{ "328000121_0": "(まだか……)", "328000121_1": "(このままでは先に奴らに……)", "328000121_2": "「…………」", "328000121_3": "「ッ!? 誰だッ!!」", "328000121_4": "「やっと見つけました」", "328000121_5": "「兄者ッ!」", "328000121_6": "「間に合ったみたいですね」", "328000121_7": "「ああ、本当によかった……」", "328000121_8": "「何があったんですか? 緊急事態というのは」", "328000121_9": "「そうなんだ。急ぎ兄者に伝えたいことが」", "328000121_10": "「伝えたいこと?」", "328000121_11": "「ああ、実は――」", "328000121_12": "「うッ!?」", "328000121_13": "「ッ!? どうしたんですッ!?」", "328000121_14": "「これは、含み針? しかも毒が塗られて――」", "328000121_15": "「忍びの者ッ!?」", "328000121_16": "「……あなたたちの所属を聞かせていただきます」", "328000121_17": "「問答無用ッ! 死ねぇッ!」", "328000121_18": "「くッ。やむを得ません……ッ!」", "328000121_19": "「ぐああああ――ッ!」", "328000121_20": "「フ……なるほど。\\n 流石は先代の弟君、というべきか」", "328000121_21": "「まさか……あなたたちは、草薙の?\\n 兄が先代とは、どういう意味ですか」", "328000121_22": "「フフ……俗世に下りて家を捨てた貴様は、\\n 知らなくても当然のことよな」", "328000121_23": "「何者……ッ!」", "328000121_24": "「何者とはご挨拶だな。お前の元同胞のオロチだよ。\\n 今はこの俺が草薙の頭領だがな」", "328000121_25": "「なぜ、あなたが……?」", "328000121_26": "「簡単な話だ。\\n お前の兄は、死んだということだ」", "328000121_27": "「なッ!? 兄上が……」", "328000121_28": "「そうだ。よって、俺が跡目を継いだというわけよ」", "328000121_29": "「ですが、それと弟を狙うことにどんな関係が?」", "328000121_30": "「其奴は知ってはならぬことを知ってしまった」", "328000121_31": "「忍びの里の秘に触れる……。\\n それ即ち、死に直結することを知らぬお前ではあるまい」", "328000121_32": "(口封じ? 一体何を知ってしまったというんだ?)", "328000121_33": "「だが、幸いお前はまだ何も知らぬようだ。\\n 其奴を渡せば、お前の命だけは助けてやろうではないか」", "328000121_34": "「……お断りします。\\n 己の命惜しさに弟を見殺しになどできません」", "328000121_35": "「フ……やはりそう答えるか。相も変わらず惰弱な奴よ」", "328000121_36": "「それでも草薙の忍びか?\\n 先代も先々代も、草場の影で泣いていような」", "328000121_37": "「それ以上、余計なことをしゃべらない方が身のためですよ」", "328000121_38": "「フ……まあ、いい。茶番はこれくらいにしようか」", "328000121_39": "「茶番……?」", "328000121_40": "「ああ。どう答えようとも、\\n 端からお前の命も貰い受ける心算だったのだ」", "328000121_41": "「なッ!?」", "328000121_42": "「俺が頭領となった今、前頭領である緒川の血族に\\n 生きていてもらっては困るのだよ」", "328000121_43": "「……弟が僕を呼び出すことを読んだ上で\\n 敢えて泳がせていたということですか」", "328000121_44": "「当然だろう。ロクな技も修めていないこんな小僧1人、\\n 始末しようと思えば、とうの昔にできたのだ」", "328000121_45": "「頭の黒い大きなネズミがもう1匹、\\n ノコノコと現れるのを待っていたというわけよ」", "328000121_46": "「姑息な真似を……」", "328000121_47": "「忍びがそれを言うのか。\\n 非情に徹してこそ忍びの本懐というものだろうに」", "328000121_48": "「……」", "328000121_49": "「ともあれ。お前たちさえ死ねば、緒川の正統の血は絶える」", "328000121_50": "「そうすれば、我が支配は盤石なものとなるッ!」", "328000121_51": "「さあ、その命ッ! 捧げてもらおうかッ!」", "328000121_52": "「く……ッ!?」", "328000121_53": "(多勢に無勢、1人でこれだけを相手にするのは無理ですね)", "328000121_54": "(なんとか弟を連れて、切り抜けなければ――)", "328000121_55": "「はッ!!」", "328000121_56": "「む、消えただとッ!?」", "328000121_57": "「あそこだッ!」", "328000121_58": "「オロチ様、如何いたしましょうッ?」", "328000121_59": "「追えッ! なんとしても彼奴を討ち取るのだッ!」", "328000121_60": "「ははッ!!」" }