵器さん。知らないのなら教えてやる……」", "337000741_22": "「後悔を知る人間の踏み出す一歩は、\\n 兵器なんぞが想像するより、遥かに大きな一歩だ」", "337000741_23": "「特に立花の一歩を侮ってくれるな。\\n お前の語る荒唐無稽すら、いつかに毟り取るかもしれないぞ」", "337000741_24": "「……クリスちゃん……、……翼さん……」", "337000741_25": "「…………」", "337000741_26": "「ふーん、わからないわ。\\n だってわたし、兵器だもの」", "337000741_27": "「――そうッ!\\n 兵器だから、殺すか殺さないかしかできないのッ!」", "337000741_28": "「――ッ!?」", "337000741_29": "「だからもう、殺すね。\\n 手が離せないわたしに代わって、わたしの可愛い妹たちが」" }