{ "333001011_0": "平和な世界を目指して", "333001011_1": "「なあ、先輩……、\\n S.O.N.G.の命令を無視したこと、おっさんにどう説明する?」", "333001011_2": "「どうもこうも、\\n あったことをそのまま説明するほかないだろうな」", "333001011_3": "「大丈夫ですよッ!\\n 翼さんとクリスちゃんは、困っていた人たちを助けたんですから」", "333001011_4": "「確かにそうかもしれないけど……」", "333001011_5": "「それよりも、早くシャロンちゃん来ないかなー」", "333001011_6": "「影護は、本当にシャロンを返してくれるのか?」", "333001011_7": "「はい、そう約束しました」", "333001011_8": "「しかし――」", "333001011_9": "「きっと、大丈夫ですよッ!」", "333001011_10": "「話していれば、ほら、来たぞ」", "333001011_11": "「八紘おじちゃーんッ!」", "333001011_12": "「シャロンッ!」", "333001011_13": "「シャロン、怪我は無いか?\\n 薬は?」", "333001011_14": "「大丈夫だよー」", "333001011_15": "「翼……」", "333001011_16": "「…………」", "333001011_17": "「無事に返してくれたこと、感謝する」", "333001011_18": "「ああ……」", "333001011_19": "「……では、行こうか、シャロン」", "333001011_20": "「うんッ!」", "333001011_21": "「……私たちは、先に行っている」", "333001011_22": "「――ッ!?\\n ちょっと、待ってください」", "333001011_23": "「いや、いいんだ」", "333001011_24": "「だが――」", "333001011_25": "「わかってるよ。\\n でも、それは今この場でじゃない」", "333001011_26": "「……そうか」", "333001011_27": "「お姉ちゃんたち、バイバイッ!」", "333001011_28": "「うん、バイバイッ!」", "333001011_29": "「またなッ!」", "333001011_30": "「影護の潜水艦で送ってもよかったけど、\\n 流石に関与が疑われると都合が悪いだろ?」", "333001011_31": "「悪い組織じゃないってわかってるけど、仕方ないよね……」", "333001011_32": "「ま、世間的にはテロリスト扱いのままだからな」", "333001011_33": "「いいよ。\\n 事実なんだし」", "333001011_34": "「改めてお礼を言わせてくれ。\\n 手を貸してくれて、本当にありがとうッ!」", "333001011_35": "「ありがとう」", "333001011_36": "「気にするな。\\n わたしたちも助けられたのだから」", "333001011_37": "「そういうこった」", "333001011_38": "「それから、絶唱の時に庇ってくれたこともッ!\\n 本当にありがとうッ!」", "333001011_39": "「うん、わたしも手を繋げて、嬉しかったよッ!」", "333001011_40": "「あの時の一撃があったから勝てたんだッ!\\n そうでなかったら、たとえオレたちでも勝てていたかどうか」", "333001011_41": "「こっちも、シャロンちゃんに薬を渡してくれてありがとうッ!」", "333001011_42": "「やっぱり、並行世界とはいえ、\\n 翼さんの優しいところは変わらないんだね」", "333001011_43": "「いろいろとあったが、安心した」", "333001011_44": "「じゃあ、記念に握手だッ!」", "333001011_45": "「ああ」", "333001011_46": "「おい、手、出せよ」", "333001011_47": "「……う、うん」", "333001011_48": "「なあ、今度、会ったら手合わせをさせてくれないか?\\n お前となら、いい修行になりそうだと思ってさ」", "333001011_49": "「望むところだ、と言いたいところだが……」", "333001011_50": "「ん? どうした?」", "333001011_51": "「わたしたちは、もう会わないほうがいいと思う」", "333001011_52": "「なッ!?」", "333001011_53": "「どうしてッ!?」", "333001011_54": "「やっぱり、悪党とは関われないか……」", "333001011_55": "「いや、そうではない。\\n 精神的リンクの問題だ」", "333001011_56": "「精神的リンク……?」", "333001011_57": "「なんだ、それは?」", "333001011_58": "「今まで、ゆっくり話す時間も無かったから、\\n 説明が出来なかったが――」", "333001011_59": "「……そういえば、ちょっと前に、急に気分が悪くなって、\\n 身体が重くなったことがあった」", "333001011_60": "「まさか、あれが……」", "333001011_61": "「精神的リンクの現象があれだけに留まるのかも不明だ」", "333001011_62": "「なにせ、わからないことだらけだからな。\\n だけど、よくない影響があるってことだけはハッキリしてる」", "333001011_63": "「せっかくこうして出会い、共に戦えたのだが、\\n お互いの安全を考えて、会わないほうがいいだろう」", "333001011_64": "「……そうなんだ」", "333001011_65": "「まあ、しょうがないか……」", "333001011_66": "「悪いな……」", "333001011_67": "「いや、あんたらのせいじゃないだろ」", "333001011_68": "「オレたちが言うことじゃないのかもしれないが、\\n そんな状態なのに、助けてくれて、ありがとな」", "333001011_69": "「本当に、ありがとう」", "333001011_70": "「予想外の邂逅ではあった。