{ "339000711_0": "共同戦線の末に", "339000711_1": "「早くあの子を助けないと……ッ!」", "339000711_2": "「うん、だけど、焦りは禁物」", "339000711_3": "「今は少しでも休んだ方がいいデスよ。\\n マリア、昨日もほとんど寝てなかったじゃないデスか」", "339000711_4": "「なんであいつらがいるんだ?」", "339000711_5": "「昨夜、エドさんから連れてくるように言われて……」", "339000711_6": "「意見の対立はあったとしても、\\n 別の世界からの客人であることに変わりないって」", "339000711_7": "「何を考えている?\\n まあ、また好き勝手に動き回られるよりマシなのか……」", "339000711_8": "「やっぱり、ちゃんと見張っておけってことなんですかね?」", "339000711_9": "「ちなみに、ボクも呼ばれてるんですよ」", "339000711_10": "「貴様もか……。\\n 一体どういうつもりなんだ……?」", "339000711_11": "「わたしたちが歓迎されていないのはわかっています」", "339000711_12": "「いや、まあ……アハハ……」", "339000711_13": "「それでも、\\n 一緒に、あの子を助ける方法を探してはくれませんか?」", "339000711_14": "「助けるだと?\\n 殺す、の間違いじゃないのか?」", "339000711_15": "「お願いします。\\n 平和な暮らしを望む人たちを守る、科学特捜隊として――」", "339000711_16": "「…………」", "339000711_17": "「そりゃ、オレたちだって……、\\n 助けられるもんなら助けたいとは思うけど……」", "339000711_18": "「ならば、この情報が一助になるかもしれないな」", "339000711_19": "「エドさんッ! やっと来てくれた……」", "339000711_20": "「随分と待たせるじゃないか」", "339000711_21": "「調査が思いのほか手間取ってね。\\n ――だが、確証は得た」", "339000711_22": "「あの子の居場所がわかったんですかッ!?」", "339000711_23": "「それについては、まだだ。\\n ノラザム星人の居場所を掴むのは簡単ではない」", "339000711_24": "「そうですか……」", "339000711_25": "「わかったのは、今回の異変についてだ。\\n 目星を付けていた通り、イフロ星人に原因がある」", "339000711_26": "「やはり抹殺しておくべきだったな」", "339000711_27": "「まだあの子が悪いと決まったわけではありませんよね?」", "339000711_28": "「悪意があったかどうかは別として、\\n 異変の原因はイフロ星人の歌にある」", "339000711_29": "「イフロ星人は平和的な種族……、\\n 歌を愛し、唄うことによって感情を伝え合う」", "339000711_30": "「あんな破壊音波で意思を伝え合うのか?\\n なにが平和的だ」", "339000711_31": "「あれは、本来の能力ではない。\\n 改造され、後天的に付与された能力なのだ」", "339000711_32": "「改造って、誰がそんなことを――ッ!?」", "339000711_33": "「ノラザム星人だ」", "339000711_34": "「あいつが……」", "339000711_35": "「利己的でモラルのない連中だ。\\n 以前、違法に地球へ侵入した一団は始末したはずだったが……」", "339000711_36": "「ノラザム星人は、様々な生物を\\n 自らの道具として改造する高度な技術を有している」", "339000711_37": "「そういえば妙なことを言いながら、\\n イフロ星人を連れ去っていきましたね……」", "339000711_38": "「聴いた者に癒しをもたらすイフロ星人の歌を、\\n ノラザム星人が、破壊音波に変えたのだ」", "339000711_39": "「そしてどうやら音波によって破砕したものを\\n エネルギーに転換して溜め込んでいるようなのだ」", "339000711_40": "「観測された時空間の歪みは、\\n 物質をエネルギーに転換する際に引き起こされている」", "339000711_41": "「このままエネルギーを溜め込んでいけば、\\n イフロ星人は時空を崩壊させる特異点となるだろう」", "339000711_42": "「それなら唄わなければいいんじゃ……」", "339000711_43": "「イフロ星人にとって唄うことは、\\n 会話に等しい。抑えきれるものではない」", "339000711_44": "「感情を歌で伝えるんだものね……」", "339000711_45": "「そうじゃなくても、唄うのが好きなら、\\n 我慢なんてできないデスよッ!」", "339000711_46": "「時空を崩壊させる歌……、\\n それが別の世界との繋がりを作ったのか」", "339000711_47": "「その脅威を、ギャラルホルンが警告して――?」", "339000711_48": "「恐ろしく、そして、とてつもない可能性を秘めた能力だ。\\n もっとも、ノラザム星人がそこまで把握しているのかは不明だが」", "339000711_49": "「あの子は、自分の意思で破壊を広げているわけではないんです。\\n ずっとずっとノラザム星人に操られて――」", "339000711_50": "「状況証拠から、その話には信憑性があると判断する。\\n だが――」", "339000711_51": "「あの子は被害者ですッ!\\n しかも今、助けを求めて苦しんでいるんですッ!」", "339000711_52": "「助けてあげられないんデスか……?」", "339000711_53": "「残念ながら、それは難しい」", "339000711_54": "「様々な影響を鑑みると、\\n 私もイフロ星人を排除することは妥当だと考えた」", "339000711_55": "「そんな……。\\n それが科学特捜隊の出した答えなんですか……」", "339000711_56": "「…………」", "339000711_57": "「助けられる可能性があるのなら、検討しても構わない」", "339000711_58": "「もっともノラザム星人も同時に相手にすることになるが。\\n 君たちに、勝利の算段はあるのかね……?」", "339000711_59": "「それは……」", "339000711_60": "「…………」", "339000711_61": "「諸星さん、どうしたんですか……?」", "339000711_62": "「今回の騒ぎに、\\n 僕の不始末も関係していたとはな……」", "339000711_63": "「あのノラザム星人の生き残りも、抹殺しなければならない」", "339000711_64": "「単なる歌好きのイフロ星人に、\\n 世界を壊す力を与えちゃうんですからね」", "339000711_65": "「ああ。放っておけば、さらに多くの異星人が改造され、\\n 奴の手足として使われるだろう」", "339000711_66": "「ノラザム星人の悪意こそが、\\n 我々にとって真の脅威なのかもしれないな」" }