{ "339000611_0": "迫りくる真の敵", "339000611_1": "「追手は、いないみたいね」", "339000611_2": "「大丈夫デス。あいつらは撒けたみたいデスよ」", "339000611_3": "「油断しちゃダメだよ」", "339000611_4": "「わかってるデスって」", "339000611_5": "「ここは人が多すぎるわ。他の場所に移った方がいいわね」", "339000611_6": "「もう少しだけ頑張れる?」", "339000611_7": "「う、うん……」", "339000611_8": "「ここは……、\\n わたしたちが最初に来たところだね」", "339000611_9": "「あのスタジアム、修復もせずに\\n あのままにされているみたいデス」", "339000611_10": "「ちょうどいいわ、この辺りなら人通りも少ないし、\\n スタジアムの中に隠れましょう……」", "339000611_11": "「改めて見るとボロボロね」", "339000611_12": "「うん、直すのも大変そう……」", "339000611_13": "「あの時は派手にやりあったデスからね」", "339000611_14": "「…………」", "339000611_15": "「あッ――べ、別に悪い意味で言ったんじゃないデスよッ!\\n おかげで、ちょうどいい隠れ場所になったデスし」", "339000611_16": "「ええ。勝手に使ってしまって悪いけれど、\\n 少しだけ休ませてもらいましょう」", "339000611_17": "(仮にこの子の擬態が解かれても、ここなら大丈夫だわ)", "339000611_18": "「ごめんなさい……」", "339000611_19": "「謝らなくてもいいのよ。それより……、\\n ここで初めて会った時のこと覚えている?」", "339000611_20": "「……わからない」", "339000611_21": "「忘れちゃったんデスかね?」", "339000611_22": "「昨日のことだよ。そんな簡単に忘れちゃうかな?」", "339000611_23": "「……そうね」", "339000611_24": "「もしかして、今まで戦ったことも覚えてないのかしら?」", "339000611_25": "「たたかう……?」", "339000611_26": "「わたしたちと、ここで何かしたことを覚えてる?」", "339000611_27": "「ううん……覚えてない」", "339000611_28": "「やっぱり……おかしいと思ったわ」", "339000611_29": "「もしこの子が、わたしたちのことを覚えていたら、\\n 路地裏で出会った時に気づいているはずよ」", "339000611_30": "「そういえば、そうデス」", "339000611_31": "「普通に考えれば、戦った相手と\\n 仲良く歌を唄うなんて無理だもんね」", "339000611_32": "「ということは、元の異星人の姿に戻っている時は\\n 記憶がなくなるってことなのかしら?」", "339000611_33": "「覚えてる時もある……、\\n でも、変な夢の中にいるみたい……」", "339000611_34": "「やっぱり、操られてる間の意識はないんだ」", "339000611_35": "「あの老人が、この子に暴れるように仕向けているのね」", "339000611_36": "「許せないデスよッ!」", "339000611_37": "「…………ッ」", "339000611_38": "「気にしないでいいのよ……。\\n あなたは悪くないんだから……」", "339000611_39": "「…………うぅ」", "339000611_40": "「泣かないで……」", "339000611_41": "「わたしが大声出したのが悪かったデス……」", "339000611_42": "「切ちゃんのせいじゃないよ……」", "339000611_43": "「……そうね。じゃあ、こうしましょう」", "339000611_44": "「~~♪ ~~♪」", "339000611_45": "「えッ……」", "339000611_46": "「ほら、一緒に唄いましょう」", "339000611_47": "「あ…………」", "339000611_48": "「わたしたちも」", "339000611_49": "「唄うデスよッ!」", "339000611_50": "「フフ……」", "339000611_51": "(良かった……笑顔に戻ってくれて……)", "339000611_52": "「――それじゃ、あなたはずっとここに隠れていたの?」", "339000611_53": "「うん……」", "339000611_54": "「ここなら、誰にも見つからない……、\\n でも、1人だから……」", "339000611_55": "「少しだけ寂しい……」", "339000611_56": "「――ッ」", "339000611_57": "「1人でこんな場所にいて……、\\n 寂しくないはずがないわよね……」", "339000611_58": "「今は嬉しい……」", "339000611_59": "「えッ……?」", "339000611_60": "「お姉ちゃんたちがいるから……」", "339000611_61": "「…………」", "339000611_62": "「ええ、あなたは1人じゃないわ」", "339000611_63": "「うん……」", "339000611_64": "「そうデスよ……」", "339000611_65": "「ありがとう……」", "339000611_66": "「…………」" }