{ "314000511_0": "新たなる力", "314000511_1": "「失礼します」", "314000511_2": "「こんにちはデス……」", "314000511_3": "「いらっしゃい」", "314000511_4": "「翼さんたちの――。\\n 向こうの世界の状況、何か入ってきたデスか?」", "314000511_5": "「まだ何も入ってない」", "314000511_6": "「そうですか……」", "314000511_7": "「そんな心配すんな、先輩なら大丈夫だって」", "314000511_8": "「もちろん、そう思いたいデスけど……」", "314000511_9": "「うん……」", "314000511_10": "「……んじゃ、ちょっとトレーニングルーム行ってくる」", "314000511_11": "「先輩は、普段とあまり変わらないデスね……」", "314000511_12": "「翼さんのこと、心配じゃないのかな……?」", "314000511_13": "「そう見せているだけだ」", "314000511_14": "「えッ……?」", "314000511_15": "「クリスくんは、あれから1度も家へ帰ってない」", "314000511_16": "「それどころか、ほとんど眠ってもいないだろう」", "314000511_17": "「な、なんデスとッ!?」", "314000511_18": "「そんなことをしたら、倒れちゃう……」", "314000511_19": "「俺たちも、そう言い聞かせてはいるのだがな……」", "314000511_20": "「翼とは響くんと並んで付き合いの長いクリスくんだ。\\n いてもたってもいられないのだろうな……」", "314000511_21": "「アタシたちなんかよりも、\\n ずっと心配してるんデスね……」", "314000511_22": "「クリスくんばかりではない。翼のマネージャーの緒川も含めて、\\n S.O.N.G.のスタッフたちも皆、翼のことを心配している」", "314000511_23": "「だが必死に想いを抑えて、\\n 今、自分たちができることに集中している」", "314000511_24": "「クリスくんも、情報連絡のために向こうへ\\n 行かせてくれと言うかと思ったが――」", "314000511_25": "「己に課せられた役割を理解して、必死に抑えているんだ」", "314000511_26": "「クリス先輩……翼さんに何かあったら飛んでいくって、\\n そう言ってたんデスよね……それなのに……必死に我慢を?」", "314000511_27": "「上に立つようになるとな、\\n やせ我慢の仕方ばかり、上手くなるものさ」", "314000511_28": "「クリス先輩、わたしたちのために――」", "314000511_29": "「調……。アタシたちも、やれることをやるデスよ」", "314000511_30": "「うん……。クリス先輩と一緒に特訓して、\\n 今のうちに少しでも力をつけておかないとね」", "314000511_31": "「留守を預かる身として、しっかりと頼んだぞ2人とも」", "314000511_32": "「はい」", "314000511_33": "「わかったデスッ!」", "314000511_34": "「うう……ッ。つば、さ……」", "314000511_35": "『お前は本当に翼を助けたいと思っているのか?』", "314000511_36": "『そもそも本当に翼は助けるべき存在なのか?』", "314000511_37": "『あたしには、翼なんて必要ない』", "314000511_38": "『思い出せ、あいつを憎んですらいたことを――』", "314000511_39": "「気に入らないんだよッ! その憐れむような目がッ!\\n そんなにあたしが怖いかよッ!」", "314000511_40": "「は――ッ!?」", "314000511_41": "「ゆ……夢……、か……」", "314000511_42": "(いや……あれは……)", "314000511_43": "(聖遺物の暴走状態に表れる、心の闇、ってやつなのか……)", "314000511_44": "(あれが、あたしの中の本音だって、いうのか……?)", "314000511_45": "「そんな馬鹿なことが、あるかよ」", "314000511_46": "(確かに、翼を疎ましく思ったことはあったさ)", "314000511_47": "(でも……それはずっと昔のことだ)", "314000511_48": "(あいつと出会って、あいつを知って、\\n あいつと一緒に戦って、そして、一緒に唄って――)", "314000511_49": "(あたしは変わったんだ。変わったはずなんだ)", "314000511_50": "『そもそも本当に翼は助けるべき存在なのか?』", "314000511_51": "『あれはお前の片翼じゃないだろ? 同じ姿をした別のモノだ』", "314000511_52": "「あいつは、あたしの知ってる翼じゃない……」", "314000511_53": "「そんなこと、わかってるさ」", "314000511_54": "「それでも、助けたいと、思ってる」", "314000511_55": "「そう、思ってる……はずなんだ、あたしは……」", "314000511_56": "「あの日、あいつが……あたしを助けてくれたように……」" }