{ "318000131_0": "「もうッ、しつこいったらッ!」", "318000131_1": "「深奥部はもうすぐかしら」", "318000131_2": "「予想以上に深くまで続いているワケダが」", "318000131_3": "「洞窟内の情報は事前に手に入らなかったわけ?」", "318000131_4": "「いくら局長でも、流石にそこまではね」", "318000131_5": "「ホント、見かけ倒しっていうか、\\n 完璧主義者を気取ってる割りに無能な男なのよねえ」", "318000131_6": "「言うな。虚しくなるだけなワケダ」", "318000131_7": "「この辺りで目的の物が見つかるといいのだけれど……」", "318000131_8": "「アダムスフィアか……。\\n だが今のところ、それらしき力は感じないワケダ」", "318000131_9": "「とにかく深部まで進みましょう」", "318000131_10": "「あー、もう。こう薄汚いところばっかり延々歩き続けると、\\n 気が滅入ってくるったらないわ」", "318000131_11": "「ホント、こういう洞窟の奥にひっそりと隠れ家を作るだなんて、\\n いかにも錬金術師って感じ」", "318000131_12": "「まあ、人目を憚る立場には都合が良いものね」", "318000131_13": "「ま、あーしたちも人のこと言えないけど。\\n でも、流石に今の時代、生の洞窟住まいはないわよね~」", "318000131_14": "「…………」", "318000131_15": "(研究所……そうだ。\\n わたしも昔、こういう場所で研究を続けていた)", "318000131_16": "錬金術に興味を持ったのは、ただの気まぐれだった。", "318000131_17": "友と共に虚飾にまみれ、日々快楽に耽っていたわたしは、", "318000131_18": "巷の噂で錬金術という物を耳にし、暇潰し程度のつもりで手を出したワケダ。", "318000131_19": "しかし、研究はすぐに行き詰った。当然なワケダ。", "318000131_20": "正しい知識もなく、巷に溢れる怪しいまじない師の真似事などしていても、", "318000131_21": "真理には一生たどり着けない。", "318000131_22": "それでもわたしは、より深く知識を得ようと、", "318000131_23": "友と共謀し無辜(むこ)の民を錬金術の実験台にした。", "318000131_24": "だが、すぐに見つかり、異端裁判にかけられ、", "318000131_25": "絞首刑にされる寸前のところで、サンジェルマンは現れた。", "318000131_26": "「私と来るなら、あなたを錬金術師の真理へ導いてあげる。\\n そしてその崇高なる力を正しく揮う術を教えてあげるわ」", "318000131_27": "「同志になれと……?」", "318000131_28": "「真なる英知を、錬金の業を欲するなら、ね。\\n けれどそれを私欲を満たすために使ったなら、私が殺すわ」", "318000131_29": "死を恐れたというのもあるが、なにより、", "318000131_30": "彼女の力は怪しいまじないなどではなく、本物だった。", "318000131_31": "それに魅せられたわたしは、一も二もなく、その提案に飛び付いたワケダ……。", "318000131_32": "完全なる命と不朽の肉体を得る、", "318000131_33": "つまり女性に変わるという予想外の事態はあったにせよ、", "318000131_34": "真なる錬金術の研究の前では性別など些細なことなワケダ。", "318000131_35": "むしろこうして不朽の肉体を手にしたことで、わたしは研究を続けることができる。", "318000131_36": "更なる真理を探究し、大恩あるサンジェルマンに", "318000131_37": "報いることができるというワケダ……。", "318000131_38": "「2人とも、次が出てきたわよ」", "318000131_39": "「もう~、バカのひとつ覚えみたいにこればーっかり。\\n やんなっちゃうッ!」", "318000131_40": "「……」", "318000131_41": "「プレラーティ? どうしたの?」", "318000131_42": "「……あ、いや……なんでもないワケダ」", "318000131_43": "「……大した相手ではないけど、気を抜くと危険よ。\\n 戦いに集中しましょう」" }