{ "373000421_0": "「――と、いう訳で、父上に会うことはできなかった」", "373000421_1": "「そんなに深刻なんですか?」", "373000421_2": "「シャロンの話では、命に別状はなくて\\n 意識さえ戻れば、問題ないそうだ」", "373000421_3": "「ふぅ……それはよかった。", "373000421_4": " いやッ! 良くはないですね……」", "373000421_5": "「翼さん、心配だとは思いますが、\\n あまり気を落とさないように」", "373000421_6": "「オレは大丈夫ッ!\\n 父上が倒れた時は焦ったけど……」", "373000421_7": "「オレの父親なんだ、あんな怪我で死ぬ玉じゃないッ!」", "373000421_8": "「翼、空元気なの、分かってるよ」", "373000421_9": "「う……」", "373000421_10": "「仕方ないよね。大事な人が大怪我をしたんだから」", "373000421_11": "「だから、もっとわたしたちを頼って。\\n 前にも言ったでしょ?」", "373000421_12": "「……ごめん。また1人で抱え込もうとしてた、かも」", "373000421_13": "「フフ、やっぱりいいコンビなんだね」", "373000421_14": "「ああ、そうだろ?」", "373000421_15": "「……司令官が復帰するまでの、\\n 二課の動きが心配ですね」", "373000421_16": "「代理として来た司令官は、随分冷たい印象だって\\n シャロンは言ってたな……」", "373000421_17": "「シャロンの事を変に利用するような\\n 人じゃなければいいけど……」", "373000421_18": "「もしそんな事になれば、\\n 我々の手で救出しましょう」", "373000421_19": "「今は父上がシャロンの親代わりみたいなもんだから……。\\n こんな状況になると、シャロンも心配だ」", "373000421_20": "「親代わり……。\\n いったいあの子に、何があったの?」", "373000421_21": "「あの子は、血縁上の父親に『道具』たれと望まれた娘だった。\\n たくさんの姉妹と共に、人為的に聖遺物と融合させられて……」", "373000421_22": "「そんな……」", "373000421_23": "「ああ。あいつのオヤジは自分が人類を救済するって望みに\\n とりつかれたやばいヤツで、そのために娘を利用したのさ」", "373000421_24": "「聖遺物ヴィマーナ。その身に数多のオートマシンを宿した\\n 空飛ぶ戦艦を、意のままにするためにな」", "373000421_25": "「それで、機械を意のままに操る聖遺物と融合……」", "373000421_26": "「姉妹の中で最もヤントラ・サルヴァスパに適合したのがシャロン。\\n そんな彼女たちだったんだけど、ある日、脱走したの」", "373000421_27": "「シャロンは姉妹の中でただ一人捕獲されず、\\n 逃げ切ったけど、行くあてなんかなかった」", "373000421_28": "「で、途方に暮れていたシャロンを立花響が\\n 最初に保護したんだとよ」", "373000421_29": "「あいつ、シャロンが心を開けるようになるまで\\n 一緒に住んで、勉強まで教えてたらしいぞ?」", "373000421_30": "「そうか……」", "373000421_31": "(もう1人のわたしは本当に、いろいろな並行世界で\\n 差し伸ばされた手をつかみ、人の心を絆しているんだな)", "373000421_32": "(きっと、わたしが知らないところで、\\n もっとたくさん……)", "373000421_33": "「とはいえ、あいつは自分の並行世界に帰らなきゃ\\n ならなかったからな」", "373000421_34": "「それからは父上が親代わり……保護者になったんだ」", "373000421_35": "「シャロンと別れて以来、もう1人のわたしは、\\n この世界に来ていないの?」", "373000421_36": "「たまに来てるみたいだったけど、\\n そんなに頻繁には来れないんじゃないか?」", "373000421_37": "「そうか……。なら、シャロンには悪いことをしたな」", "373000421_38": "「どういうこと?」", "373000421_39": "「だってほら、わたしは立花響と見た目は同じでしょ?\\n でも、中身は大違いだ」", "373000421_40": "「こんなわたしと会ったせいで、シャロンが\\n 余計に寂しくなっちゃったんじゃないかと……」", "373000421_41": "「おわびに、もしもう1人のわたしに会ったら、\\n もっとこの世界に顔を出すように伝えるよ」", "373000421_42": "「フッ……」", "373000421_43": "「なに……?」", "373000421_44": "「いや、確かにシャロンが大好きなのは\\n あっちの響だけどさ」", "373000421_45": "「そんなに卑屈になることないと思うぞ?」", "373000421_46": "「え……?」", "373000421_47": "「うん、そんな風にシャロンのことを考えるヒビキも、\\n 十分優しくて、お人好し」", "373000421_48": "「ああ。一緒に戦ってもそう感じる。\\n あんたはいつも、誰かのために戦ってるみたいだ」", "373000421_49": "「ましてや、1人で人助けの旅だなんて、\\n 普通はできないよな……」", "373000421_50": "「並行世界の自分とは、やっぱりどこかで似ちゃうのかな。\\n 性格は違っても、根っこの部分が」", "373000421_51": "「……そうかな?」", "373000421_52": "(わたしは、少しでも近づけているのかな?\\n わたしを助けてくれた、もう1人の自分に……)", "373000421_53": "「警報……ッ!?」", "373000421_54": "「なにがあった?」", "373000421_55": "「黒いレーベンガーが市街地に出現しました」", "373000421_56": "「あいつら、また出やがったかッ!」", "373000421_57": "「オートマシンはまだ対応していないようです。\\n このままでは被害が広がってしまいます」", "373000421_58": "「……分かりました。出撃します」", "373000421_59": "「わたしも行きますッ!」", "373000421_60": "「研究所を狙った時とは違い、\\n 今回は無差別な攻撃のようです」", "373000421_61": "「クリスさんの報告にあった、みなさんを誘い込むような\\n 動きが再び行われる可能性もあります」", "373000421_62": "「敵の目的が不明瞭ですので、\\n 気を付けて対応に当たってください」", "373000421_63": "「了解だッ!\\n ヤツらの思い通りにはさせないッ!」" }