\\n それでも、わたしも、この出会いに感謝している」", "333001011_71": "「あたしもだ」", "333001011_72": "「そう言ってもらえると、うれしいよ。\\n オレたちもあんたらに出会えて本当によかった」", "333001011_73": "「わたしも、ありがとう……」", "333001011_74": "「そういえば、お前に1つ言いたいことがあったんだ」", "333001011_75": "「わたしに? なに?」", "333001011_76": "「……お前、もう少し自分を出した方がいいぞ」", "333001011_77": "「……そうかな?」", "333001011_78": "「言わなきゃ伝わらないことがあるって、\\n わかったんじゃないか」", "333001011_79": "「うん、そうかも」", "333001011_80": "「それから、その言葉遣いもなんとかした方がいいと思うぞ」", "333001011_81": "「でも、それを言うなら、クリスちゃんの言葉遣いも……」", "333001011_82": "「なんだ? あたしが育ち悪そうだってのかッ!」", "333001011_83": "「いったーッ!\\n 個性的だって言おうとしたんだよー」", "333001011_84": "「並行世界の自分に、閉口……」", "333001011_85": "「ハハ、流石クリス、うまいこと言うなー」", "333001011_86": "「全然うまくねーッ!」", "333001011_87": "「確かに、雪音も、こちらの雪音を見習って、\\n もう少しおしとやかにした方がいいかもな」", "333001011_88": "「な、先輩までッ!?」", "333001011_89": "「……フフッ」", "333001011_90": "「あ、あ、あ……あああーッ!」", "333001011_91": "「な、なにッ!? 何がどうしたのッ!?」", "333001011_92": "「いきなり大声をあげて」", "333001011_93": "「クリスがオレ以外に笑いかけるなんて……。\\n ショックだ……ッ!」", "333001011_94": "「そんなことない。気のせい」", "333001011_95": "「本当に仲いいな……」", "333001011_96": "「ここで1つ……言っておくことがある」", "333001011_97": "「どうした、急に改まって?」", "333001011_98": "「クリスの可愛さに関しては、うちのクリスが一番だッ!」", "333001011_99": "「…………え?」", "333001011_100": "「いや、それには物言いをつけさせてもらおう」", "333001011_101": "「なんだとッ!?」", "333001011_102": "「こちらの雪音も、その点については決して劣るものではない」", "333001011_103": "「そうそう。\\n うちのクリスちゃんも可愛さはすごいからねッ!」", "333001011_104": "「はあッ!? 一体何を――」", "333001011_105": "「特にこう、頼みごとをする際など、戸惑いながら『先輩』と\\n 呼びかけてくる雪音の破壊力はかなりのものだ……」", "333001011_106": "「先輩だってッ!? そんな呼び方もあったのかッ!?\\n オレも先輩に生まれていれば――ッ!」", "333001011_107": "「…………」", "333001011_108": "「そうそう。逆に後輩に偉ぶるクリスちゃんとかも、\\n なんだかこう、ほほえましいというか――」", "333001011_109": "「それに、ご飯を食べるときの雪音は、\\n 護ってやりたくなるような愛らしさが溢れでている」", "333001011_110": "「…………」", "333001011_111": "「オレのクリスだって負けないぞッ!」", "333001011_112": "「オレが出かけるとき、何も言わずに、後ろから服の裾を掴んで\\n ついてくる仕草に、何度オレは萌え死にしたことかッ!」", "333001011_113": "「な――ッ!?」", "333001011_114": "「おお……、それはやばいかも……」", "333001011_115": "「…………」", "333001011_116": "「…………」", "333001011_117": "「ど、どうしたのッ!? クリスちゃんッ!?\\n ザリガニみたいに顔が真っ赤だよッ!」", "333001011_118": "「うるせえッ!\\n あたしの顔を見てんじゃねーッ!」", "333001011_119": "「なんでーッ!?」", "333001011_120": "「クリスもどうしたッ!? 顔が真っ赤だぞ?\\n 風邪か? 風邪ならオレが――」", "333001011_121": "「……バカ、翼のバカ……バカ……バカ……」", "333001011_122": "「いたたー、どうしたんだクリス?」", "333001011_123": "「フフッ、\\n では、名残惜しいが、そろそろ行こうか」", "333001011_124": "「はい、司令とシャロンちゃんを待たせてますしね」", "333001011_125": "「それじゃ、お前らも元気でやれよ」", "333001011_126": "「さよならッ!」", "333001011_127": "「鍛錬をおこたるなよ」", "333001011_128": "「ああッ!」", "333001011_129": "「バイバイ」", "333001011_130": "「ねえ、クリスちゃん。\\n 服の裾を掴んでついてくるの、今度やってみてくれないかな」", "333001011_131": "「そのまま袖を引き抜いてやるよ」", "333001011_132": "「フフ……」", "333001011_133": "「さあッ、オレたちも帰ろうかッ!」", "333001011_134": "「うん……ッ!」" }