{ "328000411_0": "草薙と緒川家", "328000411_1": "「開発中だったRN式の天羽々斬が奪われただと?」", "328000411_2": "「それも、向こうの世界の緒川さんに?」", "328000411_3": "「ああ、最初は偽名を名乗ってたけど」", "328000411_4": "「先輩と戦ってる時に使った体術や忍術も、まんまだった」", "328000411_5": "「緒川さんが敵になるなんて……」", "328000411_6": "「ま、まだ敵かどうかはわからないよッ!」", "328000411_7": "「そうね。でも相手の目的がわからない以上、\\n 今後も対立する可能性は計算に入れておかないと」", "328000411_8": "「そうデスね……」", "328000411_9": "「そういや、こっちの方の体調は大丈夫なのか」", "328000411_10": "「うん、少し休んだら楽になったって」", "328000411_11": "「そっか。ならよかった」", "328000411_12": "(……タイミングがタイミングなだけに、\\n やっぱ並行世界の影響だよな?)", "328000411_13": "「とにかく、事態が事態だ。\\n こちらの緒川本人も交えて情報を整理するとしよう」", "328000411_14": "「なるほど、向こうの世界でそんなことが……」", "328000411_15": "「なんというか……申し訳ありません」", "328000411_16": "「緒川さんのせいじゃないですよッ!」", "328000411_17": "「わかっているんですけどね。\\n 少々心苦しく感じてしまいます」", "328000411_18": "「向こうのお前が口にした、\\n 草薙という言葉に何か心当たりはあるか?」", "328000411_19": "「草薙の関係者か? とか言ってたから、組織の名前っぽいな」", "328000411_20": "「草薙という組織名ですか……」", "328000411_21": "「いえ、残念ながら、僕も聞いたことがありません」", "328000411_22": "「緒川さんも?」", "328000411_23": "「となると、こちらの世界には存在していない組織名なのかしら?」", "328000411_24": "「どこかの段階でこっちと歴史が変わってるのかな……?」", "328000411_25": "「ですが向こうの僕も同じ緒川家の様ですし、こちらの世界のもので\\n よろしければ、緒川家の情報を提供しましょう」", "328000411_26": "「緒川家の?」", "328000411_27": "「情報デス?」", "328000411_28": "「ええ。過去、緒川家が隠れ家として使っていた場所や符丁、\\n 歴代の首領の名前、仕えていたとされる主……」", "328000411_29": "「そんな大事な情報、教えちゃって大丈夫なんですか?」", "328000411_30": "「当然、世を忍ぶ組織ですので、お伝えできない情報も\\n ありますが、可能な限り協力させてください」", "328000411_31": "「こちらの世界の情報の内、少しでも共通点となっているものが\\n あればいいのですが」", "328000411_32": "「すまんな。それを元にこちらの世界でも\\n 草薙や関係ありそうな事柄について当たってみよう」", "328000411_33": "「ああ、頼んだ」", "328000411_34": "「それから、僕以外にも忍者を相手取らないといけないようですし、\\n 戦闘での忍者への対処法を改めてお教えしましょう」", "328000411_35": "「そいつは助かる」", "328000411_36": "「それ、わたしたちにも教えてくださいッ!」", "328000411_37": "「緒川、頼む。今後、装者の誰が向こうの世界に行くか\\n わからんからな」", "328000411_38": "「わかりました。それでは参りましょうか」", "328000411_39": "「はああ――ッ!!」", "328000411_40": "「フッ!」", "328000411_41": "「くッ! 当たらないッ!?」", "328000411_42": "「忍びは強力自慢の一部を除いて、\\n 筋力頼みの戦いはしないものです」", "328000411_43": "「相手の攻撃の芯をずらすことで威力を減殺すると共に、\\n 相手の体勢を崩させます」", "328000411_44": "「はああ――ッ!!」", "328000411_45": "「なんデスとッ!? こっちもスカされたデスッ!」", "328000411_46": "「そんな相手、どうすれば当てられるんデスかッ!!」", "328000411_47": "「攻撃の呼吸やタイミングを相手に読まれないこと、\\n または相手の対応力を越える速度で繰り出すことです」", "328000411_48": "「だったら一気呵成にぶちかますッ!」", "328000411_49": "「切歌ちゃんッ! 一緒に行くよッ!」", "328000411_50": "「わかったデスッ!」", "328000411_51": "「おおお――ッ!!」", "328000411_52": "「はああ――ッ!!」", "328000411_53": "「その一方で、忍びがこうして受け身に回っている時は要注意です」", "328000411_54": "「えッ!?」", "328000411_55": "「な、なんデス?」", "328000411_56": "「あわわわわッ!?\\n なんでこんなところにロープがッ!?」", "328000411_57": "「いつの間にデスッ!?」", "328000411_58": "「こんな風に、裏で何を仕掛けているかわかりませんからね」", "328000411_59": "「響ッ!」", "328000411_60": "「助けないとッ!」", "328000411_61": "「わたしがロープを切るから2人を受け止めてッ!」", "328000411_62": "「わかりましたッ!」", "328000411_63": "「そして忍びは――」", "328000411_64": "「えッ!?」", "328000411_65": "「う、後ろにッ!」", "328000411_66": "「捕らえた獲物を餌にして、残りの敵も確実に仕留めます」", "328000411_67": "「ああ――ッ!?」", "328000411_68": "「きゃあ――ッ!」", "328000411_69": "「おふたりは前回もですが、特に甘さが目立ちます。\\n 付け入られる隙となりますので、気をつけてください」", "328000411_70": "「エグい真似してくれるわね……」", "328000411_71": "「相手は忍び……。\\n 彼らに卑怯・姑息という概念は存在しないと思ってください」", "328000411_72": "「如何なる手を用いてでも、相手の虚を突き、心を追い込み、\\n 確実に仕留める――」", "328000411_73": "「そうして影の世の戦いを制してきたのが、忍びなのです」", "328000411_74": "「くッ……強力な力で圧倒してきたこれまでの敵とは、\\n 勝手があまりに違いすぎるわ」", "328000411_75": "「こんなん、どうすりゃいいんだ……」", "328000411_76": "「己自身をも俯瞰し、周囲に気を配り、\\n 状況を冷静に見定めることが肝要です」", "328000411_77": "「そうすることで相手が意図する裏を読み、流れに乗らず、\\n 反対に覆すこともできるようになるはず」", "328000411_78": "「己をも俯瞰……この間おっさんが言ってたのと同じか」", "328000411_79": "「常に意識して修練と実戦を続けている内に、\\n いつしかそれが自然の境地となります」", "328000411_80": "「でも、一体どれだけ経験を重ねればそんな境地まで……」", "328000411_81": "「既に幾度もの激しい戦いをくぐり抜けてきたみなさんなら、\\n ふとしたきっかけでできるようになるはず――」", "328000411_82": "「いえ……なってもらわなくてはいけません」", "328000411_83": "「わかったよ。\\n やるしかないなら……腹据えてやってやるッ!」", "328000411_84": "「その意気です。それでは続けましょうかッ!」" }