{ "316000211_0": "閉ざされた心", "316000211_1": "「ずいぶん念入りに検査してる。\\n 何をそんなに調べて……」", "316000211_2": "「…………」", "316000211_3": "「……ぁ……ッ!」", "316000211_4": "「…………ッ!?」", "316000211_5": "「……すごく、うなされてる」", "316000211_6": "(こんな病院の検査服みたいなのを着て、\\n 小さい子が森の中を1人で、何してたんだろう?)", "316000211_7": "(森も周辺の街にも、\\n 親御さんらしい人はいなかったっていうし……)", "316000211_8": "「君は一体、どこから来たの?」", "316000211_9": "(わたしたちの世界で未来と助けた、\\n あの女の子にもそっくりだし……)", "316000211_10": "「あ……そういえば」", "316000211_11": "「あの時の子も、最近、夢でうなされてるって、\\n お母さんが言ってたっけ――?」", "316000211_12": "(並行世界側の出来事と、わたしたちの世界の出来事――)", "316000211_13": "(関係ないようで、どこかで繋がってる時もあるって……)", "316000211_14": "(もう1人のわたしの時も、そんなことがあったっけ……)", "316000211_15": "(あの時は、未来が助けてくれたんだよね……)", "316000211_16": "(この子の症状が、わたしたちの世界のあの子にも\\n 影響してるのかどうかは、わからないけど……)", "316000211_17": "(でも……約束したんだ。あの子に。\\n 絶対に助けるって)", "316000211_18": "(だから――君たちのこと、絶対、助けるからねッ!)", "316000211_19": "「あ。検査、終わったのかな?」", "316000211_20": "「メディカルチェックの結果が送られてきたみたいね」", "316000211_21": "「へー。どれどれ?」", "316000211_22": "「女の子のデータをじろじろ見ないの」", "316000211_23": "「そんな理不尽な。\\n あくまで仕事だよ」", "316000211_24": "「もう、仕方ないわね」", "316000211_25": "「やれやれ……って――。\\n こ、これはッ!?」", "316000211_26": "「……えッ……まさかッ!?」", "316000211_27": "「騒がしいな。何かあったのか?」", "316000211_28": "「司令ッ! あの子の検査結果なんですが。\\n これを――」", "316000211_29": "「なんだとッ――これはッ!?」", "316000211_30": "「ふわぁ~。よく寝た」", "316000211_31": "「……あれ、あのバカは?」", "316000211_32": "「なんでもあの子のメディカルチェックがあるとかで、\\n 朝早くから二課へ付き添いにいったようだ」", "316000211_33": "「メディカルチェック? 何かあるのか?」", "316000211_34": "「わからないから調べているのだろう」", "316000211_35": "「そっか。で、身元の方は?」", "316000211_36": "「二課が身辺調査を行ったようだが、\\n この国の戸籍にも渡航情報にも該当するものはないようだ」", "316000211_37": "「そんな正体不明の子供がどうしてあんなところに、\\n あんな格好でいたんだろうな」", "316000211_38": "「さあな。オートマシンに狙われている理由にも\\n 関係するのかもしれないが……」", "316000211_39": "「何もわからないってか。\\n 本人に聞けばいいんじゃないのか?」", "316000211_40": "「それができれば早いのだがな……」", "316000211_41": "「やっぱり、喋れないのか……」", "316000211_42": "「そのようだ。\\n こちらの言葉は理解できているようなのだが……」", "316000211_43": "「そっか……」", "316000211_44": "「とりあえず、あのチビのことはひとまず置いとくとしてもだ。\\n これから先、こっちでどうする?」", "316000211_45": "「この世界に現実的な脅威としてカルマノイズ、\\n それにあのオートマシンが確認できている」", "316000211_46": "「ギャラルホルンのアラートはカルマノイズの存在に\\n 起因していると思われるが――」", "316000211_47": "「それだけではなく、オートマシンの存在も\\n 影響しているのかもしれないな」", "316000211_48": "「とにかく今はまだ判断材料が不足しすぎている」", "316000211_49": "「当面はこちらの二課に協力してもらいつつ、情報を集めなくてはな」", "316000211_50": "「ま、結局、それしかないか……」", "316000211_51": "「お? 