{ "340000111_0": "2つの出会い", "340000111_1": "「――、――――♪」", "340000111_2": "(イヤホンから聴こえる、ママの歌声――)", "340000111_3": "(この歌を聴いて、一緒に唄っているときだけ、\\n 忘れることができる。悲しいことも、嫌なことも全部……)", "340000111_4": "(ママもパパもいなくなったわたしにはもう、この歌しか……)", "340000111_5": "「誰……ッ!?」", "340000111_6": "「……」", "340000111_7": "「猫……。\\n どうしたの? お腹すいた?」", "340000111_8": "「……」", "340000111_9": "「――ッ! 怪我をしてるの?」", "340000111_10": "「大変……、\\n わたしの部屋で、手当てしてあげるね」", "340000111_11": "「ここがわたしの住んでる部屋だよ。\\n 怪我してるとこ、消毒するね」", "340000111_12": "「……」", "340000111_13": "「静かにしてて。\\n うるさくすると、伯母さんが起きちゃうから」", "340000111_14": "「……伯母さんはね、\\n わたしのことが嫌いだから、よく叱るの……」", "340000111_15": "「だけど、会わないようにして、大人しくしてれば平気。\\n 怒られないし、叩かれないよ」", "340000111_16": "「……」", "340000111_17": "「わたしのパパとママは、死んじゃったんだ。\\n だから、わたしの居場所は、ここしかないの」", "340000111_18": "「友達だって、1人もいない……」", "340000111_19": "「……」", "340000111_20": "「キミも独りぼっち?\\n だったら、わたしと一緒だね」", "340000111_21": "「独りぼっちは、寂しいよね……」", "340000111_22": "「……だったら、私と友達にならない……?」", "340000111_23": "「――ッ!?\\n い、今の声って……?」", "340000111_24": "「私よ。私が喋ったの」", "340000111_25": "「猫が喋ったッ!?」", "340000111_26": "「大きな声を出しちゃダメ。\\n 怒られちゃうんでしょ?」", "340000111_27": "「う、うん……。\\n すごい。わたし、猫とお話してる。まるで魔法みたい……」", "340000111_28": "「フフ、その通りよ。\\n 私は魔導師だもの」", "340000111_29": "「魔導師って、魔法使いのこと?\\n じゃあキミ、魔法が使えるの……ッ!?」", "340000111_30": "「ええ。今この姿になっているのも、魔法の力よ」", "340000111_31": "「で、でも……。\\n 魔法なんてあるわけないって……」", "340000111_32": "「あら、信じられない?\\n 簡単なものなら、今見せてあげるわ」", "340000111_33": "「すごい……魔法は本当にあったんだ……ッ!\\n パパが言ってたことは、嘘なんかじゃなかった……」", "340000111_34": "「痛ッ――」", "340000111_35": "「だ、大丈夫? 傷が痛むの……?」", "340000111_36": "「大丈夫よ……」", "340000111_37": "「……実は私もね、独りぼっちなの。\\n 悪い人から逃げて、さまよって……」", "340000111_38": "「キミも、独り……」", "340000111_39": "「怪我をしてしまって、もうダメだと思ったとき、\\n あなたが助けてくれたのよ。ありがとう、えっと――」", "340000111_40": "「わたしは、夢野みこと」", "340000111_41": "「ありがとう、みこと。\\n 私はアーテルよ」", "340000111_42": "「アーテル、さっき言ったことは、本当?\\n わたしと友達になってくれるって」", "340000111_43": "「もちろんよ。私も心細かったから、\\n みことが友達になってくれたら嬉しいわ」", "340000111_44": "「突然現れた私にこんなことを言われても、\\n みことは困るかもしれないけれど……」", "340000111_45": "「パパが言ってたんだ。魔法は素敵な力なんだって。\\n だから、わたしは魔法使いのアーテルを信じるよ」", "340000111_46": "「……そう、素敵なお父様だったのね」", "340000111_47": "「わたしが悪い人からアーテルを護ってあげる」", "340000111_48": "「ありがとう。これからよろしくね、みこと」", "340000111_49": "「うんッ!」", "340000111_50": "「……」" }