{ "330000811_0": "最愛のひと", "330000811_1": "(この状況では、ジャンヌはいつネメシスの攻撃を\\n S.O.N.G.本部に向けて放ってもおかしくない……)", "330000811_2": "(残された時間は少ないわ……。ヘルメスの剣の起動実験を\\n 行う明日までに、行動を起こさないと)", "330000811_3": "(だけど、問題はやっぱりアルゴスの眼ね。この監視を\\n なんとかしなければ、こちらの動きが筒抜けだわ)", "330000811_4": "「きこ……ま……」", "330000811_5": "「ッ!」", "330000811_6": "(この声、さっきも聞こえた……。\\n やっぱり、空耳ではなかったのね)", "330000811_7": "「わた……声……」", "330000811_8": "(一体どこから……?)", "330000811_9": "「地下に……きて……」", "330000811_10": "(地下からッ!?\\n わたしを呼んでいる……?)", "330000811_11": "(……はっきりとは聞こえないけど、\\n わたしはこの声を知っている……)", "330000811_12": "(どこで聞いたのかしら。\\n 遠い昔、この記憶は……)", "330000811_13": "(――ッ!? 今のは一体……。\\n 思い出せそうなのに、何かが足りていない気がする)", "330000811_14": "「どうしたんだ?」", "330000811_15": "「……いえ、何も。それより随分と早いおかえりね。\\n 大事な聖遺物はちゃんと保管できたのかしら」", "330000811_16": "「ああ。お前は決して近づくなよ」", "330000811_17": "「近づいたとしても、あなたのアルゴスの眼があれば\\n すぐにわかるでしょ」", "330000811_18": "「わかっているのならそれでいい」", "330000811_19": "「ところで、あなたはヘルメスの剣を起動させて何に使うの?\\n アルゴスの眼とネメシスがあれば十分に思えるけれど」", "330000811_20": "「ヘルメスの剣は、その2つとは違う」", "330000811_21": "「わたしは、救わなければいけないものがある……」", "330000811_22": "「……ッ!」", "330000811_23": "(こんな表情もするのね。\\n そういえば、あの子と一緒にいたときはよく笑って――)", "330000811_24": "(あの子……?)", "330000811_25": "(そうだ。彼女はいつもあの子と一緒だった。\\n やっと思い出したわ……ッ!)", "330000811_26": "(ジャンヌはいつも彼女と一緒にいた。\\n そう……妹のメルと)", "330000811_27": "(わたしとセレナのように、本当に仲のいい姉妹だった)", "330000811_28": "(……でもおかしい。\\n 何故今ジャンヌは1人でいるの……?)", "330000811_29": "(それじゃあまるで、わたしと同じ……)", "330000811_30": "「……あなたの妹は、メルはどうしたの?」", "330000811_31": "「……」", "330000811_32": "「あなたたちはいつも一緒だったはずよ。\\n だけど、今は……」", "330000811_33": "「忘れていたくせに、今更気になったか?」", "330000811_34": "「それは……悪かったわ。\\n ひょっとしてあなたの妹も、セレナと同じように……」", "330000811_35": "「早合点をするな。メルは生きている」", "330000811_36": "「……今の状態では、死んだも同然だが……」", "330000811_37": "「どういうことか、聞いてもいいかしら」", "330000811_38": "「……気になるなら話してやる。\\n わたしが戦う理由を」" }