噂をすれば」", "316000211_52": "「どうした、立花?」", "316000211_53": "「す、すみません、2人とも。\\n 至急二課に来てくださいッ!」", "316000211_54": "「なんだかよくわからないが――」", "316000211_55": "「急いだ方が良さそうだな」", "316000211_56": "「あ、2人ともッ!」", "316000211_57": "「何があった?」", "316000211_58": "「あの子のメディカルチェックの結果が出たんですけど……。\\n えっと、そのッ、とにかく大変なんですッ!」", "316000211_59": "「落ち着いて話せ」", "316000211_60": "「そ、それが落ち着いてなんかッ!」", "316000211_61": "「何があったのですか?」", "316000211_62": "「それがだ……。\\n あの少女の体内から、聖遺物の反応が確認できたのだ」", "316000211_63": "「なんですって?」", "316000211_64": "「おい、それって、まさか……」", "316000211_65": "「聖遺物との……融合症例……?」", "316000211_66": "「……そうみたいなんです」", "316000211_67": "「反応のパターンをデータベースに照合したところ、\\n 該当する聖遺物があった」", "316000211_68": "「それは、一体……?」", "316000211_69": "「ヤントラ・サルヴァスパだ」", "316000211_70": "「かなり前に研究のため、\\n F.I.S.へ、貸与した物なのだが……」", "316000211_71": "「それって、どこかで聞いたような……?」", "316000211_72": "「深淵の竜宮に保管されていた聖遺物だ」", "316000211_73": "「わたしたちの世界では、チフォージュ・シャトーを\\n 完成させる鍵としてキャロルに狙われた」", "316000211_74": "「確か、あらゆる機械を制御できるっていう聖遺物だよな」", "316000211_75": "「そうでしたね……」", "316000211_76": "「しかし、我々日本が発見した際、\\n 風化が激しくとても使用できる代物ではなかった」", "316000211_77": "「貸与後の研究については?」", "316000211_78": "「F.I.S.側の機密のため内容は一切知らされてなかったが……。\\n まさかこんな研究を行っていたとは……」", "316000211_79": "「それじゃ、あの子は……」", "316000211_80": "「うむ。十中八九、F.I.S.の被験者だろう」", "316000211_81": "「人体実験かよ……胸くそ悪いな」", "316000211_82": "「そのような境遇の子供が、\\n なぜ1人であの森の中を彷徨っていたんでしょうか?」", "316000211_83": "「そこまではわからん」", "316000211_84": "「あの子はこの後、どうするんですか?」", "316000211_85": "「状況がわからぬ以上、F.I.S.に送り返す訳にもいかない。\\n 当面は我々で保護するしかあるまいな」", "316000211_86": "「ノイズにカルマノイズ、オートマシン、そしてその子の謎……。\\n 現在の二課には対応しなければならないことが多すぎます」", "316000211_87": "「微力ながら、わたしたちもしばしこちらに留まり、\\n お力になれればと思いますが、如何でしょう?」", "316000211_88": "「そうしてもらえるなら、こちらとしてもありがたい」", "316000211_89": "「あのチビもこいつに懐いてるみたいだしな」", "316000211_90": "「うん……」", "316000211_91": "(F.I.S.の被検体……聖遺物の融合症例……)", "316000211_92": "(助けてあげなきゃ、絶対に)", "316000211_93": "「ノイズの反応を検知ッ!」", "316000211_94": "「早速お出ましか」", "316000211_95": "「ここは、わたしたちが」", "316000211_96": "「すまない、頼んだぞ」", "316000211_97": "「はい」" }