{ "387000511_0": "滅びをもたらす者", "387000511_1": "「それなりに出来のいいサルのようですが、\\n いったい何者ですかッ!」", "387000511_2": "「答えるのも馬鹿馬鹿しい問いだけれど。\\n この世界に戻ったばかりだもの、再び宣言しておきましょうか」", "387000511_3": "「わたしはベアトリーチェ。\\n 悪意を振りまき、全ての並行世界を食らい滅ぼす者ッ!」", "387000511_4": "「こちらは名乗った。\\n あなたも名乗るのが礼儀ではなくて?」", "387000511_5": "「……いいでしょう。\\n わたくしはイシム。アヌンナキが創造せし最初のガーディアン」", "387000511_6": "「愚かなる人類を滅ぼし、\\n この世界の支配者となる者です」", "387000511_7": "「なるほどね……。\\n 考えていることは似ているけれど、まったく気が合いそうにないわ」", "387000511_8": "「サルと気が合うですって?\\n わたくしには知性なき動物の思考などわかりませんわよ?」", "387000511_9": "「忌まわしいガーディアンでありながら人類に反旗を翻すなんて、\\n 少しは見どころがあるのかと思ったけれど」", "387000511_10": "「どうやらただの不良品だったようね。", "387000511_11": " 大丈夫よ、アヌンナキも失敗はするって、よく知っているわ」", "387000511_12": "「その言葉、\\n 今すぐ取り消しなさい……ッ!」", "387000511_13": "「あら、不快だったかしら?", "387000511_14": " 気に入らないのなら、訂正させてごらんなさい?」", "387000511_15": "「おいおいおい、どうなってんだ。", "387000511_16": " あいつら、勝手にモメてるぞッ!」", "387000511_17": "「イシムだけでも苦慮していたのに、\\n あのベアトリーチェまで再び現れてしまった」", "387000511_18": "「敵の敵は味方、人類の敵同士で結託……。\\n そんな最悪の事態も想像したのだけれど」", "387000511_19": "「2人ともプライドが高すぎて、\\n 仲良くできそうにないデスッ!」", "387000511_20": "「皆さん、\\n すぐにその場を離れてくださいッ!」", "387000511_21": "「どうしたの、\\n エルフナインちゃんッ!」", "387000511_22": "「イシムとベアトリーチェのエネルギーが\\n 急激に高まっていますッ!」", "387000511_23": "「ってことは……ッ!」", "387000511_24": "「驕り高ぶったその口、\\n 二度と開けないようにしてさしあげましょうッ!」", "387000511_25": "「あら、その程度で終わり?\\n 世界1つを支配すれば満足する不良品は欲がないわね」", "387000511_26": "「一度は滅ぼされたらしい敗者が、\\n 大きな顔で何を言いますかッ!」", "387000511_27": "「……あなたが敗者と呼んだ存在がどれほどのものか、\\n 見せてあげようじゃない」", "387000511_28": "「嘘だろッ!?\\n あいつらでやり合う気かッ!?」", "387000511_29": "「あの2人が本気でぶつかりあえば、\\n どれだけの被害が出るかわかりませんッ!」", "387000511_30": "「そこは危険ですッ! \\n 可能な限り距離を取ってくださいッ!」", "387000511_31": "「わかったわ、戦闘不能の装者を連れて、\\n すぐに離脱するッ!」", "387000511_32": "「了解デスッ! \\n 調、しっかりするデスッ!」", "387000511_33": "「あたしは先輩を担いでいくッ!\\n お前も急げッ!」", "387000511_34": "「うん、未来はわたしがッ!」", "387000511_35": "「――ベルちゃん、明日香ちゃん……ッ!」", "387000511_36": "「塵になりなさいッ!\\n 増長したサルッ!」", "387000511_37": "「不良品はさっさとゴミになるがいいわッ!」", "387000511_38": "「ッ……戦って面白い相手ではないけれど、\\n 思ったよりできるわね」", "387000511_39": "「毛色が違うだけのサルかと思いましたが。\\n かなり先へと進んだ個体のようですわねッ!」", "387000511_40": "「なんて規模の戦いだよ……」", "387000511_41": "「互いに世界を滅ぼせる者だものね。\\n 想像の範疇を超えているわ……」", "387000511_42": "「2人だけじゃないデスッ!\\n あっちでもこっちでも大騒ぎデスッ!」", "387000511_43": "「カルマノイズとイシムの眷属が戦ってる……ッ!」", "387000511_44": "「こりゃ大戦争だな……」", "387000511_45": "「空が裂け、大地が割れている。\\n まるで世界の終わりのようです……」", "387000511_46": "「これじゃ巻き込まれただけで、\\n 死人が出るデスッ!」", "387000511_47": "「周囲の避難は済んでいるはずだけれど\\n これではこの星が、世界が壊れてしまう」", "387000511_48": "「くそッ、衝撃と揺れで進めないッ!", "387000511_49": " このままじゃあたしたちも……」", "387000511_50": "「――どうして、\\n わたしたちは無事なんだろう」", "387000511_51": "「は? そりゃ、たまたま巻き込まれずに……。", "387000511_52": " いや、そうだな……」", "387000511_53": "「世界を滅ぼしかねない戦いの近くにいて、\\n 無事なのは不自然ね……」", "387000511_54": "「言われてみれば、\\n こっちには攻撃が飛んでこないデス……」", "387000511_55": "「もしかしたら、ベルちゃんと明日香ちゃんが、\\n わたしたちを護ってくれてるのかも……」", "387000511_56": "「欠陥品のガーディアンが、\\n 存外にしぶといわね」", "387000511_57": "「そちらこそ、よく粘っています。\\n 褒めてさしあげますわ?」", "387000511_58": "「しかしサルはサルですわね。\\n 先程から逃げ出したお仲間が気になって仕方のない様子ッ!」", "387000511_59": "「……どういう意味かしら?」", "387000511_60": "「気付かないと思っていましたの?\\n サルに流れ弾が飛ばないように必死じゃありませんの」", "387000511_61": "「……忌々しい。\\n あいつらを護っているですって? 反吐が出るわ」", "387000511_62": "「響に絶望を与えるのも、その生命を刈り取るのも、このわたし。\\n ただそれだけのことよ」", "387000511_63": "「あなたこそ気付いていないの?\\n わたしはそこまで、響たちに意識を向けてはいないわよ」", "387000511_64": "「……何を言っているんですの?」", "387000511_65": "「あいつらを巻き込みそうになると、\\n あなたの動きが鈍っているのよ」", "387000511_66": "「あなた自身の内側に潜む何か。\\n まだ制御できていないのではないの?」", "387000511_67": "「――ッ!」", "387000511_68": "(明日香の存在に気付いている……ッ!?)", "387000511_69": "(わたくしに匹敵する力といい、この洞察力といい……。\\n わたくしが眠った後、こんなサルが生まれているとはッ!)", "387000511_70": "「あなたを生かしておくことはできません。\\n 必ずやわたくしの障害となるでしょう」", "387000511_71": "「わたくしの世界は、絶対に渡しませんわッ!」" }