{ "402000231_0": "「おっさん」", "402000231_1": "「クリスくんか。どうした?」", "402000231_2": "「ああ、こっちでちょっと動きがあって、\\n 世界蛇のことで相談に来たんだ」", "402000231_3": "「世界蛇の……そうか。\\n わかった。了子くんを呼び出すから、ちょっと待ってくれ」", "402000231_4": "「出ないな、気づいていないのか」", "402000231_5": "「どこにいるんだ?」", "402000231_6": "「研究室にいるはずなんだが、\\n 最近はこうして籠っていることが多くてな」", "402000231_7": "「なんでも、世界蛇の一件の後から気になることがあるらしい」", "402000231_8": "「手伝えるなら手伝いたいものだが、\\n 俺は研究方面ではほとんど力になれないからな」", "402000231_9": "「呼びに行けないのか?」", "402000231_10": "「行けなくもないが、鬼気迫るといった様子でな……。\\n なるべく邪魔はしたくないと思っている」", "402000231_11": "「そっか。ならおっさんだけでも――」", "402000231_12": "「気づいたようだ。ちょっと待っていてくれ」", "402000231_13": "「一体なんの用?\\n どうでもいい用件なら、即切るわよ」", "402000231_14": "「ああ。それなんだが、クリスくんが来ている。\\n なんでも世界蛇に関係することで相談があるらしい」", "402000231_15": "「……そういうことは早く言いなさい。\\n すぐそちらに行くわ」", "402000231_16": "「来てくれるようだ。\\n ところでウェル博士はどうする?」", "402000231_17": "「必要なら彼にも連絡をしてみるが――」", "402000231_18": "「今はいい。\\n もし必要なら後で知らせておいてくれ」", "402000231_19": "「わかった」", "402000231_20": "「待たせたかしら?」", "402000231_21": "「いや、忙しそうなところ悪いな」", "402000231_22": "「構わないわ。\\n 世界蛇のことで来たんでしょ。話して頂戴」", "402000231_23": "「ああ、それじゃ、早速だけど、\\n この前、こっちにスクルドっていう組織のやつが来て――」", "402000231_24": "「――ってことで、そのミョルニルってのを探すのを\\n 手伝うことになったんだ。知らないか?」", "402000231_25": "「ミョルニルか……いや、聞いたことはないな」", "402000231_26": "「……ミョルニル。それは『世界蛇を殺す』聖遺物なのね?」", "402000231_27": "「そうらしい。とは言え、今の世界蛇は強大になりすぎて、\\n それでも、容易にはいかなそうだけどな」", "402000231_28": "「…………」", "402000231_29": "(目的と効果の乖離……。世界蛇側の変化、もしくは聖遺物側の\\n ポテンシャルが引き出されていないのか……)", "402000231_30": "(しかし対抗として作られた物なら、それ相応の効果や特性も\\n 付与されているはず。必要としているのはそれが理由……?)", "402000231_31": "「なあ、どうかしたか?」", "402000231_32": "「どうって?」", "402000231_33": "「考え込むってことは、もしかして知ってるのか?」", "402000231_34": "「知らないわ。ミョルニルという聖遺物は、\\n この世界の私の記憶には無いから」", "402000231_35": "「そうか……」", "402000231_36": "(世界を食らう蛇とそれに対抗するための聖遺物。\\n それは一体なんのための物なのか……)", "402000231_37": "(私の記憶に無いものだらけ……、\\n ……心から不快ね)", "402000231_38": "(敵にいるフィーネ。それは私とは違う。\\n いえ、並行の世界にいる私、その誰とも恐らく違う……)", "402000231_39": "「こういうのも、自分に腹が立つって言うのかしらね……」", "402000231_40": "「……どうかしたのか?」", "402000231_41": "「なんでもないわ。それより、あなたはすぐ帰るの?」", "402000231_42": "「ああ。とりあえず収穫はなかったって報告もあるし、\\n そのつもりだけど」", "402000231_43": "「ちょっと待ってなさい。渡す物があるわ」", "402000231_44": "「渡す物……?」" }