{ "382000821_0": "「……よし、イシムの眷属の気配はなし」", "382000821_1": "「どうにか無事にここまで来れましたね」", "382000821_2": "「ありがとうございます、明日香さんッ! ボクだけでは、\\n ここまですんなり来られたか分かりませんでした」", "382000821_3": "「いえ、まだまだこれからです。\\n あたしは近くにあいつらが来ないか見張っていますから」", "382000821_4": "「ボクはその間に、想い出の結晶の修復を完了させますッ!」", "382000821_5": "(問題は、損傷のせいで込められた想い出、\\n つまりは術式の正体が分からないこと)", "382000821_6": "(これが最後の1ピース……これさえ解析できれば、\\n 修復はすぐに完了するのに)", "382000821_7": "(……いえ、弱音を吐いている場合じゃありませんッ!)", "382000821_8": "(分からないなら、片っ端から術式をあてはめて、\\n 仮説検証してみるまでですッ!)", "382000821_9": "「これもダメでしたか……」", "382000821_10": "(長い歴史をかけて培われてきた錬金術……)", "382000821_11": "(その術式を1つ1つ検証していたのでは、\\n どれだけ時間がかかるか分かりません……)", "382000821_12": "(このままでは、響さんたちが危ないのに……)", "382000821_13": "「わぁッ!?」", "382000821_14": "「な、なにがッ!?」", "382000821_15": "「いたたた……。\\n だ、大丈夫ですかッ!?」", "382000821_16": "「……大丈夫です、どうということは……、", "382000821_17": " つ……ッ!」", "382000821_18": "「どこか怪我をッ!?」", "382000821_19": "「倒れてきた棚にぶつけたみたいです……」", "382000821_20": "「さっきの揺れで机の上のものは全部ひっくり返されたようですが、\\n まずは傷の手当てを……」", "382000821_21": "「そんなことより、想い出の結晶はッ!?\\n 結晶が砕けでもしていれば、希望がなくなってしまうッ!」", "382000821_22": "「想い出の結晶はどこに……ッ!」", "382000821_23": "「あ、あたしも探しますッ!」", "382000821_24": "「……こっちに2つッ! 残り2つはッ!?」", "382000821_25": "「こっちにもありましたッ!\\n これで全部ですッ!」", "382000821_26": "「よかった、新たな損傷はないみたいです……ッ!\\n すぐに修復を……ッ!」", "382000821_27": "「…………」", "382000821_28": "「あの、どうかしたんですか……?」", "382000821_29": "「……ダメなんです」", "382000821_30": "「え?」", "382000821_31": "「結晶があっても、ボクはまだどんな想い出がこの結晶に\\n 込められているか、特定できていません……」", "382000821_32": "「ヒントもない状態で、術式を特定するだけの知識も力も、\\n ボクにはありません……」", "382000821_33": "「やっぱりボクは、肝心なところでなんの役にも立てない……」", "382000821_34": "(……同じなんだ。あたしと)", "382000821_35": "(いつだって背負った想いの重さに潰されそうになりながら、\\n 小さな身体で頑張ってるんだ……)", "382000821_36": "(あたしも、奏さんの想いを背負ったつもりだったけど、\\n 全然役に立てなくて、諦めそうになった……でも)", "382000821_37": "(師範はそんなあたしに、諦めるなって言ってくれた。\\n それがあたしの強さだってッ!)", "382000821_38": "「諦めちゃダメですッ!\\n 諦めないこと……それが、一番大切な強さなんですッ!」", "382000821_39": "「強さ……?」", "382000821_40": "「それさえあれば、必ず人は強くなれるッ!\\n いつか必ず、望みは叶いますッ!」", "382000821_41": "「だから、エルフナインさんも抗うことを\\n やめたらダメなんですッ! 抗うことを……」", "382000821_42": "「生きることを、諦めないでッ!」", "382000821_43": "「……ッ!」", "382000821_44": "「あたしも一緒に考えますッ!\\n あたし、頭はよくないんで全然ダメかもしれないけど……」", "382000821_45": "「それでも、最後の瞬間まで、一緒に戦いますからッ!」", "382000821_46": "(そうだ……キャロルも、シェム・ハに負けそうな時、\\n 絶対に最後まで諦めなかった)", "382000821_47": "(キャロルに助けられたボクが、こんな弱気じゃダメですッ!)", "382000821_48": "(……キャロル。どうか、君の強さをボクに分けて……ッ!)", "382000821_49": "(キャロル……?)", "382000821_50": "「……そうか。そうですッ! キャロルですッ!」", "382000821_51": "「ど、どうしたんですか?」", "382000821_52": "「ボクは……大切なことを忘れていました」", "382000821_53": "「この想い出の結晶は、他ならぬ未来のボクが作った物です」", "382000821_54": "「だったら、結晶に込められた術式は、ボクが心の底から強いと\\n 思えるもの……『希望』と呼べるもののはずなんです」", "382000821_55": "「な、なるほど……?\\n それで、その強いものというのは……?」", "382000821_56": "「ボクが知る、強く、そして優しい人……、\\n それは、キャロル以外にいません」", "382000821_57": "「4つあることもヒントだったんですね。\\n どうして気づかなかったんでしょう……」", "382000821_58": "「ボクが『希望』と呼ぶのなら、それはキャロルの力の一端。\\n ボクのことも助けてくれた、キャロルの力の分身ッ!」", "382000821_59": "「つまりは――ッ!」" }